【インタビュー】ウェルスナビ株式会社/廣瀬学氏・竹内織絵氏ーIPO後を見据えた持続的成長可能な組織の作り方~投資家との誠実な対話を続けることで得られるものとは~(2/3ページ)
2020年12月に東証マザーズ(現 東証グロース)に上場したウェルスナビ株式会社。資産運用支援のフィンテック企業として初の上場であることに加え、上場時の時価総額が776億円という大型上場。さらには、海外投資家比率が旧臨報方式で過去最大となる50%となったことから注目を集めた。そんなウェルスナビでCFOとしてIPOの指揮をとってきた廣瀬氏。そしてIPO後に経営企画部に加わり、IR戦略を担っている竹内氏。現在も成長し続けるウェルスナビのIPOを見据えたファイナンス戦略からIPO後のIR戦略について、お二方にお話を伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge 利根沙和
少数精鋭のコーポレートチームの更なる進化
上場までのプロセスにおいて、廣瀬さんがマネジメントする上で心がけていたことは何かありますか?
廣瀬:上場準備チームの中で、各自の担当業務の範囲というのはしっかり決めていたのですが、一方でお互いが柔軟にフォローし合える状況にすることを大事にしていました。上場前のフェーズから在籍し、そこで役割を果たそうとしてくれている社員は、色々な経験を積みたいという人が多いと思います。ですから、ある程度役割分担をしながらも、常にお互いが柔軟にフォローすることで担当業務外も含めた経験ができる方がモチベーションが上がりますし、組織全体のパフォーマンスも上がります。そこを担保できるような環境づくりを意識していました。また、上場準備のチーム内では、情報をできるだけオープンにして、全員が同じ情報を持ってチームとして一気に短距離を駆け抜ける!みたいな、そういう勢いのあるチーム運営を心がけました。
勢いそのままに無事2020年12月に上場達成されて、約2年。竹内さんという新戦力も加わられて、コーポレート組織の役割分担や担当範囲などに変化はありましたか?
廣瀬:現在は、経営管理グループ、コンプライアンスグループ、リスク&ガバナンスグループと、大きくこの3グループから成るコーポレート組織の全体を私が取りまとめているという形になっています。全体の領域が広いので、自分で手を動かしてというのは徐々に減ってきているのですが、それぞれの領域で専門性のある優秀な人材が揃ってきているので、それぞれが裁量を持って働いているのが現状です。そのおかげで、私は全社に関わる案件や、会社の中長期的な成長に向けた検討やディスカッションなどに注力することができるようになってきています。上場後にボリュームが多くなるIR業務に関しても、竹内の入社によって、証券会社や機関投資家の方々とのコンタクトも含めお任せしている部分も多く、だいぶ助けられていると感じています。
すごく心強い組織が出来てきているのですね。竹内さんの業務内容についても教えていただけますか?
竹内:私は経営管理グループの中の経営企画部に所属しています。主な業務はIRやファイナンス、それ以外にも会議体の運営や、事業計画、予実管理などを経営企画部として担当しています。会社がきちんと健全に運営されることを第一に、前線で会社の成長に貢献したいと思いながら日々の業務に携わっています。
会社の成長に繋がるIR活動とは~常に誠実であれ~
上場後に「これは上場前からしっかり準備しておいて良かった」と思われる取り組みなどはありますか?
廣瀬:上場の2年半ぐらい前から、しっかりと機関投資家と対話を重ねてきたことは、上場後のIRにおいても非常に良かったと思っています。それによって、機関投資家の当社への理解が深まり、関係性を強化することができました。我々にとっても、機関投資家の考え方に対する理解を深められたことは大きな収穫で、上場時に投資家に向けて説明するエクイティストーリーをブラッシュアップするにあたり、大きな助けとなりました。IPOのタイミングで投資していただけたというのもありますし、上場後も引き続き深い議論ができていて、良い関係性の構築につながっているのではないかなと思っています。
長期目線で取り組まれてきたファイナンス戦略が活きていらっしゃるのですね!竹内さんもIRとして、日々投資家の方々とやり取りされることは多いのですか?
竹内:はい。上場後もIRについては、しばらくCEO柴山と廣瀬が中心となって行ってきていたのですが、そこを徐々に私が引き受けることによって、経営のリソースをより確保できるようにと思っています。前職ではずっと機関投資家側の立場で企業を見てきたので、機関投資家の考え方や求めている情報というものが何かを想像し、ある程度理解することができるのが私の強みだと思います。その知見を活かしながら今IRに取り組んでいるところです。
竹内さんの前職で得たご経験や視点を活かされたIRの取り組みについて、ぜひ教えていただきたいです。
竹内:機関投資家の立場から事業会社に一番期待することは何かと考えた時に、それは誠実な会社であることだと思っています。先ほど廣瀬がIPO前の調達について、無理にバリュエーションのストレッチをさせないという話がありましたが、上場後も同様で、色々な投資家の方がいらっしゃる中で、ポジティブな情報もネガティブな情報も、どちらもきちんと開示していくということを心掛けています。信頼を失うのはすぐですが、その一度失った信頼をまた築き直すのはすごく時間がかかりますし、信頼回復不可能なこともありますので、そこはとても気を付けるようにしています。
上場前から御社が貫いてきたポリシーは、投資家目線から見ても大切なポイントなのですね。
竹内:はい。また当社の株主には海外の機関投資家の方々が多いので、海外に向けたIRも積極的に行っているのですが、経営陣もIR担当も、海外投資家の方となるべく通訳を介さずに直接ディスカッションができるようにという点も大切にしていることの1つです。やはり間に通訳が入ると、どうしてもその熱量みたいなものが伝わりにくかったりするので、そこは出来る限り直接伝えられるような形をとりたいと思い取り組んでいます。
また、海外の機関投資家以外にも、国内の機関投資家やヘッジファンドの方とも積極的に面談を実施するようにしているのですが、これはどんな局面でも乗り越えられる強い企業を目指すにあたり重要なことだと考えています。投資家ごとに企業を見る目線というのは当然違い、投資のタイミングも自ずと異なってきます。なるべく幅広い投資家の方にリーチをさせていただき、ウェルスナビをご理解いただいていると、会社として難しい局面や相場の様々な局面でも、その局面を投資機会とする投資家に応援していただけると考え、日々投資家の方々と向き合っています。
なるほど。投資におけるポートフォリオの組み方の極意と似ていますね。
竹内:そうですね。最後のポイントとして、株主や投資家の方々を単に「株式を買って下さるお客様」として捉えるのではなく、会社の中長期的な成長を支えてくれるパートナーであると考えています。ですから、IR活動を一方的な会社の情報発信の活動とするのではなく、投資家の方々と共に建設的な議論を進め、会社の成長につなげられるようなIR活動を行っていきたいです。
先ほどの廣瀬さんの上場前の取り組みから、今の竹内さんのIRのお話まで、一気通貫して御社の実直な社風が伝わってきました。上場前から大切にされていた部分に、上場後入社された竹内さんのお人柄がぴったりとハマっていて、皆さんが同じ方向を向いて投資家の方々に対して誠実に取り組んでいらっしゃることに、とても感銘を受けました。
竹内:ありがとうございます!