【インタビュー】株式会社スタートトゥデイ/柳澤孝旨氏 - 攻めのコーポレートを通じて、ZOZOがグローバルに評価してもらえるような基盤創りを(2/2ページ) - Widge Media

【インタビュー】株式会社スタートトゥデイ/柳澤孝旨氏 - 攻めのコーポレートを通じて、ZOZOがグローバルに評価してもらえるような基盤創りを(2/2ページ)

記事紹介

「ZOZOTOWN」「WEAR」を中心に、アパレル小売業界に新風を吹き込み続ける株式会社スタートトゥデイ。取締役CFOとして、同社の中枢を牽引し続ける柳澤孝旨氏のキャリアストーリーを伺った。

※インタビュアー/株式会社Widge 代表取締役 柳橋貴之

お仕事のメインはどのあたりだったのですか?

当時はMSCBの全盛期で、その営業が多かったですね(笑)。でも普通のPOの提案も多かったですし、M&Aなどの話も多かったですよ。コンサル出身でもあったので、ピッチをつくるのに頑張っていました。エクイティストーリをきちんとつくって、ニーズに合うようなファイナンスを提案できるかどうかということですね。 で、本当は証券会社で3年くらい経験を積んでからベンチャーにと思っていたんですが、実は9ヶ月くらいしか在籍しませんでした。

どうされたんですか?

これも、また「たまたま」なんですが、銀行時代の先輩(すでにコンサルとして独立されていた方)から、 「『ZOZOTOWN』ていうのをやっているスタートトゥデイという会社がCFOを探していているんだけど…」という連絡をもらったんですよ。やはりもともと描いていたキャリアストーリーでもあったので、ありがたいお話と思って、CFOとして参画させて頂く方向で話を進めたんです。

一方、その先輩と共にパートナーをされていた方がいて、その方がもともとスタートトゥデイとの接点があったので、まずはその方がCFOとして参画することが決まったんですよ。それで僕自身のポジションをどうしようかという話になったので、「常勤監査役で」という話をさせて頂いたんです。

そうですよね。最初は常勤監査役として参画されているんですよね。

常勤監査役って、僕は社内コンサルだと思っているんですよ。なので、これまでの経験もすごく活きたと思っていますし、とかくIPO準備ということで言えば、一人ですべてを行うわけではなかったので(前CFOと一緒だったので)、とてもありがたかったですね。監査役として社内の問題点や課題を見つけ出し、上場に耐えうる体制を提案すると、ちゃんと前CFOがそれを実行してくれていたので。

当時の管理部門はどのような組織だったんですか?

入った当時は、管理部門て無かったんですよ(笑)。取締役の一人が管理系の仕事をしていましたけど、総務が3名くらいで、いわゆる財務経理は無かったんです。顧問の会計事務所さんに全てやって頂いていた状況ですね。労務関係も社労士事務所さんに全てやって頂いていたので。

そこから急ピッチで管理部門を構築されるわけですね。

そうですね。入社したのが2006年2月で、2006年4月から直前期に入るという話だったので(笑)。一瞬「おいおい」と思いましたよ。2ヶ月後から直前期に入るのに、管理部門が無いってと(笑)。ちゃんと残業代を払うなど、労務面をきっちりとやっていたので、そこは救いでしたね。

初めての事業会社、そしてベンチャー、ITということで、カルチャーギャップもあったのでは?

カルチャーギャップは、面接で何回かオフィスに来ている段階で、かなりありましたけどね(笑)。社員みんなラフなので。その中でスーツじゃないですか。みんな「なんだあの人?」って感じですよ(笑)。それこそ、最初に朝礼で「新しく入られた方」という紹介を受けた時も、だいぶ浮いていた記憶がありますね(笑)。

当時IPOをするということも社内ではオープンになっていなかったので、「なんだなんだ?」って感じだったと思いますよ。そもそもIPOするって言っても「なにそれ?」って感じだったと思うので(笑)。

そうですか。そんな入社を経て、一気にIPO準備を進めていくわけですね。

会計システムも無かったので、そこからでした(笑)。

無事に予定通りマザーズ上場を果たします。CFOに就任されたタイミングは上場後ということですよね?

そうですね。2008年6月からなので、上場して半年後ですね。

CFOになられて、ご自身の中で意識されたことは何ですか?

そういう意味では、これまでの監査役という独立した立場から、組織を牽引する立場になったので、KPIであったり、モチベーションであったり、組織のことを強く考えるようにはなりましたね。最初は、財務経理や総務、法務などのディレクター達を集めて、「僕はこういう風に考えているから、こういう風にやっていこうね」というような話もよくしました。僕の考えている組織の在り方など、しっかりと伝えないといけないと思いましたので。

今でも直接の指示はディレクターの方々までですか?

そうですね。飛び越えて何か指示をしたりするのって好きじゃないんですよ。それを僕がやってしまったらダメですよね。皆の判断に任せています。当然、僕の「考え方」などは伝えますけど、あとは任せる。そう決めてやっています。

 

柳澤さんの「考え」って例えば何なのですか?

端的に言うと、「攻める管理本部」だっていうことですね。管理部門が守っていてはダメなので、攻めると。攻め続けると。そういうことですね。

それは非常に共感します。

もともと柳橋さんもそういう思いがあったですもんね?

そうなんです。僕もそういう文化を創っていけたらと思っていまして。 何か具体的な取り組みなどもされているのですか?

大々的に、社内で「攻める管理本部だ!」とか、管理本部で何か作って…みたいなことはないのですが、細かいところで言うと、例えば社内向けの決算説明会をやったりとかですよね。それも一つの攻めだと思っているので。受け身になりがちな管理本部が、自ら能動的に情報発信を行っていくと。あと、経営推進の部門だと、IR系もそうですけど、事業計画関連も全て管理しているので、コンサル的に各部門に口を出していますね。部門の数字を見て、「こうした方がいいんじゃないの?」とか。

そういったことに現場が反発するという会社も少なくないように思いますが。

そうですね。反発する会社も多いでしょうね。でもうちは最初からやっているので。僕が入った時(管理本部をつくるタイミング)からやっているので、それが当たり前になっていますね。

いい文化ですね。

そうですね。それはやっておいて良かったですね。あとは社風もありますよね。みんな本当に純粋ですから。「服が好き!」っていう思いの人ばかりなので。当時は特にそうでしたね。 例えばバイヤーも、自分で商品をバイイングして売るということをしますよね。昔は委託販売ではなく買取販売がメインだったので、バイヤーでもあり、一ショップを経営する店長でもあったわけですよね。でも、ほとんど数字のことは分かっていなかったので、「それじゃダメだと」。そういった面もあったので、管理組織を構築していく過程で、随時、各部門には口を出していく環境にしていきました。

なるほど。先ほどのお話の通り、早急に管理本部を組成しなければならなかったと思いますが、大変な面もあったのでは?

そうですね。でも、これは会社としても運が良いんだと思いますけど、たまたま良い人が早期に見つかったりして、すぐに体制も固められたんですよ。業績も良かったので多少お金もかけられましたし。しっかりとお金をかけて採用をして、システムも構築して…ということが短いタームでできたということが大きかったですね。

そこから攻めの管理本部ができてくるわけですね。

本当にいろいろな巡り会わせで、うまくまわってきたと思います。

柳澤さん自身も攻めてこられていますよね。単に管理だけされているわけではありませんし。

もともとコンサル出身なので、あまり管理管理するのが好きではないということが前提にありますよね。やっぱり事業が好きなので。事業を考えていることが好きなんですよ。だから僕自身、いろいろなところに首を突っ込みながらなんですよね。

IRでもいろいろと意識されていたことがあったのでは?

そうですね。これは僕の考えだったんですが、海外ですね。会社の事業を考えても国内でアピールするよりも海外でアピールした方がいいだろうと。

当時、事業モデルとして国内では競合が無く、海外では同じようなモデルが出始めていたので、グローバルに評価してもらった方が良いだろうと。そういった観点で、最初は個人投資家向けというよりは、海外の機関投資家をターゲットに力を入れていました。外国人投資家は比較的長期保有が多いということと、筋の良い外国人投資家を選べば、安定株主になるということも分かっていたので。加えて、欧州ではファッションのことを理解している投資家が多いという仮説もありましたね。海外のIRを積極的にやろうというポリシーはずっと持っていました。

総会も工夫をされていましたよね。

そうですね。これは社長の考えもあって「普通じゃ面白くないよね」と。前は、商品を持って帰って頂いたりとかもしていました。事業報告書なんかも面白くして送っていましたし。そういうところに手をかけて、うちらしさを出すようにはしていましたね。

少し話が変わるかもしれませんが、CFOの立場として、社長の考えにNOを出した時ってどれくらいあるのですか?

ほとんど無いですね。あっても1~2回くらいだと思います。社長自身が的確な判断をされるので。突拍子もないことを言うこともないですし。

そうですか。柳澤さんから見た前澤社長とは?

僕自身もとてもリスペクトしています。やっぱり凄い人ですよ。アーティスト出身ということもあってか、まず感性が素晴らしいんですよね。例えば、社員に対するメッセージなどを話す時もすごく分かりやすく刺さりますし。 決算説明会の時なんかも非常に流暢に話すんですが、あれって一切台本が無いんですよ。全部アドリブなんです。リハーサルも無いですし。だからすごく伝わりやすいんですよね。そういった感性の部分(いわゆる右脳の部分)が凄いなと思う一方、左脳(いわゆる数字の感覚)も非常に強いんですよ。商売人ですよね。 だから、右脳と左脳が一緒になっているような感じです。両方持ち合わせているような感覚がありますよね。だから一言で、すごい経営者だなと思っています。

優秀なCFOの方は、やはりCEOをリスペクトしていますよね。良いお話を頂きました。 最後に、今後の目標はいかがですか?

会社としては、中長期で商品取扱高5000億円を目指そうということを掲げているので、そこに向かって邁進するということですね。

個人としてはいかがですか?

やはり、自分だけの判断で決めてはいけないと思うので、会社で必要だというところをやっていけたらと思っていますね。僕がずっとCFOをやっていかなきゃいけないということも無いと思いますし。それ以外にやらなきゃいけないことがあれば、それをやりますし。やっぱり現状に固執もしたくないので。楽しく・面白く仕事はしたいじゃないですか。仕事は楽しくしないと。人生つまらなくなっちゃうので。

たとえばですよ。柳澤さんが55歳になった時って、何をされているイメージですか?

引退(笑)。僕55歳で引退って言っているんですよ(笑)。そこまではちゃんと全うしようと。その先はまだ決めていないんですけど、ちょうど僕、昔から55歳で引退って考えてて。でも、そうは言っても退けない性格だと思っているので、何かしらやっているとは思いますけどね。

引退後って何をされているイメージですか?

あんまり想像したことないんですが、喫茶店のオーナーやったりとかですか?(笑)

柳澤さんの喫茶店、いいですね!何となくイメージあります。

そうですか(笑)。あとは、いろいろと人助けというか、自分が役に立つのであれば若手経営者の方々の支援なんかもですかね。ボケ老人にならない程度に(笑)。

いいですね。その空気感がメンバーの方からも慕われる要因のような気がします。

いや、仕事しない上司だと思われています(笑)。毎日暇してそうな上司(笑)。

そう見せるところに良さがあるように思います。

こう言うと語弊があるかもしれないですけど、取締役ってそこまで忙しくしていない方が良いんじゃないかなって思うんですよ。こんなこと言ったら怒られるかもしれないですけどね。でも取締役がそういう状態であるということは、どこにも問題が起こっていないということだと思うので、要は、健全な組織運営がなされているということだと思うんですよ。もちろん何かあった時には早期にしっかりとした判断ができるような状態にはしておくと。本質的にはそういうことが大切なような気がするんです。 なので、こういった立ち位置で、引き続き楽しく・面白く走っていくと。そういうことですね。

管理本部の皆さんも、自由に仕事をされている雰囲気があります。

ええ。かなり自由ですね(笑)。普通じゃないレベルだと思います(笑)。雰囲気も良いですしね。 素晴らしいチームですよ。仕事は楽しく・面白く。皆がいるから僕もそう感じられているので。本当に幸せです。

株式会社スタートトゥデイ 取締役CFO 柳澤孝旨氏1995年に株式会社富士銀行(現 株式会社みずほ銀行)入社。1999年に株式会社NTTデータ経営研究所入社。2005年にみずほ証券株式会社入社。 2006年、株式会社スタートトゥデイに常勤監査役として入社。 2008年に取締役経営管理本部長、2009年に取締役CFO、2010年に取締役CFO兼経営企画室長に就任。 現在は当社取締役CFOとして、ZOZOTOWN HONGKONG CO., LIMITED・取締役、走走城(上海)电子商务有限公司・董事も兼任する。