【インタビュー】rakumo株式会社/西村 雄也氏 - 徹底的な業務の可視化がもたらしたスマートなIPO準備とは(3/3ページ) - Widge Media

【インタビュー】rakumo株式会社/西村 雄也氏 - 徹底的な業務の可視化がもたらしたスマートなIPO準備とは(3/3ページ)

記事紹介

2020年9月に東証マザーズに上場を果たしたrakumo株式会社。行動指針として掲げる「情熱。協働。変化。」という言葉通りに、常に感謝の気持ちをもって社内外と協働し、IPO達成という大きなチャレンジを成功に導いた同社CFOの西村雄也さん。幅広い興味関心のもと、多種多様な分野で積み重ねてきた豊富な経験。そこから得た確かな知識と実行力をもって推進したIPO準備から達成までのお話を伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge 利根沙和

丁寧な説明と感謝の心~社内外をまとめる巻込力とは

ご経験を存分に活かされ、スムーズにIPO準備を進められる中で、西村さんが特に心がけていたことは何かありますか?

IPOは責任者1人ではできません。周囲の協力が不可欠です。社内だけではなく、社外のパートナーの方々の協力を得るためにも、丁寧な説明と感謝の心を忘れないように心がけてきました。これ、言葉にするのは簡単なのですが、実践することが大切だと思っています。例えば、サポートしてもらう時には、段取りを踏まえた上で「1週間後にこのようなことが起こるから、工数を○○増やすことになると思うので、よろしくお願いします。」とヘッズアップをしておきます。また、資料作成のデータをもらった時などには、「この場面でこのように利用させてもらいました。ありがとうございます。」とフィードバックをするように意識していました。

IPO準備に限らず、どのような会社でもどのような人間関係でも大切なこと。ただ、準備期間中というドタバタ劇の中で、ついおざなりになりがちかと思います。それをしっかり心に留めて実践されていたというのが素晴らしいですね。IPOを達成されて、社員の働き方や意識にも変化は感じられますか。

はい。変化を感じております。具体的には、個々人の業務に対するコミットメントが高くなり、コンプライアンスに対する意識も高くなったと感じますね。経営管理に関しては会計処理が多岐に渡るようになり、今まで以上に正確に開示していこうという高い意識を感じます。また、他社でコンプライアンス問題が起きた時は、それを事例に当社での在り方を検討したり、逆に良い事例を見つければそれを参考にしたりと、他人事と思わずに自社でも起き得ることと捉えて、よく話し合うようになりました。

ますます良い方向に変化されて行っていますね。上場1周年を迎えましたが、振り返ってみていかがでしょうか。

そうですね。振り返ると、2つありますね。1つは上場効果を非常に感じているということ、もう1つは上場会社の責務を感じているということです。

なるほど。それぞれ具体的に教えていただけますか?

まず上場効果については、資金調達の他、事業面での効果も大きいと感じています。具体的には、大企業を含めて幅広いクライアント様からの信頼が得やすくなり、ビジネスに繋がりやすくなりました。また、採用面においても効果があり、当社のホームページから直接応募してくれる人が増えています。株主様も6千名近くなり、知名度の向上が図れたと感じています。

御社がIPOを目指された理由である「信用力と知名度の向上」がもたらした効果ですね。

そうかもしれませんね。なお、2つ目の上場会社の責務については、金商法開示、適時開示をタイムリーにミスなく行うこと。当社はこれまで訂正を出したことは1度もなく、これは本当にチームに感謝しているところです。この点をしっかり継続していきたいと考えています。また、IR対応が増えているので、誰にどの情報をどのように伝えていくのかも大変重要です。IRは「会社が保有する情報」と「投資家の持つ情報」を可能な限りギャップのない形にすることだと私は定義づけています。IR年間計画を入念に立て実行し、PDCAを回す。このようなことを証券会社様のサポートを得ながら、実施しています。

重要なのはできない理由ではなく、できるために何をするか

様々な貴重なお話を伺ってきましたが、これからIPOをめざしている企業へのアドバイスがあれば何か教えていただけますか?

IPO時は業務量がかなり多くなります。統制環境を構築する必要もあり、経営管理部門だけではなく、営業チームや営業支援チーム、プロダクトチームなどにもストレスがかかります。しかし、その点は変えられない。重要なのは、変えられないことにこだわるのではなく、変えられることにフォーカスすることかと思っています。例えば、ストレスがかかるのは仕方ありませんが、会社がIPOの目標に向かって走れるように、丁寧に何度でもIPOの意義をメンバーに伝えていくということなどがあげられるかと思います。それを責任者1人でするのではなく、社長や周りの幹部を巻き込みながら実施するのがよいのかなと思います。できない(例:協力が得らえれない)理由を並べて終わるのではなく、できるようにするために何が阻害要因になっているのかを考え、その阻害要因をできる限り取り除くというスタンスが重要かと考えております。

ありがとうございます。最後に今後の目標を教えて頂けますか。会社として、チームとして、個人としてありましたらお願いします。

会社としては、当社がビジネスを展開している「Google」 や「Salesforce」関連の事業をさらに伸ばしていきたいと思っています。私は取締役CFOという立場ですが、事業戦略上、良いものがあれば、どんどん提言していきたいです。また、チームとしては、経営管理部門をさらに継続性のある強い組織にすること。このチームの強さこそが会社の継続性に繋がると考えているので、今後も更なる業務の見える化を進めていきたいと考えています。各業務の主担当以外でもその業務ができる体制を作り、こんなことはないことを願いますが、万が一誰かが病気や事故に遭っても業務を回せるようにしておきたいですね。そして、いつでも戻ってこられる体制を作っておくという点も大切だと思っています。

理想的な管理部門のあり方ですね。

恐縮です。あとは、チームに成長の機会を提供することも私の役割ですね。一人一人が色々なことができるようになることが、各自の成長に繋がると思っています。昨年はIPOがあったので、業務量の約4割が新しいことへのチャレンジで、約6割が通常業務というような割合でした。成長の機会が多い分、ストレスもたまりやすい時期だったかなと思うので、今年はこれを新しいこと2割―通常8割に抑えるように、来年は3割-7割とまた少し新しいことも増やしていくというような環境を整えられればと考えています。

そこまで分析されていらっしゃるんですね!何ごとに関しても俯瞰して見られているのがすごいです。西村さんに「なんとなく…」という場合はあるのですか?(笑)

もちろんあります(笑)。ただ、どちらかというと、数字とかシステマティックに見るのが好きですね。

徹底したプロフェッショナルな姿勢に大変感銘を受けました。西村さん個人としての目標もお聞かせいただけますか。

上場会社としての責務をしっかり果たせるよう努力したいと思っています。四半期ごとに正確な財務諸表を出す、投資家の皆様へ向けた情報配信を適切に行う、コンプライアンス違反を生じさせないための体制を作る、などです。そして一定程度の基盤を整えたら、当社自身がベンチャーに投資をして、世の中をより良くしていきたい。そのような業務に関わっていきたいと思っています。

その分野でも手腕を発揮される姿が目に浮かびます。今後のさらなるご活躍を楽しみにしています。本日は貴重なお話をありがとうございました。

rakumo株式会社取締役CFO 西村雄也氏
2005年に三井住友銀行に入行後、法人営業に従事。同行退職後、2007年より野村證券にてM&Aアドバイザリー業務、公開引受(IPO)業務に従事。同証券会社退職後、2018年よりrakumoに参画し、取締役CFOに就任。