【インタビュー】GMOインターネット株式会社/安田昌史氏 - 組織が大きくなるほど根幹が大切。グループ経営において常に意識していることとは(2/2ページ) - Widge Media

【インタビュー】GMOインターネット株式会社/安田昌史氏 - 組織が大きくなるほど根幹が大切。グループ経営において常に意識していることとは(2/2ページ)

記事紹介

専務取締役として、東証一部上場のGMOインターネットを中心に、上場8社を含む、グループ81社・従業員数約4100名(2014年12月時点)を管理統括する安田昌史氏。そのキャリアストーリーを伺った。

※インタビュアー/株式会社Widge 代表取締役 柳橋貴之

例の金融事業撤退の際はいかがでしたか?

よくその話もあるんですけど、それも、大変ではありましたが絶対大丈夫だという自信はありました。だから、そこまで辛いとか苦しいといった感覚ではなかったんですよ。あくまで金融のセグメントだけで、基幹サービス自体は順調に業績を推移していたので。

社員皆さんの士気はいかがでしたか? 退職者が増えたりしなかったんですか?

そういうことは全くなかったですね。毎日のように緊急対策会議のようなものをやっていましたけど、自分の中では、こういう厳しい中でも前向きにやっていこうという思いで動いていましたし、メンバーの皆も、自分の持ち場に責任をもって対応しているので、いわゆる離反をしている場合ではないという状況だったと思います。

GMOインターネットには事業部門、システム部門、営業部門、管理部門とありますが、事業部門と営業部門は淡々と業務を遂行していました。管理部門は、確かに、金融機関を走り回ったり、デューデリを受けたり、監査法人から手厳しい意見を言われたり、株主の方から重いお叱りを受けたりとか、いろいろと大変でしたけど、皆しっかりと業務を遂行していました。

メンバーマネジメントで意識していた点は何かあるんですか?

まず、そもそもが楽観的なので、基本的に「大丈夫だよ」と。 インフラ事業、メディア事業はきちんとキャッシュ・フローを生んでいたので。 ただ、胸が痛かったのが、対マーケット(投資家の方々)とのコミュニケーションですね。いろいろとお叱りも受ける中で、現場の皆が必死に対応していましたので。本当にしんどい思いをさせて申し訳ないなと、心の中ではずっと思っていました。

幸いにして、チームがそういうことも楽しむ(変化を楽しむ)という雰囲気が強いので乗り切れたのかもしれませんね。

「変化を楽しむ」というのは、採用の場面から意識されていることなのですか? そのようなマインドをお持ちの方をあえて採用しているのか、それとも入社後に自然とそうなるのか、どちらですか?

基本的に、ベンチャー志向の強い人が集まっているのは事実ですね。もともと入社いただく際には当社の「スピリットベンチャー宣言」に賛同できるかが前提としてあるので。あとは、僕もそうでしたが、何か物足りなさを感じて当社に入ってくるメンバーが多いので、その時点で変化を求めて入社をしてきているわけですよね。

ちなみに今、安田さんが個人的に意識されていることとかあるんですか?

最近、「チームというのは、個々人がいかにポジティブなエネルギーを出してゴールに向かって取り組むか」ということが非常に大切だなと感じているんですよ。 コミュニケーション・ロスとか、コミュニケーション・コストとかあると思うんですが、これを最小化するには、皆がポジティブなエネルギーを出して仕事に取り組むということが、最良の選択だと考えています。 基本的に、ゴールが設定されて、手法のコンセンサスが取れていれば、だいたい仕事はうまく進むと思いますが、うまくいかない場合は、コミュニケーションのロスとかコストが発生しているということで、それは感情の問題であったり、共有すべきことができていなかったりということだと思うんです。皆がポジティブに仕事をしていると、それが無くなるんですよね。

つまり僕が大切にしているのは、そういうチームを創ること。 そして、そのためにも、自分自身が一番ポジティブでなければいけないという思いを持っているんです。

細かい話ですけど、「忙しいですか?」と聞かれたら、(本当は忙しくない時はないんですが)「暇すぎて死にそうです」と言うようにしているんです。そうやってポジティブな発想に切り替えてアウトプットをしていくということも、細かいですが大切なことだと思うんです。

たしかに、安田さんからはいつもエネルギーを感じますね。

これは当社グループ代表の熊谷もしかり、名だたる経営者の方々がそうであるように、いわゆる生命力が非常に強い印象があるじゃないですか。これって生まれ持ったものもあって到底かなわない。気合いで届くものでもないですし。 人間が「気合いを入れる」というのは、結局、気合いを入れている時もあれば、入れていない時もあるので、平準化するとやっぱり届いていないんです。

どうしたら良いかを考えて、行き着いたところは、結局のところ、しっかりと体をメンテナンスして、ハードウェアの性能を上げるしかないと思ったんです。 いわゆる人間のハードウェアの性能を上げるために、泳いだり、走ったりするわけですが、そうすることで常にテンションを上げられたりするわけです。元気でいられる時間が長くなれば、ポジティブなエネルギーを出す時間も増えるんです。

4000人ほどの組織になってくると、根幹が大切になってくるので、一つ一つにポジティブなエネルギーを出していく、言葉を変えると、愛の目線で対応するということが、ベースのような気がするんですよ。

ご自身の体験上も、やはり体を鍛えて、ハードウェアの性能を上げると、マインド面に違いが出ましたか?

変わりましたね。僕も毎朝1キロ泳いでいるんですが、泳いだ後は本当に心のテンションが高くて、「今から渋谷マークシティの前でティッシュ配りしてきましょうか!」みたいな(笑)。 実際にはカフェに行って、やはりいろいろな人に声を掛けますもんね。 オフィスへ行くまでに、グループのスタッフもいるので、「おはよう」とか言うと、シャイなスタッフだと結構スルーされちゃったりとか…(笑)。全然違う会社の人に挨拶したりとか(笑)。

確かにそのエネルギーって、組織への影響も考えて、とても大切かもしれませんね。

そうですね。自分のポジティブなエネルギーを、どう作用させて、誰をハッピーにさせていくか、とても大切なことだと思います。今それをこの会社の中でやらせて頂いて、とても幸せなことだなと感じています。

安田さんが管理部門の統括になられた2年前くらいから、管理部門もまた変わってきたという話を聞いたことがあるんですが…。 管理部門ミーティングなどもされているんですよね?

そうですね。全体の管理部門のメンバー(80名くらい)を集めて、月1でやっている会議があるんですけど、僕がアスリート化してきて(キャラ設定が変わってきて)運営が徐々に変わってきたような雰囲気はありますかね(笑)。

管理部門の皆さん、さらに会社に対するコミットが強くなってきたとお聞きしました。

今まで、サービスの中心である営業や技術、マーケティングなどの「バック」としてだけの機能という意識で、自分たちの会社が世の中にどれだけ役に立てているのか、そしてその中で自分たちの仕事がどのような意味を持つのか、そこまで強くは考えていなかったようなんですね。

そこで、管理部門用に、「グループ管理部門が大切にする11箇条」たるものを作成したんですよ。最初は10箇条だったんですが、当時アルバイトで今正社員の女性スタッフが、最後に素晴らしい言葉を足してくれて、今の11箇条になったんです。「笑顔でスタート、笑顔でエンド、自分も相手もいつもニコニコ」なんて最高じゃないですか(笑)。

 

なかなか管理部門だけでこのようなものを作成されているのは聞かないですね。

やはり「グループ管理部門」というのは特殊で、連結が81社にもなってくると、セクショナリズムとか、自分の守備範囲を決めてしまうと、途端にまわらなくなってしまう。 それと、どうしても親会社の管理部門・ヘッドクォーターって、一般論として子会社(当社ではこのような上から目線の言葉は使いませんが)から見ると偉そうじゃないですか。

そういう上から目線だと、途端にグループ経営は成り立たなくなってしまうので、いかにグループ管理部門が「何のために仕事をしているのか」を考えるようにしているんです。 「自分のことを考えずに、まずはグループ会社のことを考えよう」とか。 とにかくグループ会社に対する目線は、非常にこだわりましたね。もともとこの11箇条も、スタッフの皆から出てきたアイデアでもあったので、本当に大切にしたいですよね。

スタッフの方からそういう意見が出る社風というのは素晴らしいですね。

我々のチームの特徴として、既成概念にとらわれない発想を全員が持つようになっていて、僕も一緒に仕事をしていて本当に楽しいです。

たとえば株主総会にしても、本当はとても保守的にやってしまいたいと思ってしまう場面だと思うんですが、他社様の株主総会を一緒に見学に行くと、「ああいうこと、うちでもやりましょうよ!」と、先進的なことを取り入れようとする意見がどんどん出てくるんです。総会を「無事に終わらせる」というよりは、「お越し頂く方をいかにハッピーにできるか」という目線で動く習慣がついているんですよね。

本質をしっかりと考えて仕事を進めていくということが、組織全体でできてきているような気がします。

自慢の組織ですね。

当社は、「会社のために」という表現がないんですよ。仕事って「会社のために」するものではなくて、「誰かを笑顔にするために」するものだと思っていて、会社は社員・株主・お客様など、関わる全ての方が幸せになるための道具なんです。道具のために仕事をするものではないと。 そういう思いのある場に集まっているチームなので、今「一番何が誇りですか?」と聞かれたら、やはり「一緒に働いている仲間」と答えますよね。いわゆる人間の良さというものが溢れているので、非常に恵まれている環境だなと感じています。

最後にビジョンを聞かせて頂いてよろしいですか?

スピリットベンチャー宣言という理念を、55年計画で実現していく。そしてステークホルダーの方々をハッピーにしていく(笑顔を増やす)。これにつきますね。

ちなみに安田さん個人は、退任後(セカンドキャリア)のこととか考えたことあるんですか? いつまでこの会社にいらっしゃるとか。

あんまりそういうことって考えたことないんですよ。今のミッションを全うしないと、という思いが強いので。そもそも、それは僕が決める話なのかな?という思いもありますし、自分で決められる話でもないと思います。必要でなくなったら、いない方が会社のためですし。

安田さんらしい言葉ですね。

退任後は…、その時は、世界中のレース(トライアスロンなど)にでも出ているんじゃないですかね(笑)。

GMOインターネット株式会社 専務取締役 安田昌史氏1994年にKPMGセンチュリー監査法人(現 有限責任あずさ監査法人)入所。公認会計士登録。2000年、GMOインターネット株式会社に入社。2002年取締役経営戦略室長、2003年常務取締役を歴任し、2005年同社専務取締役に就任。現在はGMOインターネットグループの管理部門統括役員として主にCFO業務を管掌。グループ企業のGMOペイメントゲートウェイ、GMOペパボ、GMOクラウド、GMOアドパートナーズ、GMOクリック証券などの役員も兼任する。