【インタビュー】株式会社Speee/西田正孝氏 - 2度の準備を経て実現したIPOの舞台裏と、それを支えたカルチャーとは(2/3ページ) - Widge Media

【インタビュー】株式会社Speee/西田正孝氏 - 2度の準備を経て実現したIPOの舞台裏と、それを支えたカルチャーとは(2/3ページ)

記事紹介

2020年7月に東証JASDAQに上場を果たした株式会社Speee。マザーズからJASDAQへの上場先変更、コロナ禍での上場承認など…次々と押し寄せてくる難局を乗り越え、IPOを牽引したCFO西田正孝さんに、これまでの足跡や、同社の文化、同氏のキャリア観など様々な角度からお話を伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge利根沙和

成長し続ける会社を支えた「採用」へのこだわり

そこから昨年の上場までだいぶ期間が空いていますが、コーポレート体制はどのように変化されていきましたか?

私の入社後まもなく人事を1名採用しました。ITベンチャーではやっぱり人が財産なので、良い人材を採用するためにも最初に良い人事を、というのは、経営における一番の要と言っても過言ではないと思います。それから10年ほどたった現在は500名ほどの従業員がいますが、やはりその当時にまず良い人事を採用できたからこそ、今の強い組織のベースを作ることができたと感じています。

人事の方の存在は大きかったのですね。500名規模となった現在、御社のコーポレート部門は各チームにしっかり有資格者を据えられているなという印象があります。これはIPOを意識しての採用だったのですか?

IPOは特段意識しておらず、普通に会社組織が大きくなっていく過程で、コーポレート部門の機能をそれぞれ強化していく必要があって、経理・法務・総務・労務と必要な各キーパーソンを採用していった結果、そうなったという感じですね。

コーポレート部門の役割の1つとしてリスク管理がありますが、リスク管理ができてないことで会社に大きなダメージを与えてしまいかねないことを考えると、やはり高い専門知識やスキルがあることは大前提。でもスキルによる守りが完璧なだけでは、会社の事業成長をアシストするという意味では不十分なんですよね。下手したらブレーキになりかねない。スキルを活かしてリスクを排除しつつも、会社を伸びる方向に導ける事業成長基軸の視点も持っている。その2つの要素を持った人を探すというのにはものすごく拘りました。

スキル面で申し分なく、かつ事業性にも明るい方…その2つをクリアする方にご入社いただくのはなかなか大変なことですよね。

おっしゃる通りです。実際とあるポジションではずっと探し続けて、2年かけてようやく採用できたということもありました。

なるほど。でも1度目の上場申請取り下げを決められたところからも感じられるように、ここは本質的に大事だと思ったポイントに対してのコミット力というのが御社の素晴らしいところですね。

そうですね。ありがとうございます。

機が熟したタイミングでの2度目の準備開始

その後は順調に事業を拡大されていって、今やもう柱は2本と言わず複数ある状態だと思いますが、再びIPOを目指されたきっかけやタイミングがあれば教えてください。

先程お話した事業の2本目の柱が確立できることが確信できたからというのが一番のきっかけですね。3本目の柱になるような新規事業の種まきも始めており、ちゃんと伸びていく会社だと自分たちでも確信できましたし、マーケットに出て行った時にもきちんとそれを説明できるようなフェーズが見えてきた。タイミングとしては、2017年から2018年の頭頃です。

西田さんはCFOとして、IPOという目標を持って入社された中で、最初の上場申請を取り下げられてから7~8年という長い期間を過ごされています。その間はどのようなご心境だったのでしょうか。

そうですね、その間も会社は毎期成長していましたし、それに伴って経営課題も変わり、自分自身の守備範囲も広がっていったんですね。例えば海外に子会社を作ろうとか、国内でもどんどん新規事業を拡大していこうとか、良いことも悪いこともありつつも経営上のテクニカルな話も色々あって飽きることがなかったですね。Speeeは今後も伸びていくという確信はずっとあったので、常にやりがいを感じてきました。

すごく素敵なことですね。2度目の上場準備のときは会社の規模感も全然違うと思うのですが、準備過程における違いはいかがでしたか?

違いは大きく2つありました。事業が拡大して従業員数も多くなっていたので、それに伴って体制を整備し直さなくてはいけない部分があったのが1つ。もう1つは上場基準が以前よりもさらに細かくなっていて、マザーズの各種説明資料のボリュームが約3倍になっていたのには驚きましたし、物理的な大変さはありましたね。でもここまでの間にしっかりと各部門の採用ができていて、それぞれがしっかり役割分担して対応してくれていたので、そこまでのクリティカルな問題は感じなかったのが正直なところです。

妥協せずに良い採用を実現してこられたことが効いていらっしゃる感じですね。2度目の準備はそのまま順調に進められたのですか?

体制構築や資料の準備はそこまで苦労はなかったのですが、実は後半、いわゆる審査に入っていく中で結構色々なことが起こりまして…。色々ある中で主幹事証券も変更することに。それはやっぱり少し大変でしたね。

主幹事変更って、そうそうあるものではないですよね?

多くはないと思います。とても難しい判断だったのですが、色々なタイミングが重なって、1度目の上場準備時にお願いしていた証券会社の同じ担当者の方にお願いすることになったんです。当時から10年間しっかりと会社が成長してきて、ちゃんと応援していただけるような体制になって、そしてまた主幹事をお願いできたことは結果的に良かったなと。

Speeeが目標とする上場のタイミングやバリュエーションについて、かなり高いハードルを自分たちで設定していたのですが、すごく応援いただける空気感のもと、諸々の準備を進めることができたのでありがたかったですね。改めて、IPOにおいても信頼関係がとても大事だということを実感しました。

10年前の経緯をご存じだからこそ、担当者の方も成長された御社の姿は嬉しかったでしょうね。