【インタビュー】株式会社Speee/西田正孝氏 - 2度の準備を経て実現したIPOの舞台裏と、それを支えたカルチャーとは(1/3ページ)

記事紹介2020年7月に東証JASDAQに上場を果たした株式会社Speee。マザーズからJASDAQへの上場先変更、コロナ禍での上場承認など…次々と押し寄せてくる難局を乗り越え、IPOを牽引したCFO西田正孝さんに、これまでの足跡や、同社の文化、同氏のキャリア観など様々な角度からお話を伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge利根沙和

求めていたやりがいのある環境に出会うまで

本日はお時間をいただきありがとうございます。早速ですが、これまでのご経歴とSpeeeに参画された経緯からお聞かせいただけますか。

はい、私がSpeeeに入社したのは2009年の4月なので、もう12年経ちます。会社が設立して1年半ぐらいの頃で、当時はまだ社員が20人ぐらいでした。当時五反田にオフィスがあったんですが、会議室も無く、お世辞にも綺麗とは言えないオフィスでした(笑)。

そんな頃に参画されたんですね!西田さんは公認会計士で、元々は監査法人にいらっしゃったんですよね?

そうです。大手監査法人に4年弱いました。Speeeの前にベンチャー企業を2社経験しています。

そうなんですね。その当時は監査法人からベンチャーへ転職される会計士の方はあまり多くなかったですよね。今でこそ珍しくはないキャリアとなりましたが、意識的にベンチャーを選ばれたのでしょうか。

最初の転職は2006年だったので、当時はかなりのレアケースでしたね。監査法人を辞めようと思ったのは、事業会社で自分が当事者としてやってみたいと思ったからなのですが、規模の大きなところに行っても結局歯車になってしまうかもしれないという懸念がありました。なので、ある程度初期の段階から広い視野でいろいろと任せてもらえる環境にチャレンジしたいと思ったんです。

株式会社Speee 西田正孝氏

株式会社Speee 取締役CFO 西田正孝氏

なるほど。そういった思いのもと、ベンチャーを2社ご経験された後に出会ったのがSpeeeだったのですね。

はい。でも実はベンチャー2社での経験を経て、当時はリーマンショックのタイミングだったこともあり、ちょっとベンチャーは難しいかもしれないと思っていたので、違う軸で転職活動をしようと考えていたんです。Speeeは知り合いのエージェントからの紹介ということもあり一度お会いすることにはなったのですが、最初はお断りするつもりでいました。

え!そうだったんですか(笑)。お断りするつもりが、そのまま10年以上!

はい。人生、何があるかわからないものですね(笑)。入社後に聞いた話ですが、実はSpeee側も書類選考の時点で、僕はIPOの達成経験がないということでNGにしていたらしいんです。IPO準備のためのCFOとして経験者がほしいのは当然ですよね。でもそこをエージェントの方が「とりあえず会ってみてほしい」と推してくれたみたいで…。

すごいご縁ですね!実際に面接されてみてピンと来たという感じでしょうか。

そうですね。一緒にやりたいと思いました。当時は、正直事業がその後伸び続けるかは私自身には判断しきれないとは思っていたんですが、IPOに向けてある程度の準備状況にあるか、その会社として数字が伸びているかは見ていたんですね。でも最終的には、代表の考え方、人柄、経営陣の優秀さが決め手でした。

着実な準備と同時に、冷静に世の中を見渡し辿り着いた1つの結論

お互いに素晴らしい出会いでしたね。入社されてからはすぐに上場準備をスタートさせたのでしょうか。入社時のチームの状況なども教えてください。 

入社時には既に監査法人は決まっていたので、私は主幹事証券の選定から始めました。

体制としては、もともと事務の女性が1人だけのところに私が加わりました。そこから外注していた経理業務を内製化したり、顧問弁護士や社労士と契約したりと整えていきましたが、経理はずっとメンバーを増やさず、上場直前までその体制で進めました。

そうなんですか!IPOというと会計面だけではなく、労務面での整備も大変ですよね。会計士さんとはいえIPOは未経験という中で、その体制で上場まで持っていくというのは相当なご苦労だったと思うのですが。

そうですね。規模が小さいからできたっていうのはありますけど、当時は本当にほぼ全てを私1人で、内部管理体制を作りつつ、上場のための様々な書類作成をしながら、という感じでやってました。

IPO未経験での苦労については、実はなくて、1つ1つの作業の難度という意味では決して高くはなかったので一人でも充分に対応できました。確かにⅠの部などの上場審査書類を作るのは監査法人などの経験がないと難しいとは思いますが、幸いそこは経験があったので。それ以外に、監査法人や証券会社との交渉、内部統制構築やそれにまつわる書類作成などは、自ら考えたり調べたり、周囲の専門家を巻き込みながら進める推進力だったり、限られた時間の中でやりきる根気強さだったりが問われるものだと感じました。

なるほど。会計士という概念をとっぱらって、本当に全て網羅されていて驚きですが、西田さんのご経歴もしっかり活きたということですね。

そうですね。当時ライブドアショック後ということもあり、東証の審査基準が非常に厳しくなったタイミングだったので、当初の予定より1年遅らせてでも内部管理体制をしっかり整える方針にしたんです。そのおかげで時間的にもそこまで厳しくなかったというのもありますね。しっかりと時間をかけて、きっちり整理していきました。

そしていよいよ審査に入りましょう、という段階で、うちから「辞めます」と言ったんです。

え!!御社からIPOを辞めると言われたんですか!?

そうなんです。2010年当時、日経平均株価も低く、そこまでのバリュエーションがつかないという社会状況で、希望する金額の資金調達も叶わないかもしれない。そのような中であえて無理をして上場する必要はないのではないかと。

当時は主力事業が1本だけだったのもあり、もう1本しっかりとした事業の柱ができるタイミングまでは無期限延期にする、となったんです。

 IPOの無期限延期ですか…!なかなかできる決断ではないですよね。どのように決められたのですか。

Speeeでは誰か1人の声で決めるということは基本的にはなくて、上場に限らず必要なディスカッションはきちんとやる、という文化がもともと会社としてあるんですね。本質論で議論するというのを、これまでも色々な場面でしてきていて…。当時も会社のすごく重要な局面として、みんなでフラットに議論したことによって、本質に立ち返った意思決定ができたのだと思います。

なるほど。そのディスカッション文化が御社の礎というか、今の強みにも繋がっていらっしゃるんですね。

そう思います。あと、VCからの調達をしていなかったのも大きかったですね。外部の声でどうこうしないといけないということがなかったので、経営の自由度が高く、しっかりと自分たちで決めることができました。