【インタビュー】ウェルスナビ株式会社/廣瀬学氏・竹内織絵氏ーIPO後を見据えた持続的成長可能な組織の作り方~投資家との誠実な対話を続けることで得られるものとは~(1/3ページ) - Widge Media

【インタビュー】ウェルスナビ株式会社/廣瀬学氏・竹内織絵氏ーIPO後を見据えた持続的成長可能な組織の作り方~投資家との誠実な対話を続けることで得られるものとは~(1/3ページ)

記事紹介

2020年12月に東証マザーズ(現 東証グロース)に上場したウェルスナビ株式会社。資産運用支援のフィンテック企業として初の上場であることに加え、上場時の時価総額が776億円という大型上場。さらには、海外投資家比率が旧臨報方式で過去最大となる50%となったことから注目を集めた。そんなウェルスナビでCFOとしてIPOの指揮をとってきた廣瀬氏。そしてIPO後に経営企画部に加わり、IR戦略を担っている竹内氏。現在も成長し続けるウェルスナビのIPOを見据えたファイナンス戦略からIPO後のIR戦略について、お二方にお話を伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge 利根沙和

準備期間から上場後まで~相互補完しあえる組織作りとは~

本日はお忙しい中ありがとうございます。まずはお二方のこれまでのご経歴とウェルスナビに参画されたタイミングなどをお聞かせいただけますか?

廣瀬:私は外資系の証券会社で通算8年ほど、資金調達やM&Aアドバイザリーに従事してきました。その後、外部からの一時的な支援としての関わりではなく、経営陣として長期的な視点でその会社の成長にコミットする仕事がしたいと思い、ベンチャーに転職。約4年間CFOとしてコーポレートのとりまとめの仕事をしていました。その後再度外資系証券に戻った時期もありましたが、ウェルスナビとの縁があり、社会性の高い事業内容であったことと、自分も使いたいサービスであったことが決め手となり、再び事業会社に転職してきました。上場のちょうど2年前、2019年1月のことです。

取締役CFO 廣瀬 学氏

ありがとうございます。竹内さんのご経歴も教えていただけますか?

竹内:私は新卒以来、外資系の金融機関で働いていました。経験として一番長いのは日本株の運用でして、日本株、特にグロース株の調査・運用に長年従事してきました。ウェルスナビへの入社は、IPO達成後の2021年の9月です。それまでは基本的に成長企業を外から見て、その会社に投資をするという仕事だったのですが、外から見るのではなく、実際に成長企業の中に入ってその会社が大きくなっていくプロセスを自分で体感したいなと思うようになった時に、縁があってウェルスナビに入社しました。

経営企画部 責任者 竹内織絵氏

ありがとうございます。まずは廣瀬さんに、上場に至るまでのお話を伺えればと思います。上場の約2年前にご入社ということでしたが、入社時のIPO準備状況や具体的なミッションなど教えていただけますか?

廣瀬:私の入社より少し前に推薦証券の選定を行っており、ちょうど推薦証券が決まった少し後にジョインしました。予備審査に入る直前というタイミングです。当時、会社から私に期待されていた役割は大きく3つ。1つ目は、経営陣の1人として会社の成長に貢献すること。2つ目は、財務経理・経営企画・人事業務などを含めた経営管理グループの執行役員として、コーポレート全体の取りまとめをするということ。3つ目は、CFOとしてIPOプロセスを取り仕切ること。特にファイナンスについては中長期的な観点で戦略を立てて行くことが私の重要なミッションでした。

入社時のコーポレート組織の規模感や状況などはいかがでしたか?

廣瀬:コーポレートの人数は約20名。私の入社時にいたメンバーはIPO後も上場企業のコーポレートとして任せられる人材が揃っていたということと、少数精鋭で結束して業務を進めていきたいという考えもあり、その後も数名増えた程度の体制で運営しています。スタートアップですのでリソースは限られますが、上場審査だけではなく、上場後の成長に向けて、会社として、組織として、満たさなければいけない能力を揃えるということを重視して組織作りを進めてきました。

上場後も見据えた組織作りをするにあたり力を入れたのはどのようなところですか?

当時、各チームが日々の通常業務に大きく工数を割かれており、またそれに加えて上場審査業務も兼務していました。スタートアップであり新たに重要かつ緊急性の高い業務がでてくるため、チーム責任者の工数を少しずつ空けられるよう、またできる限り個人に依存しない体制を意識して、増員を進めました。その他、上場後の業務を見据えて、チームを任せることができる責任者クラスの採用にも、結構時間を使いました。それぞれ、少し先のステージで必要になる業務を経験したことがあるかという即戦力性、事業内容やミッションへの共感などを重視しました。そのような採用がうまく進んだということもあり、コーポレート組織が強化できたと思っています。

投資家との長期的な信頼関係の築き方

ご経歴からも一番力を発揮されたのはファイナンスの部分かと思いますが、御社は創業当初から大規模な資金調達をされているかと思います。会社としてIPOは創業時から既定路線だったのでしょうか?

廣瀬:そうですね。会社としてIPOを意識したのは、創業間もなくVCから資金調達をした時ですので、早いタイミングから見据えていたと思います。VCから資金調達をした時点で、上場やM&AによるEXITを目指すことになるかと思いますが、日本においてM&AによるEXITはそう多くないので、上場を目指すのが既定路線になるのではないでしょうか。

なるほど。実際に上場準備が本格化する以前からも、投資家の方々と頻繁にコミュニケーションをとられていたのですか?

廣瀬:会社としては、上場はできるだけ早いタイミングでというのを意識していたので、私が入社する少し前、2018年ごろから国内外の機関投資家とコンタクトを取らせていただいていました。ただ、会社の規模感が時価総額300~500億円程度にならないとなかなか海外の機関投資家に関心をもってもらえないので、それぐらいの規模感を目指して事業を成長させて行くと同時に、その規模感まで成長できた際にはすぐにでも上場できるようにと、投資家とのコミュニケーションも含めて準備を進めてきました。

ファイナンス戦略において特に意識したポイントは何かありますか?

廣瀬:大きく2つありまして、1つは株主との信頼関係をしっかりと築いていくことです。その為には、堅実な事業計画をもとに適切なバリュエーションをしてもらい、それをもとに出資していただくということを大切にしていました。資金調達後は事業計画と実績との間に大きな乖離がないか定期的に進捗を追うと思うのですが、計画と実績があまりにも乖離していくと信頼を失う一因ともなります。そうならないように、バリュエーションを上げるために達成困難な事業計画を提示するのではなく、会社が全力を出し切ってなんとか達成できる事業計画をもとに資金調達を行って、その後も長く信頼関係を築いていく。そして、次に資金調達が必要な時に再度出資をして頂けるような関係作りを目指して進めていました。

より高いバリュエーションをという部分と、現実的に達成可能かという部分のバランスを取るのはなかなか大変ですね。

廣瀬:そうなんです。もう1つのポイントとしては、必要な資金に限定して調達するということを意識していました。具体的には、だいたい向こう1年間に必要な資金を調達する。資金調達時には希薄化が伴いますので、直近のバリュエーションで資金調達をすることが効率的ですが、一方で未上場時の資金調達は上場後と違い実行までに時間がかかります。数か月、長いと半年くらいかかったりもしますので、そのバランスを取って1年間に必要な資金を目安として調達を進めました。

未上場時とはいえ、先を見据えた長期的な関係構築をとても大切にされていたのですね。