【インタビュー】ヤフー株式会社/坂上亮介氏 - ヤフー流の企業価値の上げ方を常に意識し、未来を創造していく(4/4ページ)
国内インターネット企業の先駆者であり、時代とともに拡大を続けてきたヤフー株式会社。再び大胆な若返りを図った経営陣の一角として、CFOのバトンを受け取った坂上亮介氏。
モバイルペイメントを含む金融事業の本格展開、グループ内の資本再編など、大きな転換期を牽引する同氏のキャリアストーリーを伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge 代表取締役 柳橋貴之
決め手はなんだったのですか?
先ほどの対比になってしまうのですが、本業をしっかりと大切にしているというか、ブレずにやってきていると感じていた点ですかね。正直、エンジニア時代にも一度ヤフーから誘われたことがあるんですよ。そこから年月が経って、俯瞰的に会社を見ることができるようになっても、ヤフーの良さは変わらなかったですね。
その点は、本当におっしゃる通りかもしれないですね。
あとは、それまでがBtoBのビジネスだったので、コンシューマ向けをメインとしている会社でやってみたいという思いもありました。
いろいな面で理想に近く、かつ、たまたま仕事内容もほぼ同一だったということもあって、これもご縁だなと思っていました。
当時はもうご結婚もされていたのですよね?
そうですね。
お子さんも?
転職する時点では生まれていましたね。
転職をするということに対して、奥さんはいかがでしたか?
特に反対をすることも…というより、完全に事後報告でしたね(笑)。
「そろそろ転職しようと思うんだけど…」という話すら無かったと?
していないです(笑)。「そういえば会社辞めてきた!」みたいな感じでした(笑)。
大丈夫だったのですか(笑)?
全然大丈夫でしたね。「で、どこ行くの?」ていう感じで。「ヤフーだよ」って言ったら納得はしてくれましたね。仕事内容が変わらないというのも安心だったようです。
ヤフーさんへ入られてからの業務も、経営企画系のお仕事だったのですね。
そうですね。当時の名称は忘れてしまいましたが、今の企業戦略本部の前身ですね。
転職されてのギャップなどいかがでしたか?
直属の上司は、「自由に自分で仕事を見つけろ」というスタンスが強かったので、自ら能動的に動いて、どんどん仕事を取ってこないといけないなという感覚はありましたね。
前職と比較しても大きな差があったと。
全然違いましたね。前職は、ジョブがアサインされるという感覚の方が強かったんですけど、ヤフーは明確な仕事を与えない文化なので。 逆に、自分で手を挙げたら何でもできるというところがあるので、僕みたいな性格には合っているんですよね。 当時はミッドタウンの17階に自分の部署があって、反対側にメディア事業部があったんですね。で、直属の上司が気を使ってくれて、宮坂さんとか川邊さんとか、井上さんもですけど、一人ずつその辺に座っている偉い人たちに「こいつ、今日から入ったんで」みたいな感じで紹介してくれて。
その中に、当時企画部長だった人がいて、たまたまその人との仕事が増えていったんですよ。その延長で、他の人達と仕事をする機会も増えていって、ようやく仕事っぽい仕事ができてきたという感じですね。 2012年の体制変更までは、本当にそんな感じで、自ら仕事を見つけるということに注力していました。
苦労したお仕事などございましたか?
M&Aですかね。特に子会社を売却する時。買収する時は結婚に近いので、比較的ポジティブな色合いが強いんですけど、売却する時は本当に胸が締め付けられるというか…。 特に、ヤフーの子会社というのは、基本的にヤフーとシナジーがあるという前提の会社が多いので、ヤフーグループから離れてしっかりと自立することができるのか…という葛藤もありますし。 それでも経営判断として売却するということになれば、割り切らなければいけないので。当然、中には「うちを売らないでくれ」という社長もいらっしゃいますし、本当につらい場面ですね。
たしかにそうですね。買収にかかわる場面は比較的あるかもしれませんが、子会社を売却するという経験は、そこまで多くは出てこないですからね。
そうですよね。何件か売却する場面に携わりましたけど、やはりいろいろと大変だったなと思います。
坂上さんが仕事をするうえで、「コミュニケーション」をとても重視されているなと感じるのですが、何か意識されていることなどあるのでしょうか?
たしかにコミュニケーションの質は重視しているかもしれないですね。
これはエンジニアをしていた時代からそうなのですが、たとえば業務側の人と話す時に、エンジニアの用語で話しても全く伝わらないですよね。設計書を工夫するなどして、いかに相手に分かりやすく伝えるか(相手の立場に立って伝えるか)ということを意識していたので、そういった感覚は、今でも続いていると思います。
メンバーの方々に、「これはしっかりと意識しておいてほしい」と伝えられていることなどございますか?
やはりコーポレート部門なので、会社全体を見渡した時に、「ひょっとしたらここが課題になりそうだ」とか、「煙が上がりそうだ」ということに対しては常に敏感になっていないとダメだと思うんですよ。 万が一トラブルが発生した時も、すぐに補正に動けるように、常に先回りをしておくというスタンスが大切ですよね。
たしかにその意識は本当に大切ですね。他には何かございますか?
先ほど出た「コミュニケーション」という点においても、たとえば経理に関していえば、数字を集計したらそれでOKということでは絶対に無いですよね。 たとえば、それをそのまま生の状態で出して、数字だけが独り歩きしてミスリードに繋がることだってあるわけです。相手がどう受け取るかということを、事前にしっかりとイメージしたうえで、正しく伝えるということが大切だと思っています。
形だけをそのままアウトプットするということではなく、しっかりと相手の立場に立ってアウトプットしなければ、間違った伝わり方になってしまうということもあるということですよね。
本当にそう思いますね。
最後に、今後のビジョンであったり、目標のようなものをお聞きしたいのですが。
CFOという像で考えると、たとえば、業績が厳しい時に、いわゆるコストカットをして利益を上げて、それが企業価値の向上につながるというやり方をする人が多いと思うのですが、ヤフーの場合は、どちらかというと事業を構造変革して利益を上げる、そして価値を上げていくというスタンスなので、そこはしっかりと実行していきたいなと思っています。
なるほど。その期待も大きいと思います。
企業価値を上げるというのは、メソッドとしてもなかなか難しかったり、市場との対話の理解を得るとかも、なかなかチャレンジングな領域だなと思っているんです。 でも、日本の会社で、もう20~30年経ってきているような会社というのは、本来そのようにしなければいけないと思いますし、それは個人的にもやっていかないとと思っています。 老舗となったヤフーが、新しいヤフーに変化していき、しっかりと利益も出し続け、成長をしていくと。
非常に楽しみです。
ヤフーは利益率が高いので、単純に利益を安定的に出していくということはやれると思うんですが、果たしてそれで未来はあるのか…というのがありますからね。
坂上さんにとっても、やはりそこはチャレンジだと。
そうですね。しっかりとプラスに向かう構造変革の実現に向けて、何かの一助がCFOとしてできたらという思いは強いです。
ちょうど最近もリリースが続いていますが、持ち株化であったり、筆頭株主の変更であったりというところは、そのチャレンジの結果が出てきているということですよね。
そうですね。次の未来をつくるために、やはり通信会社・キャリアと連合したほうが良いだろうということで体制を整えたということですね。
少しずつハードが整ってきている印象です。
そうですね。箱としては整ってきたと思っています。ここから事業を伸展させ、しっかりと業績をつくっていくというフェーズですね。
御社のさらなる成長、とても楽しみです。
がんばります!
2008年にヤフー株式会社へ参画し、株式会社GyaO(現:GYAO) CFO、コーポレートグループ財務本部本部長を経て、2018年4月に執行役員最高財務責任者(CFO)に就任し現在に至る。