【インタビュー】ソウルドアウト株式会社/池村公男氏・榎本守晃氏 - 営業本部長をIPO準備責任者に。必要なのは「知識よりも意識」(1/2ページ) - Widge Media

【インタビュー】ソウルドアウト株式会社/池村公男氏・榎本守晃氏 - 営業本部長をIPO準備責任者に。必要なのは「知識よりも意識」(1/2ページ)

記事紹介

2017年7月12日に東証マザーズへ上場を果たしたソウルドアウト株式会社
IPOへ導いた同社の精鋭チームに、これまでの足跡と今後の抱負を伺った。

※インタビュアー/株式会社Widge パートナー 山岡直登

<上場準備の開始~推移>

本日はお時間を頂きありがとうございます。早速ですが、IPO準備の取り掛かり時期についてお伺いさせてください。

池村:最初に検討を始めたのは2015年の春先です。株主の承認を得て、正式に準備を開始したのが9月頃。2016年を直前期として進めることを決め、監査法人のショートレビューや主幹事証券会社の選定・契約などを1~2か月で進めました。監査法人は2社、主幹事証券会社は5社から、それぞれ選定しました。

IPOを目指すきっかけを教えてください。

池村:当社は株式会社オプト(現株式会社オプトホールディング)の100%子会社ということもあって、設立当初はIPOという発想は一切ありませんでした。あくまで、オプトグループの1社として、地方・中小の市場を拡大することを目指していました。

一方、株式会社オプトとは、ビジネスのノウハウや採用・育成の方法、開発ツール、販売するプロダクトなどが大きく異なっていたため、それぞれ独自性を持って展開していました。一つ一つ積み重ねて成長してきたのですが、中長期の戦略を描く際に、それまで以上に「市場創造」や「事業成長」を進めていくためにはどうすればよいか?という議論が経営陣の中で頻繁に出てくるようになり、IPOという選択肢が手段としてあがるようになりました。

取締役CFO 池村公男氏

IPOに期待する効果としては、大きく以下の二つを想定していました。

  • 優秀な経営人財や若手人財の採用強化
  • 業務提携やアライアンス強化

つまり、事業拡大・市場創造を進めていくスピードの加速です。

そして、様々なディスカッションを繰り返す中で、長期的な事業拡大のためにはIPOが有効だと考え、株主と協議した上で、本格的に準備を開始したという流れです。

当時のコーポレートチームの人員構成を教えてください。

池村:経理1名、法務1名、人事・総務7名、経営推進3名の組織でした。

IPOプロジェクトにおいては、大人数でプロジェクトチームを創ってしまうと、タスク管理やタイムマネジメント、教育等で非効率になると考え、メインとして携わっていたのは、私と本部長の榎本2名になります。

指示系統が多くなってしまうと、かえって物事が進まないという経験をたくさんしてきたので、あえてこのような体制で進めていきました。

榎本さんはどういったバックグラウンドなのですか?

榎本:私は元々ビジネスサイドの人間でして、営業の統括をしていた立場でした。IPO準備を開始するタイミングに、事業側とIPO推進室の室長を兼務することになり、池村と一緒に進めることになりました。

IPO準備責任者 榎本守晃氏

ビジネスサイドの方を、コーポレートのトップに置くというケースは珍しいですね。

池村:そうですね。あくまでIPOは手段なので、IPO準備において事業を図示化、具現化して、申請の事務手続きだけではなく、問題や課題を洗い出しながら事業システムを育成することが最重要だと考えました。

榎本は業界歴も15年に亘っており、営業本部長として事業に精通していたので、適任だと考えアサインしました。

また、弊社のクライアントには上場を目指す成長企業も多いので、ビジネスサイドのメンバーにIPOを経験させることで、いずれクライアントにそのノウハウを提供していきたいという想いもありました。

なるほど。それは確かに良いアイデアですね。当時の榎本さんのミッションを教えてください。

株式会社Widge パートナー 山岡直登

榎本:まず、社内の必要情報を整理し、ファイルサーバーで管理するところから始めたと思います。IPO準備に関わる全ての会議や社内外の折衝の場にも、池村と同席をして、主幹事の選定から、監査法人対応のフロント業務などを担っていました。

ショートレビュー後に50個くらいの課題が出てきたので、その課題をどう解決に導くかということを、池村に相談しながらディレクションしていきました。

池村:IPO準備は、全体のスケジュールをロードマップ化し、期限内に確実に解決または処理していく事が重要です。榎本には主幹事証券会社から指摘された課題に対して、私や代表の荻原も駒として、それぞれどの担当に任せるか、いつまでに終わらせるのか、という社内スケジュール管理のディレクションをお願いしました。

あとは並行して、諸々の規定を整備していくことを一緒にやっていましたね。

榎本:Ⅰの部を作成するタイミングでは、そのディレクションも私が対応していました。

池村さんとの業務の棲み分けはどのようにされていたのですか?

池村:私は経営陣や株主の意向にそった全体の設計と意思決定が主な役割でした。IPO準備においては、資本政策とエクイティシナリオ、株主対応を中心に主導していました。

 

株主対応については、2016年1月にヤフー株式会社の資本が入って株主が2社になりましたので、双方の意思をくみ取りながら、事業拡大のシナリオ説明や、上場企業として耐えられるかなど、社会的責任という観点でいろいろとご指導を頂いた内容を落とし込んでいきました。

これらのアウトプットの管理を私が行い、榎本には主幹事証券会社や監査法人、会計事務所など外部機関と連動しながら、徹底的にスケジュール管理をしてもらいました。いわゆるビジネスサイドでいうプロジェクトマネジメントです。

<コーポレート組織の変遷>

上場に至るまで、コーポレートの組織はどのように拡大されていったのですか?

池村:弊社の場合、経理とITまわりは親会社にアウトソースしていたので、経理とITまわりの内製化が喫緊の課題でした。2016年~2017年にかけて、経理領域を5名、IT領域を5名ほど採用して内製化を進めました。

IT領域については、親会社の基幹システムを使っていたのですが、最適化のために独自の基幹システムを構築する意思決定をし、この分野で設計から対応可能な責任者を採用した後、チームメンバーを複数名採用しました。

経理領域については、内製化・開示体制・連結決算処理等に対応するため、上場企業で連結決算・開示のマネジメントを経験している者や、子会社4社の連結業務を対応できる者など、即戦力クラスを中心に増員しました。

榎本:入社してくれたメンバーに日々の業務を任せ、IPO準備は、引き続き池村と私が中心に行っていったというイメージです。

 

池村:Ⅰの部については、数字まわりのパートは経理と連携しながらですが、事業概況や事業リスクなどを含めた、いわゆる数字以外の部分は、榎本にメインで対応をしてもらいました。

ご経験がない中で、Ⅰの部を作成するというのは大変ですよね。

池村:楽しんで対応していたんじゃない?

榎本:いや…(笑)。正直、楽しいという感覚はなかったですね(笑)。

近しい業界の開示書類もいろいろとチェックしながら、自社として考えられるリスクの洗い出しや、事業戦略の落とし込みを、どういう表現で文章にするかなど、池村や証券会社とも頻繁に確認をしながら対応していました。

手探りで、トライ&エラーを繰り返して作成していったので、それなりに大変な作業だったと思います。

少し話が変わりますが、上場企業の子会社だったからこそ、IPOがスムーズに進められたという実感はありますでしょうか?

池村:おっしゃる通りです。

具体的には、「取締役会運営」、「J-SOX」、「経理規定」などですね。取締役会の運営については、事業開始以後欠損なく議事録運用ができていましたし、完全ではないですが、上場企業の子会社として監査を受けていたので、J-SOXや経理規定などは高水準だと言われた記憶があります。

ベンチャー企業で特に取締役会議事録をしっかり運営できている会社は少ないと聞きました。

そうですね、特に設立数年でIPOを目指すベンチャーは、取締役会があまり機能していない会社が多い印象です。やはり親子上場のメリットかもしれないですね。

 

池村:そうですね。但し、その分、親子上場の是々非々などの論点を議論する時間は多く取りましたし、株主とのコミュニケーションなど通常のIPOにはない大変さもあるかと思います。振り返ってみると、私達は良い父親、株主に恵まれました。

 <苦しかったエピソード>

 IPO準備過程での苦労話を聞かせてください。

 榎本:理想と現実のギャップには苛まれていたかもしれないですね(笑)。

主幹事証券会社から求められる対応・観点を1つの基準と捉え、その基準・観点に対して当社にとっての最適解を導きたいという思いはあるものの、人的作業に頼らざるを得ない作業も多くて、コーポレートメンバーにもルーティン業務がある中で、プラスアルファの負担をかけてしまう。それでもリソースが限られているので、やってもらわなくてはいけない…。というような、理想と現実のバランスを調整する点はとても苦労した気がします。

なるほど。

加えると、物理的に証券審査の回答書を出す作業も大変でした。

500問という数もそうですが、提示されるスケジュール内にスピード感をもって且つ正確に回答しなければならないので、そこのスケジュール管理は苦労しましたね。一つ一つの質問に対して、一貫性を重視のうえ、この質問は誰に回答してもらうかなどを決めて、各部署と連携をしながら回収していくという作業は、どうしてもアナログでやっていくしかなかったので。

 

学生時代のテストの回答を出すような心境にもなりましたね(笑)

池村:IPO準備はある意味「数の暴力」といっても過言ではないよね(笑)。

榎本:そうですね(笑)。「1週間以内に300問の質問に答えて下さい」みたいなこともありますし。

池村:そのおかげで、管理機能が強くなる。