【インタビュー】サイボウズ株式会社/山田理氏 - 会社は人を幸せにするツール。サイボウズを通じて、社会を変えていきたい(5/5ページ) - Widge Media

【インタビュー】サイボウズ株式会社/山田理氏 - 会社は人を幸せにするツール。サイボウズを通じて、社会を変えていきたい(5/5ページ)

記事紹介

日本興業銀行にて市場部門等を経験した後、サイボウズ株式会社にCFOとして参画。同社のIPOならびに史上最短での東証2部上場を経由し東証一部上場までを牽引。その後、取締役副社長・サイボウズUSA社長を兼務し(自ら米国に赴任し)、グローバル事業拡大も先導している山田理氏に、そのキャリアストーリーを伺った。

※インタビュアー/株式会社Widge 代表取締役 柳橋貴之

あとは、部門の名称も「管理本部」から「事業支援本部」に変更したんです。

そもそも自分が管理されるのが嫌いなのに「管理本部」って嫌だなって思っていたんですよ(笑)。

 

もちろん管理することも必要になってきます。

なぜ管理することが必要なのかというと、ベンチャー企業は成長するにあたっていろいろと投資をしますよね。成長するためにいかにリスクを取っていくか。リスクがない限り成長は無いじゃないですか。当然リスクなしで成長することが可能なのであれば、それが最も良いのですが、そう上手くはいかない。

だから、このリスクをいかにミニマイズしていくかっていうことを、誰かがやらなければならいわけですよね。

そこで、例えば事業部門の人が「これリスクがあるから辞めます…。」「これも心配だから辞めておきます…。」って言っていたら、成長するものもしないわけですよ。事業側の人は、前を向いてどんどん可能性にチャレンジをしていかないと。

だからこそ、そこに出てくるリスクをいかにミニマイズして成長をサポートしていくかというのが管理部門の役割だと思うんですよね。

僕らはコストセンターじゃない。僕らは成長するためのバリューというか付加価値を創っていくプロなんだと自覚を持たないといけないと思うんです。

非常に共感します。

人ってワクワクしたいじゃないですか。もちろん夢があるとワクワクするんですけど、一方でリスクが大きいと逆にドキドキするんですよね。なので、いかにドキドキ(リスク)を減らして、ワクワクにしていけるかという思いで、最初は「ワクワク本部」にしようと思ったんです(笑)。

「ワクワク本部」ですか。いいですね(笑)。

 

えぇ。でも青野さんに話したら「ちょっとそれは…」という反応だったので、それであれば、せめて管理という名称はやめて、事業を支援するので「事業支援本部」にしようと決めました。

なので、正式には事業支援本部と書いてあるんですが、(ワクワク本部)というのも付け加えて、名刺には「ワクワク本部長」って書いていましたよ(笑)。

僕の思う管理部門というのはそうあるべきだと思っているので。組織・チームの一員として、ドキドキをワクワクに。

それをプロとして実行していくということですね。

そうですね。

そういった管理部門のチーム創り、とても参考になります。

会社が成長して、人数も増えてきて、管理部門も大きくなってくると、ルールも増えるし、ルーティンの仕事も増えてくるじゃないですか。そうすると、「ルールを守らせる」「管理する」という方向に目が向きがちになってしまうので、常に部門としてのビジョンは持ち続けないといけないなと思いますね。

なので、事業支援部門のリーダーに必要なのはビジョンを語ると同時に、「ビジョンの実現のために」ルールを増やすだけでなく、変えたり、なくしたりすることも重要で、それを徹底することで、これから新しく入る人達にも継続的にビジョンを浸透できるんだと。

山田さん個人としては、何かビジョンなどございますか?

個人としてですか…。それで言うと、今は僕個人と会社とが一緒なので、何とも言えないところがあるんですが、個人の思いとしてやりたいのは、サイボウズという会社を通じて、社会を変えていきたいなというところですかね。サイボウズ流のチームワークを広めていくというか。

「本当にサイボウズみたいな会社にしたら世の中が良くなるよね。」って。「良くするためにはサイボウズみたいなチーム、サイボウズ流のチームワークっていうのをやろうよ!」と言って頂けるような状態にしていけたら良いなと思っています。

「チームワーク向上」は御社のミッションでもありますからね。

そうですね。会社をこういう風にしたい!みたいなことではなく、僕らの考えが世の中に広がってくれたら良いなということですかね。

 

やっぱり人の価値観っていろいろあるじゃないですか。たとえば、会社を大きくすることに何の意味があるの?と。創業者は嬉しいかもしれないですけど、社員は、100分の1の時と10万分の1時だと、100分の1の時の方が楽しかったりするじゃないですか。

10万人いる社員を「一つに」「社員一丸となって」みたいに言う大企業も多いですけど、難しいと思うんですよね。

そもそもなぜ10万人を一つにする必要があるのかと。それって逆に多様化をなくす方向に向かうじゃないですか。全員を金太郎飴みたいにしようということですよ。

100人いたら100人の生き方があるわけで、それを尊重したいですよね。それが会社になることで心地良い人もいれば、嫌になって離れる人もいるかもしれないですけど、それもその人の価値観ですからね。

だから、独立しても、副業しても、一度転職をして出戻りしてきても、それは皆の自由ですから。会社を大きくして、売上を大きくして、利益を大きくして、株価を…みたいな、いわゆる一般の会社の概念を無くしたいんですよね。

一人一人の価値観を尊重するということですね。

 

そうですね。これからは「個」の時代ですから。たとえば、僕自身が幸せになるかどうかであったり、柳橋さんが幸せになるかどうかっていうことが大事なので。

その一人一人を幸せにするツールが会社であったり組織なので、そういう目線で組織も考えなければということですよね。

組織が無くて幸せになるのであれば、それで良いと思うんですが、きっとあった方が便利なんですよね。だから原始時代にも「集団」「集落」みたいなのがあったと思うんです。

でも、お金や組織がパワーを持ってしまって「個」が下になってしまっているというか、組織のために「個」があるというのが今の世の中なので、

もう一度原点回帰で「個」が主役なんだと。組織が主役ではなくて、あくまで「個」なんだと。そういう考えが大切になってきていると思います。

確かにそうかもしれないですね。 ちなみに、山田さん自身を「個」で考えた時の今後はいかがですか?

僕もどこかで引退はしますからね。若い人達に引き継いでいきたいと思うので。

引き継いだあとに何をやりたいかというと、やっぱり立場はどうあれ、サイボウズ流のチームワークを広めるための活動をしていきたいですよね。

サイボウズさんらしい継承ができると良いですね。

それでいうと、青野さんともよく話しているのは、企業理念は石碑に刻まないようにしようと。

石碑に刻んでしまったら、たとえば僕らがこの世を去った後に、残された人達が石碑を見ながら、「こういう時に青野さんだったら何て考えるんだろう…」「サイボウズの理念はこうだから…」「これを変えて良いんだろうか…」みたいな。「そんなん知らんがなっ!」って感じですよね。もうこの世にいないんだから。

そういうのは本当にナンセンスで、頼むから石碑に語り掛けるなと(笑)。

今こうして語っていることも、僕が自分の墓標に刻むのは僕の勝手。これはあくまでも個人の話ですからね。

「こんな会社にしたい」って言うんであれば、引き継いだ人が創れば良いし、「もう少しこれをアレンジしたい」って言うんであれば、アレンジすれば良いし。

 

決して足し算ではなくて、どんどん広がっていって、協力し合って、やりたい時にやりたいことをやりたいようにやっていって、それで豊かになっていくという、そういうことが非常に大切だと思うんですよ。

素晴らしいですね。

あと、僕はサイボウズという会社が残っていくということに執着をしていないんです。会社が残らないのに、世の中を変える。そこにかかわっていた人達が皆すごく幸せになっている。こういったことって、今までチャレンジした会社は無いんじゃないかなと思うんです。

確かにそうかもしれないですね。

今はネットワークの時代です。会社も、決してリアルに限らず、バーチャルな会社でも成り立ちます。商売も一人でできる時代ですし、離れたところでもプロジェクトが進められる。

生きていくために必死になって人生をかけていくっていうよりも、もっと豊かな世の中にしていかないとと思いますね。

50年後とか100年後とか、随分と未来に、「昔は今みたいにチームワークがあふれている社会ではなかったんだよ!」って。「なんか、サイボウズっていう会社があってね、その会社が提唱していったらしいよ!」みたいになってくれていたら嬉しいなと思います。

サイボウズ株式会社 取締役副社長 兼 サイボウズUSA社長 山田理氏1992年3月大阪外国語大学卒業後、日本興業銀行(現:みずほ銀行)入行。市場部門・法人営業部門を経験した後、2000年1月にサイボウズ入社、最高財務責任者として同社のIPOならびに東証二部・東証一部への上場を牽引。事業部長なども歴任し、2007年4月に取締役副社長に就任。2014年9月より、米国での事業拡大に機動的に対応するためUS事業本部を新設し、US事業本部長(サイボウズUSA社長)に就任。同時に自ら米国に赴任し現在に至る。