【インタビュー】株式会社サイバーエージェント/曽山哲人氏 - 才能は、発掘するのではなく開花させる。才能開花の方程式をつくりたい。(4/5ページ)
「21世紀を代表する会社を創る」をビジョンに掲げ、AbemaTVの運営や、国内トップシェアを誇るインターネット広告事業を展開する株式会社サイバーエージェント。
時流をとらえた数々のサービスと同時に、独自の強固な組織運営が注目される同社において、そのHR領域を牽引する取締役・曽山哲人氏のキャリアストーリーを伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge 代表取締役 柳橋貴之
「事例」ですか。
そうなんです。経営の言行一致は「事例」がとにかく重要なんです。
そのセカンドチャンスによって、一層活躍しているという人が10人、20人いる。この事例があると、それは自然と風土になって、共通言語とか共通理解になるので。
風土をつくるときに、社長の思いつきだけでやっても、社員はなぜそれをやっているのかが分からない時ってあるじゃないですか。だからこそ、やっぱり「共通言語の明文化」はどうしても必要で、そのための軸が必要なんです。
そのための「事例」ということですね。
はい。「どうやったら風土をつくれるか」って皆さんよく悩まれるんですけど、答えはシンプル。事例を増やすのみだと思います。
事例をつくるとそれが風土になって、風土と経営のメッセージが一体化してくる。事例があったら否定しようがないじゃないですか。仮にそれでもダメだというのであれば、まだ数が足りないか、ちょっとうさんくさいと思われているかくらいですかね。
事例の大切さですね。とても理解ができます。
事例を増やすことは今日明日ではできないことが多いので、結果的に出そろうまでに1~3年くらいはかかってしまうんですよ。だからこそ、「事例がそろうまで耐える」というのが、風土改革のポイントだと思いますね。
とても参考になります。他に何か意識されていることはございますか?
あとは、新卒・中途に関わらず、入社1年目の人達と話をするというのは大切にしています。食事会などで1年目の社員に「うちの会社ってどんな会社?」ってよく聞いています。その言葉をもらうと、会社の今が分かるんですよ。
たしかに、最も客観的でリアルな意見が出てくるかもしれないですね。
そうなんです。結構これは大切にしていますね。
余談ですが、食事会のようなものは、曽山さん自らアテンドされることが多いのですか?以前、私もお食事をご一緒させて頂いた際、たしかそんな印象がありまして。
はい。基本的には僕がお店を取っていますね。
その方がいいんですよ。どこにトイレがあって、どこの動線で、店員さんがどういうふうに動いてくださるかが分かっているので。
ちなみに、学生時代に描いていた「すごい組織をつくる」というビジョンに対して、今のご自身は想像通りですか?
それ以上のことができていますね。はるかに想像を上回っています。
「すごい組織をつくる」といっても、何となく5~6人くらいのイメージだったんです(笑)。社会人1年目のときは、「30歳でマネージャーになるんだ」という感じでした。
よく「今の若者はビジョンがない」とか言うじゃないですか。それはそうだろう、と。だって分からないですもん、社会で何があるか。知識もないのにビジョンを持てというのは、あまりにかわいそうですよ。
だからこそ、「こんなことができたら楽しいかも」と思わせるのが先輩の仕事で、会社に入ったら「こんなことできるんですか!」と驚いてもらえるような環境をつくることが、大人のやることだと思いますね。
「ビジョンも何もないのか」と罵られる若者、まだたくさん見られますね。
まだ結構いますよね。そういう時って「それを言うあなたのビジョンは何ですか」って思うんですよ。
僕自身も、就活の時にありましたからね。ある会社の説明会に参加した時に、話をされている役員の方々が、やたらと「ビジョン」「ビジョン」と言うので、質問の際に「逆にみなさんのビジョンは何ですか?」と聞いたら、返ってきた答えがあまりにも小さすぎてがっかりしたという・・・・・・(笑)。
サイバーエージェントも、ビジョンがない社員なんていくらでもいます。
でもこの産業とか未来に明るさや楽しさを感じていて、目の前の同期が新規事業をつくったりすると、「自分もできるかも」と思う人も増えてくる。それで私もやりたいと手を挙げる。これが僕は最高の状態だと思うんですよ。
「自分にもできるかも」っていう感覚。これをみんなに持ってほしいんですよね。できるはずだから。なぜなら最初は誰もできないので。
曽山さんであれば、いろいろな会社さんから(社外取締役や顧問などの)お誘いがあると思うのですが、一切されていないですよね。
普段の業務でやりたいことが多いんですよね。自分が担当している人事以外でも、グループ会社の取締役などはやっています。
「21世紀を代表する会社をつくる」ということが、ものすごく面白いことなので。この会社でやりたいことがたくさんあるんです。シンプルに。実際、喜んでくれる社員の顔もたくさん知っていますからね。
個人として今後のビジョンがあれば教えていただけますか。
「世界最高の人材育成企業をつくりたい」というのが、僕のビジョンなんです。世界で通用して認められる、世界で一番人が育つ会社をつくりたい。
いまのお仕事と繋がっていますね。
そうなんです。まさにそれはサイバーエージェントが一番やりやすいだろうと思っています。
以前までは製造業中心の人材育成が主流でしたよね。どちらかというと、プロダクトがあって、いかにそれを良く作るかというところに集中していたように思います。
いまは、知的労働が中心の人材育成がメインになっているので、キーワードは「才能開花」なんですよ。どれだけその人を大化けさせられるか。大化けする人材をどれだけ増やすかで、会社の業績は大きく変わると僕は信じています。
なので、トレーニングも大事なんですけど、やっぱり才能開花するような配置であるとか、その機会をどれだけ提供できるか。この辺りはしっかりと体系化していきたいですね。