株式会社yutori/瀬之口和磨氏 ― 大切なのは折れない心。若い力で切り拓く。会社の未来を見据えたスイングバイIPOとは。(1/2ページ) - Widge Media

株式会社yutori/瀬之口和磨氏 ― 大切なのは折れない心。若い力で切り拓く。会社の未来を見据えたスイングバイIPOとは。(1/2ページ)

記事紹介

2023年12月、東証グロース市場へ上場した株式会社yutori。2018年の創業から5年とアパレル企業史上、最短上場を記録(最年少上場記録も更新)。一時はZOZOグループ入りをし、スイングバイIPOとしても注目を集めた同社。見事IPOを主導した取締役副社長の瀬之口和磨氏に、IPOに至るまでとその後の取り組みについてお話を伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge 舘石鈴央

早速ですが、これまでのご経歴などをお聞かせください。

2017年に大学を卒業してそのまま独立し、最初の1年は個人事業主としてマーケティングのコンサルティングとメディア運営をしていたところ、代表の片石と出会い、2018年にyutoriを創業しました。

大学時代からマーケティングをご自身でやっていらっしゃったのですか。

大学4年生の時に休学し、その期間に広告代理店で1年間インターンをしていました。そこで広告運用と新規のメディア立ち上げをずっとやっていたので、大学を卒業してそのまま個人で始めたという形です。

(代表の)片石さんとは同じ大学だったのですよね。

大学の同級生でしたが当時面識はありませんでした。創業時にもう一名、大学時代のサークルで仲が良かったメンバーもいて、片石もその友達と仲が良かったので、その繋がりで一緒にスタートすることになりました。CEOが片石、もう一名の友人がCFO、私がCOOでスタートしました。

知人繋がりだったのですね。それぞれキャラクターはどうでしたか。

片石は感性、クリエイティブ寄りで、私は論理的思考寄りでタイプが両極端なんです。もう一名の友人はどちらの要素も持っていて性格的にもめちゃくちゃいい人だったので、間に挟まれて大変だったと思います。

最初から法人化されていたのですか。

正確に言うと、2018年4月に合同会社としてスタートし、資金調達のタイミングで6月に株式会社へ組織変更していて、私は株式会社に組織変更したタイミングで正式に入りました。

株式会社yutori 取締役副社長 瀬之口和磨氏

2018年に創業、2020年7月には(株)ZOZO(東証プライム・3092)グループに入られましたね。そのあたりのきっかけやIPO準備にまつわるお話を是非お伺いできたらと思います。

ZOZOに入ったのは、ちょうど創業して2年くらいのタイミングでした。当時M&Aをする気は全く無くて。資金調達の文脈でZOZOにも「出資していただけませんか?」とお願いしたところ、たまたま向こうから「どうせやるなら一緒にやろう。」という提案をしてくれたんです。そこから話し合いをしていく中でハーフジョインという形で51%を(ZOZOへ)売却し、経営陣に49%を残してそのまま上場を目指すという形になり、そのほうが面白そうだということで正式にM&Aをしました。

M&Aをするまで上場はそこまでお考えではなかったのでしょうか。

それまで資金調達は3回実施していたので、何かしらやらなきゃいけないというのはありました。ただ、正直当時上場できる気は全くしていなかったです。ZOZOグループ入りしてようやく業績がついてきて、本当にできるかもしれないとなりましたね。

ZOZOグループ入りする前はどのような株主が入っていましたか。

VC3社とエンジェル5名です。VCはアカツキ、Now、KVP(現在のANOBAKA)で、エンジェルはIT業界の著名な方々5名に入っていただきました。

IT界隈では有名な方々が入ってくださったのですね。

そうですね。ただZOZOに入った時に外部の株主は全員抜けて、株主はZOZOと片石と私だけの三者になりました。

VCが入っていた当時、IPOに向けたプレッシャーのようなものはあったのでしょうか。

いえ、全くないです。シード期だったので、VC側もそのうち何とかなるだろうと。「私たちはEXITできるか分からないです」と率直に言っていたので、「一応IPOも頑張るけどそれでも良ければ…」というくらいで出口に関してはあまり強く言っていませんでした。

それでも出資してくださったのは、それだけポテンシャルを感じたということでしょうか。

そうであれば嬉しいですね。ただ2018年から2019年にかけては市場もかなり良かったと思います。当時はエンジェルの方たちも活発で、今の調達環境とはちょっと違いましたね。

ZOZOさんに入られた時の調達ラウンドでは、他のVCさんもまわられたのでしょうか。

VCや事業会社を中心に回っていて、アパレルの大手企業も何社か話はしました。その中でZOZOがやると言ってくれました。

ZOZOさんとは何回目の接触でグループ入りのお話になったのでしょうか。

最初のプレゼンのタイミングです。先方から「マイノリティ出資はやっていないので、どうせならがっつりやろう。そのためのプランを考えてきて。」と言われました。

最初からですか。

元々創業の時から当時ZOZOの役員の武藤さんという方と交流があって、武藤さん経由で資金調達もご相談させていただきました。その縁もあって最初から副社長CFOの柳澤さんや他役員の方々も出てきてくださって。最初の入り方が信頼の厚い武藤さんからの話というのは大きかったと思います。

御社は想定していた提案だったのでしょうか。

いえ、数千万円ほど出資してもらえたら良いなという感覚だったので、そのパターンもあるんだなと思いました。完全にサプライズでした。

そうだったのですね。資金調達は片石さんと瀬之口さんとお二方で対応されていたのでしょうか。

創業間もない最初のエンジェルラウンドはCFOがいたので、CEOの片石とCFOが対応していました。CFOが辞めて2回目のエンジェルラウンド以降は片石と私で対応していました。

お金周りに関して、片石さんとどのような役割分担をされているのでしょうか。

片石がプレゼンを行い、事業計画の作成等デューデリジェンス対応などを私が担うイメージです。(お金周りに限らず)役割は完全に分かれていて、互いの領域にはあまり干渉することもないです。片石は「新しいブランドや事業を創る」、いわゆるソフトの面で、私は組織設計や事業設計等生み出された事業を継続的に伸ばせるような設計作りのハード面をみているイメージです。

瀬之口さんは社会人経験無く起業されていらっしゃるかと思いますが、ファイナンスまわりの実務についてはどのようにキャッチアップされたのでしょうか。

一応大学は会計学科だったので簿記2級までは持っていました。ただ、実務を通してキャッチアップしてきました。

上場のスケジュールはどのように決まったのでしょうか。

(ZOZOの)M&Aのタイミングで最短で上場を目指すことが規定路線になっていました。2020年8月にZOZOの傘下になり、2021年4月から監査法人と契約し、ストレートに3年で上場しました。

全く延期もせず、最短でというのは素晴らしいですね。IPO準備を開始された時のコーポレートは何名くらいの体制だったのでしょうか。

最初は私と経理担当、労務総務の3名で少なかったです。N-2、N-1の時はかなり手薄で、N-1期の後半に1年くらい口説いていた経験もある友人の会計士がCFOとして入ってくれました。ただ、2023年1月に退職してしまい、監査法人から「23年5月のN期に入るまでに会計士が1名いないと無理だよ」と言われ、全力で採用を行いました。

チーム組成も重要なミッションですよね。ご友人の会計士の方はなぜお辞めになったのでしょうか。

プライベートな事情です。前職でIPOを経験しているのですが、準備期間が長引き大変だったという体験があったので、お子さんが生まれて家族のサポートが必要になり、CFOとしてのコミットが難しくなったという理由です。やめた後は独立しているのですが、今も良い関係性なので、時折サポートしてもらっています。その後、N-1で会計士、税理士の資格をもつメンバーがそれぞれ入社してくれて、上場するときには全体で6~7名になりました。

どのような年齢構成ですか。

コーポレートで見ると年齢は私が今32歳で一番上です。IPO準備を開始した時は28歳でした。税理士のコーポレート本部長が私の1歳下、会計士は私の6歳下ですから、上場したときで大体30歳前後です。

本当に若いチームですね。今現在は何名体制なのですか。

10名ほどです。私が管理管掌役員で、税理士のコーポレート本部長、会計士の方も含めて、経理チーム4名、人事労務総務(店舗出店事務も兼務)で3名です。今も管掌としてはコーポレートも含まれますが、最近は店舗展開や海外展開等事業サイドの管掌が増えてきたので、全社の予算策定とM&Aだけで他コーポレート業務は今の本部長に基本任せています。

経理は4名いらっしゃるのですね。

上場後は連結もあるので増強しています。上場後に入社した経理メンバーも2名います。

従業員は全社で何名くらいいらっしゃるのでしょうか。

全体だと連結で370名ほどです。直近は店舗の拡大をしているので店舗スタッフが一気に増加しています。yutori本社で勤務する正社員だと大体70名ほどです。上場前は単体だったので、上場後に増えている状況です。

コーポレートチームの人数感を意識されたことはありますか。

基本はなるべく少数で、ハイパフォーマーの人たちを揃えたいという考えを初期からずっと持っています。人員増加がパフォーマンス向上に必ずしも比例するわけではないため、人員増加は慎重に判断しています。

コーポレートの管掌役員としてのミッションで、チーム組成以外にどのような役割がありましたか。

日々の審査プロセスにおける証券会社との交渉や事業計画・予算策定、M&A対応です。私の役割として、ずっとコーポレートと事業サイドを半々でみています。事業サイドは店舗展開・サプライチェーン・海外展開を担当しています。

当時のコーポレートにおける重要ミッションで言うと、証券会社と監査法人の最終審査を通すところですね。証券会社や監査法人からくる細かい資料依頼等の対応は、社内の会計士、税理士のメンバーに対応してもらい、都度起こる事トラブル対応であったり、N期に入れるかどうか、東証審査に入れるかといった局面で主に対応していました。裏ではN期にいろんなトラブル対応があったので、突発的に起こる重要度の高いものをカバーしていました。

上場に向けて証券会社、監査法人、東証とあらゆるステークホルダーとのハードな交渉が出てくると思います。ファイナンスのバックグラウンドが無い中で、どのようにカバーしてこられたのでしょうか。

要所要所で都度周囲の経験ある方に聞きながら対応していましたが、ファイナンスの個別具体な知識というよりは、「会社としての意向がどうか」というところが大切な場面が多かったと思います。

結局、IPO時の公開価格も単純なロジックだけで決まるわけではないので「会社としてこうしたい」という想いをどれだけ強く押せるかが重要だと思います。

しっかりと業績が伸びているという数字の蓋然性に熱意を乗せてということですね。

そうですね。ただそれでも実は、1週間だけ、上場のスケジュールが延期しています。東証審査に上がる前の証券会社の最終審査のところで一回NGと言われまして…。

なぜNGと言われたのですか。

業績は全社の予算で見ると達成しているけれど、20個ほどあるブランド単位で見ると内訳の予実が全然合っていないと。証券会社からすると、「これは偶然じゃないの?」と見られてしまいまして…。

私たちとしては、「ブランド一つ一つは規模が小さくて合わせることが難しいので、ポートフォリオで保有することで、最終的に数字がちゃんと合います。」という考えでした。事業をポートフォリオで複数持っている会社でよく起きることですから。それでも一度NGとなってしまい、最後は審査部の方に直接説明をしにいって、理解してもらうことができました。

こういった最後の局面では、やはり金融知識というよりも絶対に最後までやり切るという「折れない心」が大切だと思いましたね。