【インタビュー】株式会社シャノン - IPOに一発逆転は無い。人間関係も仕事も日々の地道な積み重ね(2/2ページ)
2017年1月27日に東証マザーズへ上場を果たした株式会社シャノン。
IPOへ導いた同社の精鋭チームに、これまでの足跡と今後の抱負を伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge ゼネラルマネージャー 山岡直登
<苦しかったエピソード>
苦労話があれば聞かせてください。飯野さんからいかがでしょうか?
飯野:入社時に最も苦労をしたのは、労務管理ですね。当時はタイムカードを手入力(現在はICカード登録)いる社員が多く、中には打刻すらしていない人もいました。結果として残業時間の計算には苦労しました。
前職では当たり前だったことが当たり前ではなかったため、驚きましたね(笑)。
一からルールを整えて、それを入社したばかりで信頼関係が構築できていない社内に浸透させていく過程が大変でした。
労務管理上は当然のことですが「なんでそんなにきっちり管理しなくちゃいけないの?」という声も多く、それを一つ一つ丁寧に説明する作業は本当に大変でしたね。
啓蒙活動はどういった工夫をされたのですか?
飯野:これといった工夫はないんですが、とにかく一人一人Face to Faceで丁寧に説明をしていきました。当時は別の方がやっていた郵送物の社内配布もやらせてもらいつつ、日常的にコミュニケーションを取って、信頼関係を作っていきました。
素晴らしいですね。その他に苦労した点などはありますでしょうか?
飯野:これは完全に余談ですが、IPO時に東証に提出する、書類一式のファイリングが、地味に大変でした(笑)。
東証・主幹事・当社用でそれぞれ同じものを3つ作るんですが、ファイリングするべき膨大な量のリストはあっても、求められているアウトプットを誰も知らないですし、ネットや外部の方に聞いても分からず、どこまで体裁を気にするべきか、資料は最終的にファイル5つ分くらいになったのですが、ファイル数は少ないほうがよいのか、細分化して持ち運びしやすいほうがよいのかなど、決める際に苦戦しましたね(笑)。こういう時に、経験者がいれば楽なのかなと思いました。
千葉さんは何かございますか?
千葉:業務的に一番苦労をしたのは、Ⅰの部ですね。有価証券報告書を一から作ったことがない中での作業だったので、数字の部分よりも注記の部分に時間がかかりました。
一つの数字を出すのにも、様々な資料から引っ張ってこなくてはいけないので、この一つの数字にどれだけ時間がかかるんだよと(笑)。従前からのデータ管理が本当に大事だなと思いました。
時期としては2015年(15期)の期末でしょうか。スケジュール管理の甘さもあって、急いで短信を出さなきゃ!みたいなことになって。徹夜で作業をしたこともあります(笑)。
友清さんはどうですか?
友清:IPO準備を発行体側で経験するのは初めてだったということもあって、何が大変だったかと言われると、全部大変だったんですが…(笑)。2016年3月くらいからは特に忙しかったですね。5月に証券審査入りをしたんですけど、12月までは常に東証や証券会社との対応に追われていましたからね。
コーポレートチームの組織構築という意味で、苦悩はありましたか?
友清:それはなかったですね。何人か短期間で退職してしまうみたいなことはあったんですが、千葉と飯野の存在があったので安心感が強かったです。二人が柱として動いてくれていたので、非常に助かりました。
<大切にしていたこと>
IPO準備の過程で心がけていたことなどありますか?
千葉:メンタル的な話になってしまうんですが、張り詰めない、イライラせずにリラックスする…というようなことを心がけていました。IPO準備の過程は、イレギュラーな業務がどんどん降ってくるので、そういったときも余裕を持って受け入れられるようなメンタルを常に意識していました。
ありがとうございます(笑)。飯野さんはどうですか?
飯野:人事総務は日常の積み重ねが大事で、直前に一発逆転が出来ない分野です。そのため、特別これといって心がけたことはないのですが、積極的に社員とコミュニケーションを取ることと、法律を守る、しっかりとデータを管理するなど、当たり前のことを当たり前にするということを意識していたかもしれません。
なるほどですね。友清さんはいかがですか?
友清:今思えば、準備の佳境の時はだいぶイラついていたかもしれません…(笑)でも、ストレスコントロールは確かに意識していたかもしれないです。今は全然いかないのに、当時は息抜きで、仕事帰りによくマッサージに行ったりしていたので(笑)。
あとは、責任ある立場として、自分でできることは全て巻き取ってやろうという意識は常に持っていました。役員も当然各々の役割分担がありますので、他の役員になるべくIPO準備そのものの負担は掛けないようにしなければという思いもありましたので。上場準備で事業が疎かになってしまっては本末転倒ですからね。
<IPOを目指す企業へ>
IPOはゴールではなくスタートだと思うのですが、あえて、現在準備を進めているコーポレートチームの方々に向けて、何かお伝えできることがあればと思いますが、いかがでしょうか?
友清:そうですね。偉そうに言える立場ではないのですが、お伝えできることとすれば、計画的に動いていくことの大切さですかね。その時にできることは、できるうちに片づけるという、当たり前のことですが、これはすごく大切なことだなと感じました。
欲を言えば、先を見越して前倒しで対応すれば良いのですが、それがなかなかできないんですよね(笑)。
CFOポジションとしては、社長や他の役員としっかりとした健全な関係を築き、自分の範疇の経営判断については、社長や他の役員に責任をもって提言し、推し進めていくという、本来あるべき姿は、成り立つようなboardメンバーの関係性を創ることも大切だと思います。
千葉さんはいかがでしょうか?
千葉:経理という立場であれば、書類作りがメインになるので、ファーストドラフトを早くあげることの大切さは学びました。様々な機関からチェックが入るので、ぎりぎりに出すと、その後の訂正が追いつかないんですよね。最初は100%の仕上がりまでいかなくとも、とにかく早く出すということを意識した方が良いんだなと感じました。
あとは、健康管理です。先ほどのメンタルももちろん大切ですが、しっかりとご飯を食べて、しっかりと寝る(笑)。やっぱり健康でいることが一番だと思いました。最後に倒れて、組織に大きな穴を空けてしまっては大変なので。
飯野さんはどうですか?
飯野:繰り返しになってしまいますが、上場準備で必要な人事総務側のことは、労基や法律を守るとか、人事データをしっかり管理するとか、当たり前な日常業務の積み重ねだと思うので、日々の業務を丁寧に運用するということに尽きるんだなと思いました。
あとは、今はチャットのような社内コミュニケーションツールもいろいろとありますが、Face to Faceで社員と日頃からコミュニケーションを取っていくことが基本ではないかと思います。
<今後の目標>
今後の目標があればお聞かせください。
友清:管理部全体としては、上場を経験することで、より安定した体制ができています。できる限りこの強固な状態を維持して、会社の成長を後押ししていけたらという思いですね。また、今後の成長を支えるためにも、業務設計や利用ツールの見直し等で更なる業務効率化をしていく事が必要だと考えています。
個人としては、CFO兼経営管理本部長という縦の兼務状態をやめて、早く千葉や飯野に管理本部長のポストを渡したいと思っています(笑)。
千葉:やはりマザーズへの上場はスタートラインだと思うので、その先ももちろん考えています。管理部門のメイン担当として引き続き牽引していきたいですね。本則への上場も、いつでもできるような体制をつくっていくことが使命かなと感じています。
飯野:個人目線になってしまいますが、自分じゃなければできないという業務を減らしていくことですかね。私は次から次へと新しい分野の仕事をもらえていたので良かったのですが、部署内の人が経験の幅を広げられるように、そういった体制づくりをしていきたいです。
経営管理本部 経理グループマネージャー 千葉弘之氏(左)
経営管理本部 人事総務グループマネージャー 飯野幸絵氏(右)