【インタビュー】rakumo株式会社/西村 雄也氏 - 徹底的な業務の可視化がもたらしたスマートなIPO準備とは(1/3ページ) - Widge Media

【インタビュー】rakumo株式会社/西村 雄也氏 - 徹底的な業務の可視化がもたらしたスマートなIPO準備とは(1/3ページ)

記事紹介

2020年9月に東証マザーズに上場を果たしたrakumo株式会社。行動指針として掲げる「情熱。協働。変化。」という言葉通りに、常に感謝の気持ちをもって社内外と協働し、IPO達成という大きなチャレンジを成功に導いた同社CFOの西村雄也さん。幅広い興味関心のもと、多種多様な分野で積み重ねてきた豊富な経験。そこから得た確かな知識と実行力をもって推進したIPO準備から達成までのお話を伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge 利根沙和

理系から一転営業マンに…銀行・証券を経てIPO準備企業へ!

本日はお時間をいただきありがとうございます。様々なバックグラウンドをお持ちでいらっしゃいますが、これまでのご経歴とrakumoへ入社された経緯など教えていただけますか。

実はもともとは工学部電子情報工学科を専攻しており理系出身なんです。そのため、多くの友人が大手電機メーカー、大手自動車メーカー等の業界に進んでいましたが、私は三井住友銀行(法人営業)に就職をしました。就職活動中に様々な話を聞く中で、銀行業務の幅広さに魅力を感じたというのが大きな理由で、入社してからはデットファイナンスを中心として、国内為替、外国為替、リース、ファクタリング、コンサルティング等、様々な観点から幅広い業務に関わらせてもらいました。

理系から一転、銀行の営業として社会人をスタートされたのですね!

はい。飛び込み営業等の新規開拓も含めて行っていました。今思い出しても相当大変だったなと思うのですが、当時の先輩方が非常に良い方々でたくさん助けて下さいました。そのおかげで新規のお客様も順調に増やすことができました。銀行で2年半ほど働いた後に、ヘッドハンターの方から声を掛けてもらったことをきっかけに野村證券へ転職。入社後は企業情報部でM&Aアドバイザリーを務めました。電機精密、素材エネルギー、金融等のセクターに所属し、担当した案件は未公表案件も含めると100件以上になります。こちらでもアナリスト業務からディールマネージャーに至るまで幅広い国内外のM&Aアドバイザリー業務に携わりました。

アドバイザリー業務は、どのくらいの期間されていたのですか?

M&Aアドバイザリーは9年です。その後、公開引受部に異動してIPOアドバイザリーを2年弱務めました。IPOアドバイザリーは、担当する会社がIPOをするために必要な会社設計や会社運営をアドバイスする仕事です。数千億円以上の大企業からベンチャー企業まで担当したのですが、これが非常に面白くて、次第に自分自身が事業会社で会社設計や運営そのものに携わりたいという思いが強くなりました。そこでエージェントを通じてご縁のあったrakumoへ2018年9月に入社しました。

取締役CFO 西村雄也氏

本当に多岐にわたるご経験を携えてのご入社ですね。

そうですね。銀行(デットファイナス)での経験、M&Aの経験、IPOの経験という点ではその通りかもしれませんね。なお、これまでの経験はrakumoでも本当に活かされています。例えば、デットを引っ張ってくるのに必要な5要素を満たす為、銀行での社内稟議をスムーズに通すにはどのような説明が必要なのかや、規模的に審査部決済となる場合の準備の仕方、金利交渉のための取引材料など…。そういった視点は銀行員時代に養いました。その後のアドバイザリー業、特にM&Aにおいては、正解のない課題がよくありました。その度にメリット・デメリットを比較して複数の選択肢を作り、それを比較検討した結果なぜ複数の中からその方法をとるのか、クライアント様には常に明確な理由をもってアドバイスをさせていただいていました。また、M&AやIPOアドバイザリーでは沢山の利害関係者(事業会社、弁護士、会計士、相手FA、等々)を巻き込んで進めていかなければいけないのですが、その点、「だれが、なにを、いつまでに、どのようにやるのか」というプロジェクトのドライブを効かせる必要があります。そういった点も磨かれた一つの要素ですね。

アドバイザリー業だけでなく、銀行時代も含めたご経験全てが活きていらっしゃいますね。その幅広い視点や感覚…もうスーパーマン的ですね!

私は、全然スーパーマンなんかではないです(苦笑)。私はどちらかというと努力型で、努力しながらそこに効率的にやるための工夫を織り込みながら取り組むというスタンスで仕事をしてきており、その結果うまくはまったという感じなのだと思います。ただ、銀行時代の先輩方、投資銀行時代の企業情報部や公開引受部の上司、先輩及び後輩に至るまで本当に恵まれまして、それぞれの場所で多大なサポートをいただけましたし、自分がしたいことをやらせてもらえる環境を提供していただきました。それには感謝しかありません。

IPOで目指した更なる信用力の獲得

いよいよrakumoへ入社されて自ら事業会社でIPO準備を進められるわけですが、当時のミッションはどのようなものだったのでしょうか。

まず1つ目は当然ながら、経営マターであるIPOの推進・実行で、2020年9月に晴れてマザーズ上場を果たすことができました。もう1つは、経営管理部の組織構築をすること。そしてそこでプレイングマネージャーとして陣頭指揮をとるということが入社時のミッションであり、今も継続的に取り組んでいることですね。

御社がIPOを目指されたのも西村さんのご入社と同時期のことなのですか?また目指されたきっかけなども教えていただきたいです。

IPOについては、私の入社よりも前の2017年頃から検討を始めており、当該経営マターを私が責任者として推進していくということでした。rakumoが上場を目指したきっかけというか、その動機は会社の成長への寄与が大きいと考えたためです。具体的には、「信用力・知名度の向上による取引先の拡大」、「資金調達力の増大と多様化による財務基盤の強化」、「内部統制の充実による持続的な組織の構築」などが理由です。

御社の扱っている製品は各企業の中枢の情報を扱うものですから、信用力などは重要ですよね。

おっしゃる通りです。信用力や知名度の向上による取引先の拡大は、中でも重要なポイントです。お客様側での与信稟議が通りやすくなりますし、物事を進めるスピードが全然違ってきます。また、知名度向上は自社の採用面でも良い効果がありますし、社員のモチベーションアップにも繋がっていると思います。「そんな会社知らないな」ではなく「ああ、あの上場している会社ね」と言われる方が圧倒的にいいですよね。社員の皆様にとっても、親族が集まった場などで「上場しているrakumoという会社に勤めている」と一言添えられるようにしたいという思いもありましたね(笑)。

上場を目指された理由を改めて伺うと、やはりIPOは様々な面で効果をもたらしているのですね。西村さんが入社された当時は、実際どの程度IPO準備が進まれていたのでしょうか。

入社当時はIPOを目指すことは決まっていたものの、IPO準備の実務面ではまだまだこれからという状況で、私の入社した2018年9月頃からが準備の本格始動となりました。一般的にIPO準備は最短でも2~3年かかるスケジュールになるので、私の入社時の目標としては最短上場まで2年数か月という状況。rakumoは12月決算なので、まず2018年12月末までにIPOに向けた準備業務を24項目に分類し、それを基に各種体制を整備していきました。翌2019年12月末までには整備した事項の運用に取り組んで、2020年の申請までに各関係機関や投資家への対応に備えるというスケジュールをたてました。社内外の十分なサポートもあり、お陰様でほぼ想定通りに実行することができ、2020年9月に上場の日を迎えることができました。

すごく明確なスケジュールですね。ともにIPO準備に携わったチームはどのような体制でのぞまれたのでしょうか。

経営管理部門は、経営企画、IR、経理・財務、人事・労務、総務・法務、情報システム、内部監査といった幅広い業務をカバーする必要がありますが、当社の規模からすると少数精鋭で整える必要がありました。具体的には、ベトナムにある子会社の経営管理メンバーも含め10名程度の体制ですね。

ベトナムに子会社をもたれているのですね。現地のコロナの状況も大変だったのでは?

そうですね。現地での対応も大変ではありましたが、現地のメンバーが適切に対応してくれました。また、当社はそもそもクラウド製品を扱っていますから、リモートワークの体制としては比較的整っておりましたし、自社製品を使いながら全員リモートワークを実現しています。