【インタビュー】株式会社ツクルバ 執行役員CHRO 藤田大洋氏(1/1ページ)
(財務・人事・経理・法務・広報・IRなど)コーポレート系職種における、副業・業務委託の活用が少しずつ広がってきている昨今、成長企業が、いかにしてその選択を取り入れているのか、戦略を担うキーパーソンにお話いただく専門特集。
株式会社ツクルバ の急成長を人事面から牽引する、執行役員CHROの藤田大洋氏に、活用の是非や、その手法などを伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge 代表取締役 柳橋 貴之
(オンラインをベースに、撮影側のマスク着用、ソーシャルディスタンス等、感染対策を十分に施した上でインタビューを実施しております。)
これまで御社のコーポレート部門において、副業・業務委託を活用されたことはございますでしょうか?
はい。昨年に人事制度の初期検討の際、フリーランスの方に入っていただいたことがありました。
今後も、人事領域は継続的にあるとして、例えば、経理や広報でも、活用していこうという話は出ています。
アウトソーサー的に業務を委託をしている会社も複数あるのですが、もう一歩踏み込んで、今後は個人の方に依頼していく可能性もあると感じています。
人事、経理、広報、総務、この辺りが今後可能性のある領域だと思っています。
ありがとうございます。実際に活用された人事(HR)のお話をお伺いできればと思います。まず、あえて正社員ではなく業務委託という選択をされた背景は、いかがでしょうか。
リソースの観点とナレッジの観点の両面があると思っています。
リソースの観点でいうと、例えば人事制度も、ベンチャーであれば、短くて1~2年、少なくとも3年位のタイミングで会社の規模に応じた基礎工事を行うのが一般的だと理解しています。
直面しているミッションや会社の優先順位でリソースがさけないことが起きた際、いきなり誰かを採用すると、その緊急度合いによってはミスマッチになることもあり、当然コストも重くなってしまいます。
以前からBPOやアウトソーシングはありましたが、一部の企画レイヤーに対しても、期間限定で課題解像度を上げたい場合にテンポラリーの方にお願いすることは、良いオプションだと思います。
もう一点のナレッジの観点からお話しますと、人事組織の課題は、一般的に「30人、50人の壁」とよく言われるように、社内で数年人事をやっていると、内側から組織を見る思考が固まってきてしまいます。
外部のナレッジやフレームをお借りすることで、「様々な気づきがあった」と、現場のプロジェクトマネージャーからも実際に報告を受けているので、ナレッジの観点でも、とても有効だと感じました。
株式会社ツクルバ 執行役員CHRO 藤田大洋氏
なるほどですね。どういったスキルの方にご依頼されたのでしょうか。
今回は、人事制度の再構築だったので、200〜500名規模のフェーズで、その会社が変わっていく時の課題等を既にご経験されていたり、コンサルテーションを含めてそういった課題にアタックされた方々にお越しいただいて、そのテーマに対するディスカッションとソリューションを依頼されたということですね。
「人探し」はどういった手法で行なったのでしょうか。
外部サービスを利用しました。私個人のネットワークで繋がっている方もいらっしゃるのですが、初見の方もあわせて検討をしなければと思いましたので。
何名の方にお会いされた上で、最終的にお一人に絞られたのでしょうか。
今回は3名のご経歴書は拝見したものの、お会いしたのは、最終的に決めた方のみでした。
ご経歴から判断をして、ある程度確度が高い状態でお会いされたということですね。
それはありますね。その方が在籍していた会社がどこで、どういったご経験をされてきていて、今は外部からどういう支援をされているのかなど、事前にイメージを持った上で進めました。
あとは直接コミュニケーションを取っての確認ということですか。
そうですね。おそらく正社員採用の際も同じだと思いますけど、やはり、実際に話をしてみて、考え方や価値観がフィットするかは確認が必要だと思います。
加えて、コミュニケーションを取りながら、その方の良い面なども見えてくるので、そういった過程を経て、総合的に判断することが重要な気がします。
実際にお願いをしようとなった際、条件面などはどのようにお決めになったのでしょうか?
今回はプロジェクトベースで入っていただくということでしたので、通常のコンサルティング発注に近いイメージでした。そのため、予算や期間も、会社側としての予見がありました。
レイヤー別に、「採用のアウトソーシングであればこれくらい」、「人事制度や各種HRテーマの企画であればこれくらい」など、それなりに賃金相場も見えていたので、それらを踏まえて、お互いに、すり合わせをさせていただいた格好です。
期間、頻度、工数などをベースに動いていくため、全体を調整しながら決めていきました。
工数としては、どの程度だったのでしょうか。
週に1日、それを3~4ヶ月くらいのタームだったと思います。
その期間で足りるプロジェクトであったのですね。
そうですね。3〜4ヶ月の集中プロジェクトで、具体的には、等級制度であったり、ラダーの組み方、どういった評価項目を設計するのが望ましいかなどを諸々点検し、それぞれサマリーとしてまとめていくというようなことをお願いしました。
その方を中心に動いていくプロジェクトだったのか、それとも、藤田さんを中心としたプロジェクトにその方が参加されたのか、その辺りはいかがでしょうか。
今回は弊社の人事マネージャーと部長がカウンターとなって、その方も加えた3名でプロジェクトをすすめてもらいました。私は、途中と最後の2回くらいレビューで入っていますが、基本的には、社内の者を中心に進めていきました。
週一のディスカッションはリモートだったのでしょうか。
そうですね。特にコロナが厳しい時期だったので、リモートで行っていました。
結果的にはやはりお願いして良かったですか。
良かったと思いますね。リソースの観点もさることながら、特にナレッジの観点で、やはりこちら側の考えに寄り過ぎていたなということを改めて気付かされました。
来期、人事制度を大きく変える予定なんですが、その基礎的な議論が活かされてくると思うので、有効度はとても高かったように思います。
外部の個人の方を活用してプロジェクトを動かすのは今回が初めてだったのでしょうか。
過去、独立をしてお一人で経営をされている方に、バリューをアップデートする際のプロマネ的な支援をお願いしたりなど、近しいイメージの依頼は何度かありますが、こういった個人の外部の方というのは、今回が初めてだったと思います。
法人として支援している会社がある中で個人を選んだ理由はどういったところだったのでしょうか。
過去にコンサルティング会社にもお願いをしたケースがあるので、メリットも十分に理解をしているのですが、領域によってくる面もありますよね。
コンサルティング会社によって、その特性であったり、得意とする領域があるじゃないですか。その会社の方向性やアプローチにフィットするケースであれば是非ともお願いしたいですが、必ずしもそうではないこともあります。そのテーマにフィットした方が本当にアサインされるかということもありますし。
あとは、単価に関してでしょうか。法人経由のコンサルティングとなると、どうしてもfeeが高くなってしまうので。
それを柔軟に、週1回・隔週、アドバイザリーで、ハンズオンで、などを上手くやろうとすると、個人の方の柔軟性は大きなメリットだと思います。
たしかに、コンサルティング会社からアサインされる方がその領域に強いかどうかは重要ですし、それであれば、最初から個人の方を狙って探すというのも有効かもしれないですね。
実際のところ、事業会社の現場で起きている様々な力学ってあるじゃないですか。経営の力学、部門の力学、人事の力学など、そういったことを現場の中でしっかりと獲得してきている方のセンスで話をされるのと、綺麗なストラテジーで話をされるのとでは、だいぶ受け取り方も違いますよね。
現に私も、上場を考えているスタートアップから相談を受けることがありますが、相手先とは絶対にコンサルタントモードでは話せないですからね。やはり経営の気持ちや現場の気持ちがリアルに分かるので、とても近しい感覚で話をしていると思います。
当事者として実際に体感をされているかどうかは大きなポイントですね。
非常に大事なポイントだと思います。
今回ご依頼をされる中で気を付けた点やコツ、注意点があればお伺いしたいと思いますが、いかかでしょうか。
たとえば、先ほどの続きで、コンサルティング会社との比較でいうと、あくまでコンサルティング会社というフレームがあることで、一定のクオリティが担保される側面がありますよね。
一方、個人の方では、どの程度のパフォーマンスになるのかが見えにくく、ばらつきやリスクもあると思っています。
なので、そこの評価は慎重に行わなければいけないと思います。
たしかにそうですね。
やはり直接面談し、ご経験の幅や、現場をどれくらい踏んできているのかなどを確認するのと同時に、その方との目線感がしっかり合っているかどうかを重視する必要がありますよね。
特にプロジェクトで一緒に動いていくのであれば、ディスカッションをしてみて、実際に一緒に動いていくイメージが持てるかどうかでしょうか。
今回、事前にお会いした回数は何回だったのでしょうか。
一回だったと思います。
どなたがお話をされたのでしょうか。
私が直接話をしました。
そうだったのですね。
プロジェクト自体は人事部長とマネージャーに任せていましたが、当然私も課題意識を持っていましたし、今回利用をしたサービスも、もともと私の知り合い経由だったということもあったので。
一回で決められるというのも、業務委託ならではのような気がします。仮にワークしなければお断りすることができますからね。
たしかにそうですね。ただ、こちらも、領域的にある程度の目利きがあったということもあって、すぐに決められましたね。
ありがとうございます。副業・業務委託の方を活用することに対して、藤田さんなりのお考えがあればお聞きしたいです。
まず前提として、だいぶ副業をするという土壌ができてきていますよね。マクロ環境的にも、一人の方が1社で勤めあげることがそもそも減ってきている背景があって、ベンチャー、特にIT企業の場合、どこの会社に所属しているということよりも、自分の経験やスキルを高めていくために動くということが当たり前になりつつあります。
直近のコロナによって、働き方自体もマルチになってきているので、そういった中で、自分の幅を広げるための選択肢として外部に出ていくということ自体は、キャリア形成上、私も賛成の立場にいます。
その通りかもしれないですね。
活用する企業側の立場からしても、先ほどのナレッジとリソースの観点でいってもそうですが、世の中的に環境変化がとても激しい時代なので、一つの領域に長けた方を確保し続けることが厳しくなってきていると思うんです。
オペレーションをアウトソーシングするというレベルではなくて、イシューやプロジェクトベースで外部の方と組んで、いかに生産性を上げていくかということがテーマになってきているように思いますね。
もちろん瞬間的なコストは高くなってしまうかもしれないですが、人件費とかPLで見た際の年間の総コストでみれば、プロジェクトあたりのパフォーマンスはとても良いような気がします。
活用する側のスキルも上げていかないといけないですね。
まさにおっしゃる通りで、多様な経験をお持ちの外部の方をどう活用していくかという企業側のスキルは、今後益々重要になってくると思います。
特にコーポレート領域は、なかなか活用が難しいという意見も聞きます。
コーポレート領域は外に出しにくいというイメージもあるのかもしれないですが、そんなことを言っていると、企業競争力や人材確保力がどんどん下がっていってしまいますよね。
トレードオフとして経営イシューで見た場合に、むしろ内部が変わっていくことで企業価値向上にも貢献できるのではと私は思っています。
まさにといったご意見ですね。
そういった掛け算で、動く側と活用する側は、もっともっとトライアルしていって良いと思っています。
ありがとうございます。
冒頭にもありましたが、引き続きコーポレート領域でも外部活用の必要性が出てくるということでしょうか。
そうですね。内部人材が潤沢にそろっている会社は別かもしれないですけど、瞬間的に足りないであるとか、ナレッジベースで外部の知見を借りたいというテーマは多いので、そこは引き続きチャレンジしていきたいなと思っています。
藤田さんにも、「外部からアドバイスが欲しい」という声は届きますよね?
とてもありがたいことに、もともとの知り合いであったり、個人的に応援をしたいと思っている経営者や人事の方とディスカッションベースでお話することはありますね。
スタートアップはもちろん、成長過程にある会社は、いろいろと藤田さんにアドバイスを求めたいと思います。
拙い経験ですが、広い意味で、社会へのお役立ちができたらとは常々思っています。
例えば、御社のコーポレート部門に在籍されている方が、他社さんとディスカッションするということ自体は賛成なお立場なのですか?
そうですね。ベンチャー界隈って、みんなで情報交換をして、いろいろと実験をしながら進んでいるという面があると思うので、程度問題もありますけど、しっかりと会社のレギュレーションを持った中であれば、問題ないと思っています。
そういった経験を通じて自分の幅が広がっていけば、社内還元にも繋がっていくと思いますし、現に私も実感値として持っているので、CHROという立場としても、応援したいですね。
最後にメッセージがあればお願いします。
HRの領域に限らずですが、日々、様々な変化があり、正解が無い中で走っていかなければいけない状況下なので、近しい課題を持っている人達が集団的に価値や発見をシェアしていくような循環がもっと出てくると良いなと思っています。
今回のお話もそういった思いでお受けしましたので、少しでも何かのお役立ちができたら良いなとピュアに思っています。
本日はお忙しい中本当にありがとうございました。
新卒で株式会社アイルに入社し、人事採用チームの立ち上げマネージャーとしてIPOを経験。その後、2009年に株式会社アシストに参画。経営企画室マネージャーとして創業社長引退に伴う全社経営・組織変革プロジェクトを主導した後、2017年より株式会社ツクルバに参画。人事総務部長、執行役員CHRO兼ピープル&コミュニテイー部長などを経て、2022年2月より現職。