【インタビュー】株式会社うるる - 必要なのは知識よりも交渉力。形式よりもリアル(1/2ページ) - Widge Media

【インタビュー】株式会社うるる - 必要なのは知識よりも交渉力。形式よりもリアル(1/2ページ)

記事紹介

2017年3月16日に東証マザーズへ上場を果たした株式会社うるる
IPOへ導いた同社の精鋭チームに、これまでの足跡と今後の抱負を伺った。

※インタビュアー/株式会社Widge ゼネラルマネージャー 山岡直登

<上場準備の開始~推移>

早速ですが、IPO準備取り掛かり時期についてお伺いさせてください。

桶山:まず、弊社は2006年創業で、最初の5年は創業メンバーの一人が管理部門を全て担っていたという状況でした。2010年に秋元が入社したのですが、最初の取り組みは、秋元を中心に残業を1分単位で支給する体制にしたということですかね。他のベンチャーに比べれば、だいぶ早くから労務に対する意識を持っていたと思います。

確かに労務面はIPOを目指す過程で整備されるスタートアップが多いですからね。

秋元:弊社の経営陣は、創業時から「いずれは上場したい」という思いがあったので、コンプライアンスや労基法といったものを重視していかなければという意識が強かったですね。上場準備において高いハードルになってしまう労務関係は、早めに構築しておきたかったという思いがあります。

総務人事部長 秋元優喜氏

加えて、皆で成長を分かち合えるようにという思いで、2013年には従業員持株会もスタートさせているので、これもだいぶ早い方だと思います。

素晴らしいですね。

桶山:その後、2014年10月に、シリーズAで6.3億円の資金調達をしていて、そこから本格的なIPO準備に入りました。この頃まで私は事業側を責任者として担当していたのですが、管理部門をしっかりと構築するにあたって、管理本部長に就任しました。

このタイミングだったのですね。

桶山:そうですね。そして重要な任務として、経理財務を仕切れる人を採用するということがあったので、すぐに動きました。その過程で、たまたま井出と出会い、運良く入社してもらえることができたので、本当に良かったですね。

井出さんのご入社はいつ頃なのですか?

井出:2015年4月ですね。ちょうど、主幹事証券会社の選定から、規定類の整備、予算の策定など、諸々準備に取り掛かっていく手前でした。

財務経理部長 井出彰氏

監査法人のショートレビューはいつ頃に実施されたのですか?

桶山:実はショートレビューは2011年頃に一度実施していて、その後、諸事情によって監査法人は変更しているんですけど、早いタイミングから見て頂いていますね。

なので、監査法人を選定したのは、初期の管理担当なんです。主幹事の証券会社は私が選定させて頂きましたが。

そうなのですね。ちなみに、桶山さんは創業からずっと事業側を牽引されていたのですよね?

桶山:そうですね。

コーポレートの実務経験がゼロだった中、なぜCFOに就任されたのですか?

桶山:実は、それまで何度かCFO採用にトライをしていたのですが、社内体制の関係でなかなか上手くいかなかったんですよ…。これはもう外からの採用は難しいっていう判断をして、(創業メンバーでもあるので)私が担当しようという話になったんです。

他者からの推薦もあったのですか?

桶山:そうですね。資金調達は私が主導していたので、株主からも「桶山さんでいいんじゃないの?」という意見を頂いていました。本当に知識・経験が全く無いので、最初はいろいろな方に聞きまわりましたよ(笑)。

そう考えると、秋元さんと井出さんの存在は本当に大きかったですね。

株式会社Widge ゼネラルマネージャー 山岡直登

桶山:おっしゃる通りです(笑)。総務人事は、もともと秋元が素地を創ってくれていたということが非常に大きかったですし、経理財務はまだ全くゼロベースでしたからね(笑)。一から井出が構築をしてくれました。

井出さんの最初のミッションは何だったのですか?

井出:月次の早期化や業務フローの構築など、経理の仕組みづくりを進めました。いろいろと課題は多かったのですが、一つ一つきっちりと進めていけたと思います。

さすがですね。

井出:監査法人側ともペース配分を考えながら進めていけたのですが、証券会社の審査に入った際に、審査期日の関係で1ヶ月以内に経理体制を整えなければならない状況になってしまって、あの時はだいぶ焦りましたね(笑)。その間は泊まり込みで仕事をしました(笑)。

泊まり込みはすごいですね…。

井出:メンバーの者と二人で、睡眠時間を削りながら対応してましたね(笑)。この時期はさすがに大変でした(笑)。

<コーポレート組織の変遷>

上場に至るまで、コーポレートチームの組織はどのように拡大されていったのですか?

桶山:弊社の場合、井出と秋元をコアメンバーとして、経理が1名増え、総務が1名入れ替わったくらいなので、組織的にはそこまで変わっていないですね。

当時、経理は井出さんを含めて2名体制とのことですが、御社の場合はサービスが多いので、非常に負荷が掛かっていたのではないですか?

井出:そうなんです(笑)。プロダクトが1つという会社さんに比べれば、経理やその他管理部門の量はだいぶ多くなるので、そういう面では大変でしたが、一部を外注にまわし、その他は仕組み化を進めることで対応しました。

また、入社してから半年ほどが経ち、仕組みの構築がだいぶできてきたタイミングで、実務経験の豊富なメンバーにジョインしてもらい、3名体制となり、経理の作業がだいぶルーティーン作業で回るようになりました。そこまでできた後に、予算統制や他の内部体制の構築等に進むことができました。

仕組みをつくる上で、特別な工夫はあったのですか?

井出:特別ではないんですが、私がコンサル出身ということもあってか、マイクロソフトのオフィスのツールはだいぶ使い込んでいたんですよ。

Excelで作業ベースのところを簡易化・効率化することで、誰でもできるようにして、あとは、外注できるところを外に手伝ってもらって…という具合ですね。

なるほど。仕組み化の推進と、外注の活用という点が、少人数でやり切れた秘訣なのですね。ちなみに、井出さんが当時うるるさんに入社された経緯を教えて頂いてもよろしいでしょうか?

井出:経緯としては、もともと桶山と共通の知人がいまして、その方を介してうるると出会いました。当時、うるるは経理財務の体制を構築していかなければならないタイミングで、「井出さんみたいな人を探しているベンチャーがある」という連絡をもらって、面白そうだったので、話を聞きにいったのがきっかけですね。

入社を決めた理由もいくつかあったのですか?

井出:そうですね。4つくらいありまして、まず実際に会ってみたら、桶山の人間性に惹かれたということがありますね。「なんかこの人面白そうだな~」って(笑)。あとは、CGSというビジネスモデルにすごい共感ができたということですか。

3つ目は、個人的なことですけど、自分のキャリアとして、監査法人と経営コンサルで経験を積んで、いつか事業会社側で裁量をもって仕事をしたいという思いがあったので、そんなタイミングで、部長職というポジションを用意して頂いたということも大きかったですね。しかも、給与も下がらずに入社できましたので(笑)。

共に仕事をする方の人柄、ビジネスモデル、ポジションと、井出さんにとってはとても良い環境だったのですね。それに年収がダウンしなかったというのは大きいですね。

井出:本当ですよね(笑)。正直、事業会社への転職で、しかも未上場で…となると、絶対に年収は下がるだろうと思っていたんですが、据え置きで、且つストックオプションも付与してもらえて、とてもありがたかったです。

もう一つは何かありますか?

井出:4つ目なんですが、この選択は、リスクが無いなと思ったんですよ。

ベンチャーへの転職に「リスクが無い」と。

井出:はい。ベンチャーって一般的にはリスクがあるって思われがちですけど、自分のキャリアを考えた時に、部長として入れるので、IPOができるか否かというのはそこまで気にならなかったですね。

IPOができれば、もちろん自分にとって非常にプラスになりますけど、もし仮にダメになったとしても、同じようなベンチャーって沢山あると思うので、うるるでの経験を活かして他の会社でいくらでもやっていけるなと思ったんですよ。

幸いにして、会計士の資格も持ってるので、監査法人にお願いすれば、戻れる可能性もありますし(笑)。

素晴らしい考えですね。確かに私が客観的に見ても、井出さんのご経歴であれば、あまりリスクはないですよね。

井出:とは言っても、最後はノリですよね(笑)。コンサルの会社でもまだやりたいことはあったんですけど、せっかく声をかけて頂いたので。これもご縁かなと思いました。

本当にご縁ですね。ありがとうございます。秋元さんにもお伺いしたいのですが、比較的早いタイミングでうるるさんにジョインされていると思いますが、それまでのキャリアを簡単に教えて頂いてもよろしいでしょうか?

秋元:私は2010年6月の入社になります。前職は新卒でアルバイトタイムスという上場企業に入社をして営業をしていました。当事社長だった者が、うるるの監査役になり、弊社取締役の小林も前職で一緒に仕事をしていたということもあって、誘われる格好でジョインをしたという流れですね。

もともと人事関連の経験をお持ちではなかったのですね。

秋元:そうなんです。うるるに入社した際も、最初は営業職でした。その後事業部長を経て、2013年10月に管理部門に移ったんですよ。

当時は管理部門全般を、いわゆる「何でも屋」として対応しながら、海外子会社設立など他の業務も同時並行で動いていました。

人事総務系の業務がメインになったのはいつ頃ですか?

秋元:明確にそういった体制になったのは、井出が入社した時期なので2015年の4月ですね。

当時のミッションを教えて頂けますか?

秋元:最初の取り組みは、先ほど桶山からも話があった通り、労務体制の構築ですね。それが2012年くらいです。ゼロベースからの対応でしたね。

IPO準備において、労務は本当に重要ですからね。

秋元:そうですね。労務管理に対する審査は厳しくなっているので、そこがネックになる会社も多いと思います。

井出:労務は過去に遡って修正したりすることができないですし、ある程度の期間しっかりと正しい管理をしていかないとダメですからね。そこが大変だと思います。 

勤怠管理システムを導入する際に、何か大きな問題などは無かったのですか?

秋元:「各社員が残業に対する意識を全く持っていない…」、「むしろ残業を美化させてしまっている…」などといった話は良く聞きますよね。

そういった環境下で、急にしっかりとした勤怠管理システムを導入すると、最初は膨大な残業代が発生してしまうことになると思います。

そして、そのまま無理に残業を抑制していくと、やがて社内の反発があって…みたいな。

確かにそういったお話は良く聞きますね。

秋元:弊社の場合もいろいろと気を使いながらスタートをしたのですが、結果的に、あっという間に馴染んでくれました。むしろ余計に意識が高くなって、とても生産性が上がったような気がします。

いろいろと大変なことが起きてしまうのではないかと、内心はハラハラしていたのですが…(笑)。

すごいですね。残業代が1分単位で支給されるとなれば、少しは残業代を稼ごうと考える方もいると思うのですが、そうではなかったということですね。

秋元:そうなんですよ(笑)。普通は皆さんそう考えますよね(笑)。

幸いにして弊社は意識の高いメンバーが多かったということもあって、「残業代=不必要なコスト」と捉えてくれたので、時間管理に関しても徹底するようになってくれました。

皆さんの高い意識があってこそですね。

秋元:そういった流れで、従前から整備をしていたので、上場審査の際に労務関係の質問はほぼゼロでした(笑)。中間審査と最終審査と合わせて、だいたい1000本以上の質問がありましたが、ほとんど労務関連は無かったですね。

井出:主幹事の段階で、労務の部分はほぼ二重丸が出ている状態だったので、東証からの質問もあんまりなかったんですよね。

一般的には突かれることが多い場所だと思うんですけど、ここは本当に秋元の功績ですね。

本当にこの功績は大きいですね。

秋元さんの場合は業務範囲も多岐に渡っていたかと思いますが、その他に何かございますか?

秋元:当時の課題の一つで、管理職候補の人材が社内にいないということがありました。事業を拡大しなければならないのに、管理職候補がいないということで、2014年10月から人事制度設計の構築を本格的に始動しました。特に評価制度のところは、グレードに合わせた役割・評価を明確に定義して、どうすれば昇給できるのかというのを可視化しました。

とても大事なことですね。

秋山:その他、人事以外では、株主総会・株式事務、持株会の設立、ストックオプション設計、増資手続きなどなど…いろいろやりましたね。ストックオプションの発行は上場するまでに4回やりまして、株式関連含めて、リソース的に社内で対応できる人がいなかったので、結果的に携わる範囲がだいぶ広くなっていました(笑)。

株式関連の実務やSO設計などは、ある程度の専門性が必要かと思うのですが、それを未経験で対応されてきたということなのですね。

秋元:独学で勉強をしながら、外部機関や周辺の方々にいろいろと相談をしながら何とか対応をしていきました。

いくつか本も読みましたが、「この形式要件を満たすために対応すべきことは…」みたいなものは書いてあるんですが、実際にどんな流れで進んでいくかなど、リアルな面はなかなか書かれていないので、実際にやりながら感覚を掴んでいったという状況です。 

経験の無い中でその範囲をキャッチアップしていったというのは、さすがですね。