【インタビュー】サンライズキャピタル株式会社 代表取締役社長 清塚徳氏(1/2ページ)
投資家の立場から見た理想のCFO像や、CFOと管理部長の違いなど、「投資家からみるCFOの在り方」というテーマで、様々な見解をお話しいただく専門特集。
サンライズキャピタル株式会社 代表取締役社長 清塚徳氏に、日々の活動の中で感じる率直な思いを伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge 代表取締役 柳橋貴之
まずは御社の特徴、投資方針について教えて下さい。
我々の投資方針は、極めてオーソドックスなバイアウトファンドの考え方を踏襲しています。収益性が高く、安定したキャッシュフローを持つ企業を対象に、過半数(51~100%)を取得するいわゆるコントロールレバレッジドバイアウト(銀行からのLBOローンを使いつつ投資をする投資手法)が基本方針です。過度な高い値段やレバレッジを使わずに無理なく、オークションも避けながら、できるだけ相対や限定的な競争の中で案件を発掘するようにしています。
企業規模については、中規模のオーナー系の会社が多いです。売却の判断をされる方が経済的な条件だけではなく、我々の過去のトラックレコードやチームメンバーのキャラクターなど、基本的な考え方に共鳴し選んでいただけるような投資方針を貫いてきているというのが大きな方針です。
実は2024年5月にファンドレイズを行ったのですが、その時も何千億円かご関心は示していただいたものの、あえてそれをドルで5億ドル、今の為替で750億~800億くらいに抑えました。基本的に小規模も大規模もやりませんし、中規模の案件にフォーカスするようにしています。
中規模案件の特徴は何かありますか。
結果的に特徴になってきたということなのですが、80数%、90%近くの案件が事業承継です。しかもご高齢の方が後継者不在でということではなく、30代~40代(中には高齢の方もいらっしゃいますが)が中心です。
それは創業二代目、三代目などですか。
いえ、一代目の方です。中には二代目や三代目もいらっしゃいますが、基本的には創業者です。例えば、若くして創業され15年ほど経ち、売上200億、利益が15億~20億くらい出るようになったがさてどうしようか…ということでご相談をいただきます。
サンライズキャピタル株式会社 代表取締役社長 清塚徳氏
どういった背景があるのでしょうか。
儲かってもいるし、事業意欲も高いのになぜ我々の門を叩くかといいますと、もっと成長を加速させたい、追加の買収をしたいができる人材がいない、あるいは海外展開したいなどという想いがあり、そうした結果として上場をできるだけ早くしたいと。ただし、体制の整え方、人材採用の仕方、監査法人・証券会社・東京証券取引所とのコミュニケーションも分からないので、我々のサポートを求めていらっしゃいます。
そういうことなのですね。
従って、売り切りではありません。株式を2割、3割、4割、中には49%という方もいますが、保有したまま社長として残っていただきます。過半数を取得しないと我々も投資家さんとのお約束も果たせないし、LBOローンも借りられないので、典型的なのは、我々が6割、7割、8割の株式を取得するやり方です。社長はその分売却し一定のキャッシュはできますから、万が一のことがあったとしても相続税など、事業承継等は安心です。
なるほど。とても理にかなっていますね。そして創業者の方にも続けていただくのですね。
創業者には戦略と指導者・リーダーとして、トップ営業としての役割に今まで以上に集中していただきます。その代わりそれ以外の雑務はお任せくださいと。基本的にはCFOがいないケースが多いので、一定期間現地に駐在し、我々が「ボディオン」でCFO、COO的な役割を担います。
ボディオンですか。
はい。ハンズオンを超える「ボディオン」という言い方をしています。大阪でも名古屋でも北海道でも福岡でもどこへでも行きます。暫定的に繋いでからは、CFOにも入っていただき、管理業務等々はその方やチームに牽引いただきます。そこからは三者間の役割分担となり、創業者、CFOあるいは管理部門の方々、我々が役割分担をしながら会社を成長させていくことが多いです。もともと成長志向は強いですし、我々も是非成長してほしいと思っています。
ちなみに、ある証券会社さんの分析によると、2021年以降のファンドがサポートしているポートフォリオの上場件数では我々が一番だそうです。
トップですか!
現在は分かりませんが、1~2年前にそのように伺いました。当時はコロナ禍の時期ですから、よほど成長していないと上場はできませんでした。そのような中で我々の投資先は立て続けに上場したわけです。上場した会社を思い起こすと、ほとんどが先程申し上げたようなパターンにはまっているケースでした。
素晴らしいですね。ちなみに、自力ではなく、御社のお力を借りてIPOを選択される背景にはどういった意向があるのでしょうか。
まずはどの会社も自力でトライします。ただ、トライしてから2〜3年が経ち、やってみた結果、非常にしんどい…と。例えて言うなら、ゴルフでシングルプレイヤーを目指して打ちっぱなしに行き始めたものの、かえってスコアが悪くなってしまった…というイメージでしょうか。
分かりやすいです(笑)
どういったスイングでどういったショートゲームをすれば良いのか分からない。そこで、いろんな人に相談すると「ファンド等に力を貸してもらったほうが早いのではないか」と言われるわけです。我々はレッスンプロみたいなもので、常時何人もシングルプレイヤーをコーチしていますから、この癖はどうすれば直るのか、どうすればスコアがあと10改善するかといったことがある程度は見えます。
確かにそうですよね。
あと、もう一つに経済合理性があります。
我々が株式を70%取得したとしても、IPOすると株式を売却してその半分くらいになりマイノリティになるわけですよね。さらにそこから1年、2年くらいでは徐々に売却するので、最終的にはいなくなります。もしかしたら自分で上場ができたかもしれないけど、いつまでかかったか分からないし、できても10年くらいかな…と。それが結果的に3年で上場できたということになると、全然違いますよね。
ですから、一定の持ち分を我々に譲渡していただくと何倍かにはなります。リターン分を我々にも譲ることになるのですが、創業者側の持ち分も何倍かにはなります。二段ロケットのような形があることと、我々は最終的にいなくなるので、上場した会社の株式を何割か保有し社長のままであれば、実質的にはほぼすべてコントロールできるんです。
悪くないお話ですよね。
その通りです。このスキームが、オーナーの方々や仲介の方々の間に口コミで広がり、最近はファンド指名でこういうパターンで是非助けてほしいというお話が非常に増えています。
もっと増やしたほうが良いかもしれないですね。
かもしれませんね(笑)。明らかにご相談が増えてきています。
先ほどおっしゃった「会社が自力でやるのはしんどい」。この「しんどい」とは業績なのか、上場準備にあたって内部管理体制を整えることなのか、どういったことがあるのでしょうか。
大きくは二つあります。
本質的なところでは事業を伸ばすということですよね。ただ単に伸ばすだけとか、たまたま伸びたということではなく、緻密な事業計画を作って、月次に落とし、KPIで分解し、それを達成していくということです。そしてそれを監査法人、証券会社、取引所に理解してもらい上場承認をとらないといけません。そもそも事業計画をきちんと作っているケースは少ないですし、それをモニタリングする体制もないですよね。計画通りに伸びていて、且つ、上にも下にも大幅にずれていないということを、3年くらい証明し続けなければならないので、やはりしんどいはしんどいですよね。
そうですよね。たまたま去年伸びたけど今年は凹んで…という話はよくあります。
あともう一つは内部統制です。監査法人と主幹事証券からだいたい200〜300問くらいの改善要求がきて、毎月月次でどのくらい改善したかということを進めます。CFOなど、それができる方がいないと創業者オーナーが全て自らやらなければなりませんので、本来経営者がやらなければならないことができなくなってしまいます。さすがにそれはしんどいので、誰かに入ってもらったほうが良いなということになるわけです。
たしかにそうですね。ちなみに、既にVC等からエクイティファイナンスをされている企業はどのくらいありますか。
あまり多くありません。やはり創業者100%ないしは一族で持っていらっしゃるというケースが多いです。
そうですか。お話を伺っていると非常に合理性が高いのが分かります。
役割分担が三者間ではっきりしていて、かつ嫌なことやあまり得意ではないことはやらなくて良いわけですからね。
社長はとにかく社員を鼓舞しリーダーシップを発揮して、トップ営業で事業をどんどん伸ばすことに集中していただく、あるいは広告塔のようにしっかりと会社の顔になっていただく。
そして管理面は、CFOを中心とした管理部門の方々がしっかり推進していく。加えて、監査法人、銀行、証券会社、取引所などに対する説明も、数字回りに関してはCFO等が担っていく。
我々はそれをコーディネートしたり、この問題を解決するためにこのような専門家がいますとご紹介したり、時には我々自身がプロマネとして解決していくということもあります。
役割分担が明確ですね。
ただ上場会社を目指すことを考えると、企業が自走できないと上場不適格になってしまいます。上場が近づいてくると我々の関与を減らして、社長やCFO、管理部門の方々でできるようになっていただきます。