【インタビュー】株式会社カラダノート/平岡晃氏 - 自然体かつ着実に難局を乗り越えたIPO~成長企業を真に支えるとは(2/3ページ) - Widge Media

【インタビュー】株式会社カラダノート/平岡晃氏 - 自然体かつ着実に難局を乗り越えたIPO~成長企業を真に支えるとは(2/3ページ)

記事紹介

2020年10月に東証マザーズに上場を果たした株式会社カラダノート。「家族の健康を支え 笑顔を増やす」というビジョンに共感し、更なる成長を目指す同社への強いコミットからIPO実現に貢献したのが、会計と経営企画の両分野を得意とするコーポレート本部長 平岡晃氏。少数精鋭チームを牽引し、IPOに向け社内のあらゆる面の整備を手掛け、数々の難局を乗り越えてきた。IPO実現に至るまでの経緯を振り返る中で見えてきた、IPOを成功させる極意とは。コーポレート本部長 平岡氏にお話しを伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge 利根沙和

ファイナンスを通じてカラダノートが発信したいこと

コロナ禍でのロードショーとなりましたが、投資家の方々への説明をされる際にご苦労はありましたか?

コロナ禍ならではの苦労はありましたね。当然ながらロードショーでは、投資家の誰一人とも直接会うことができませんでした。社長が電話で説明することになったのですが、最初の約30分は、電話ですとなかなか相手の反応が見えないまま一方的に会社説明をすることになるので、本当に理解してもらえているか分からず不安でしたね。今はまた違った対応となっているのかもしれませんが、例えば、事前に作成した説明用動画を見てもらった上で、電話では質疑応答を中心にするといった対応ができればよかったなと思います。また、会えないので当然ですが、名刺交換もできません。ロードショーは証券会社にアレンジをしてもらっていたため、連絡を取ろうにも相手の連絡先がわからない。あわてて証券会社に聞くといった状況も、コロナ禍ならではでしたね。

IPOに向けたファイナンスの取り組みについても教えていただけますか。

資金調達においては投資家の方々に、私たちが事業を通して目指していることや会社の存在理由をきちんと伝えることを心掛けました。私たちは「ママびより」「授乳ノート」「お薬ノート」などの子育てや健康管理のためのアプリを提供しています。しかし、会社の目的はアプリを作ることだけではなく、日本の社会課題である少子高齢化を解決することです。アプリはそのための一つの手段にすぎないのですが、私たちのことを「アプリ屋」というように限定的に捉えられてしまうと、会社として目指していることの数%しか見てもらえていないことになってしまいます。ですから、IPOに向けた「成長可能性に関する説明資料」を作成する時は、私たちが社会課題を解決しようとしていることを、順序だてて資料に落とし込むことを重視していましたね。

根底にあるビジョンをしっかり伝えることは重要ですね。そのような意識をもった資料を作りはIPO後のIRにも生かされそうです。

おっしゃる通りです。現在も毎回決算説明資料を見直し、より良くしていくことを心がけています。

IPO達成までの道のり~課題と成功への秘訣

IPOまでの道のりを改めて振り返られて、想定外だったことやご苦労されたことはありますか。

IPO準備だからというより、成長企業ならではの苦しみだったのかもしれませんが、もしまたチャレンジすることがあったとしたら、こうしたいと思っていることが2つあります。1つは、全社的な人事や評価制度の設計、事業計画書に合わせた採用計画などを事前に整備しておくことです。社員数も少なく管理部門もコンパクトだったので、人事・労務面に関しては必要に応じてその都度対応をという状況でした。後で修正をしようとしても修正しづらい面があり、今も苦労している部分です。

なるほど。人事の制度設計等は会社ごとにかなり異なりますし、一朝一夕に作り上げられるものではないだけに早めの対応が吉ということですね。

はい。最初から長期を見据えて制度設計や採用準備をしていれば、もっと楽に事業を成長させることができたかもしれないという思いはあります。あともう1つは、早期の法務採用ですね。法務関係については私が兼務で担当し、顧問弁護士と連携を取って準備をしてきました。このような体制の会社は多いと思いますし、顧問弁護士ときちんとリレーションが取れていれば問題ないと考えていたので、審査中もそれで通してきました。それでも最終段階になって「上場に際して法務的な問題をすべてクリアできているかを最終確認したい。」という証券会社からの指示を受けて、セカンドオピニオンで検証してもらうことになりました。すると、ある法律に対する整備が完全に抜け落ちていたことが判明したのです。申請まであと数か月というタイミング。証券会社の担当の方からは「これから3カ月以内に法務を採用できなければもう上場は延期です。」と言われてしまう事態になり、慌てて採用に乗り出すことになりました。

N期に急遽、法務担当者を採用したと先ほど伺いましたが、このような経緯があったのですね。上場申請を直前に控えたギリギリのタイミングで大変だったことと思います。

はい。運よくそこからすぐに法務担当者が見つかり、予定通り上場にこぎづけることができたので本当によかったです。しかし、様々な法律がある中、兼務しながら全てをカバーする難しさも痛感しました。いくら顧問弁護士がいたとしても、全社の事業概要を把握するには限界もあります。社内をよく知る専任の担当者が、会社に必要な法務整備を検証し、状況に応じて顧問弁護士のアドバイスを受ける。このスタイルが運営上より良いと思うので、今の体制にもっと早くできればよかったなと感じています。

少数精鋭のコーポレートチームでIPO準備を進める場合、課題になりやすいポイントですね。反対に、上場準備中に初期段階からやっていて良かったことは何かありますか?

2社目である程度IPO準備をした経験上、今後こういう課題がでてくるから早めに解決しておいた方がいいというポイントはある程度分かっていたんです。なので、一番手間が掛かる業務フローや規程の整備は入社と同時に取りかかりました。あとは管理系システムの導入をIPO準備初期にしておいたことも良かった点だと思っています。紙のタイムカードやプリントアウトして回覧していた稟議を電子化し、会計システムもより見やすく使いやすいタイプに早い段階から移行しました。

IPO準備のご経験があり、何が課題になるのかを分かっていたというのは大きな強みですね。IPO準備全体を通して、心掛けてきたことや大切にされていたことはありますか。

そうですね。私は夏休みの宿題を夏休みが始まる前にやってしまうタイプなんです(笑)。夏休みの宿題と一緒で、課題を先送りしないというのは上場準備をする上で重要なポイントの1つだと思っています。もし既に課題が分かっているなら、今すぐにやる。先送りすると他の様々な課題が後から出てきて、もともとの課題に割く時間が減ってしまいますから。余裕がある時に、少し無理をしてでも課題をつぶしておくというのは自分の中で日頃から意識して行っていることです。「明日やろうは、馬鹿やろう」と、昔から言い聞かせてやっています(笑)。

なるほど。どのようなプロジェクトや立場においても、成功するための秘訣と言えそうです。

成功するためというより、失敗しないための秘訣かもしれません。成功する確率を高めるために心がけています。

成功の確率を高める努力をベースにもたれているのですね。その結果、運も引き寄せられるのではないかと感じました。

ありがとうございます。他には弊社のビジョンとも重なりますが、「健康でいること」も重要なキーワードだと思っています。何をするにしても、健康は基本になります。私自身、継続して業務に打ち込める体力があり、あまり感情の起伏が大きくなく基本的に穏やかでいられることは強みだと感じています。体力的にも精神的にも健康的であることが、先ほどの「先送りせず課題に取り組むこと」を続ける上でも重要ではないかなと思います。