株式会社VRAIN Solution/菊地佳宏氏 - エクイティ無しで創業から4年弱でのIPO達成。少数精鋭で駆け抜けた舞台裏。(1/2ページ)

2024年2月、東証グロース市場へ上場した株式会社VRAIN Solution。創業以来黒字を継続し、エクイティファインナンスをすることなく、デットファイナンスと売上利益により事業を拡大。創業から4年弱でのIPO達成。そのIPOを主導した取締役コーポレート部部長 菊地佳宏氏に、IPOに至るまでとその後の取り組みについてお話を伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge 山岡直登
早速ですが、これまでのご経歴からお話をお聞かせいただけますか。
大学卒業後、みずほ銀行に入行し、法人営業としてキャリアを積んできました。M&Aや海外進出などのソリューション提案を行い、案件対応をしてきました。銀行時代の最後、青山支店にいた際には、上場アパレル企業を担当するとともに、スタートアップの開拓やIPO支援といった業務にも携わっていました。そうした中で、共通のお客様の支援を通じてVRAIN Solution創業前の南塲(代表取締役社長 南塲勇佑氏)と出会い、そこからお付き合いが始まりました。
南塲さんが創業される前からのお付き合いだったのですね。
はい。私は銀行担当者として、南塲はVRAIN Solution前身の会社で営業支援としてその企業に関わっていました。支援先の社長から、キーエンス出身の営業マンに参画してもらうことになったからと紹介を受けたんです。
南塲さんの創業、その後菊地さんがジョインされるまではどういう流れだったのですか。
南塲がVRAIN Solutionを設立する時に「口座開設して欲しい」と、久々に連絡をもらいました。そこから顧客として担当していたのですが、二人で食事をしていた時に「ベンチャーへの転職を考えている」と話したところ、「うちに来たら?」と誘ってもらったんです。
南塲はキャラクターも良く、元々力のある営業マンなので、絶対に数字は達成していくだろうと見ていましたし、IPOを絶対にするという意思もあったので、この会社は伸びるだろうと思っていたんです。
加えて、入社を決めた要素の一つに、弊社の事業内容がありました。実は、父親が食品製造業の社長として中小企業を経営していたのですが、コロナで出社ができない、人が集まらない…となってしまい、生産が成り立たなくなってしまいました。人ありきの生産だと、こういった課題感があり、これから少子高齢化で人口が減っていく中、いろんなところで起きる縮図だと間近で見ていて強い危機感を感じたんです。自動化が進まず、人も減っていってしまうと、先人が築いてきた「日本のものづくり」という言葉すらなくなってしまうのではないかとも思いました。私自身も解決したい課題として考えていた中、弊社は製造業のDXや自動化を本気で進めたいという事業に対する強い思いがあり、弊社を大きくしてAIによる自動化でものづくりの在り方を変えることができたら、遠回しに父の事業を助けることができるのではないかと思えたことも、入社意思の決定に繋がっています。

取締役コーポレート部部長 菊地佳宏氏
菊地さんご自身の実体験からくる課題感と、南塲さんとのそれまでのご関係性で創業間もない御社へジョインされたのですね。南塲さんは最初からIPOを目指すと仰っていたのですか。
設立は2020年3月なのですが、設立時から「来期をN-2としてIPOをしたい」と話していました。私の入社が2021年1月、弊社は2月決算なので、2021年3月からの新年度でIPO準備を開始するというタイミングでした。
ご入社されてすぐにIPO準備に取り掛かられたのですね。当時コーポレートのメンバーはいらっしゃったのですか。
CFOと、創業時から総務・経理をやってくれていたメンバーの2名がいました。その後、N-2期に採用強化を見据えて人事を1名追加し、4名体制としています。N-1期には経理を1名追加し、N期に入る直前には経営企画やIPOの審査対応等をやってもらうマネージャーに入ってもらい、5名で対応していました。
かなり少人数ですよね。途中CFOの交代もありましたね。
N-2期の中頃あたりに退任し、その後任で会計士有資格者の方にジョインいただきましたが、N-1期に入る前のところで独立されることになり、私が後任として着任する形となりました。
当時CAO、管理部長のロールを菊地さんお一人で対応されたのは、かなり大変だったのではないですか。
そうですね。ただ、社員数がそこまで多くなかったことと、過去のしがらみが無く、ほぼ全て作っていくような状態だったのは良かったと思います。ルールを作っていく、徹底していくことにフォーカスでき、効率的に運用ができました。

ご入社から上場までの菊地さんのミッションの変遷についてもお伺いできますでしょうか。
最初は銀行調達などのデットファイナンスと、就業規則以外は何も無かったので、内部統制や規程類の対応から始まりました。その後、コーポレート全体の採用や、IPOに向けた審査対応もやりました。前任のCFOがいた際には、業務を分担し、経理をCFOが、財務や人事を私が担当していましたが、CFOの退任後は私がIPO準備をしながら、コーポレート業務の意思決定を一人でしていくという形でしたね。
N-1期から申請期までのミッションの移り変わり、ボリューム感などはいかがでしたか。
N-1期もN-2期と大きく変わった印象はなく、主幹事証券とのMTGで必要な事項を整理して課題を潰していきます。ただ、申請期に入るために予算の達成は必須なので、予算計画の設定、予実管理は非常に気を遣っていたと思います。他には、申請期に必要な一の部や二の部、成長可能性資料の作成を少しずつ進めていました。開示まわり、主幹事対応、監査法人対応も私が表立ってやっていました。
CFO、管理部長、各セクションのマネージャーを兼任されているような構図ですよね。ハードワークだったのではないですか。
忙しかったですが、各業務で波はありますし、優先順位をつけながらやっていました。それに、メンバークラスの皆もある程度マネージャーのような動き方をしてくれてだいぶ助けられましたね。
先程、デットファイナンスの話がありましたが、上場に向けたファイナンスの戦略などがあれば教えてください。
エクイティファイナンスをしなかったのは特徴だと思います。基本的に、「事業に必要な資金はキャッシュフローで生み出しながら事業をする」というスタンスでやっていました。

デットファイナンスと売上の利益で事業を運営されてきたということですか。
はい。本社移転に伴う投資も含めてデットファイナンスが約3億円です。創業当時から赤字になったことがありませんでしたが、スタートアップで実績がない部分は論点にはなりました。そこで銀行の担当者に事業の特徴や成長性を理解してもらえるように努めました。
スタートアップとしては珍しいですよね。そのような事業運営ができた要因はどんなところでしょうか。
キャッシュフローが良くなる事業体制を構築したことが主要因ですが、もう1点は南塲のこだわりでしょうか。効率性を考えても、できる限りデットでやるということについては私もアグリーでしたので、メガバンク・地銀のバランス等を考えながら、資金調達を行っていきました。その上で、万が一の場合にはエクイティができるよう、VCとの関係構築にも努めていました。結果的には事業計画通りに進められたので、エクイティはやらなかったというわけです。
ファイナンスについて他に何かありますか。
既存株主の資本構成を変えたことでしょうか。AIの教育系コンテンツを販売する企業が当初相当数の株式を保有していました。当企業のアカウント先を紹介するということで株主になっていて、実は私と南塲を繋いでくれたスタートアップでもあるのですが、証券会社から極力保有比率を減らすように指摘を受けていたんです。
既存株主との交渉で一定数は買い戻すことで応諾いただきました。ただ、全株とならなかったため、VCに入ってもらう形をとりました。VCとの交渉は、当時のCFOと私とで対応し、結果的に、ジャフコ(以下:敬称略)、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、東京センチュリー、デロイトトーマツの4社に株式を買い取ってもらい、資本構成を変えることができました。VCの方々には普通株で取引をしていただいたので、かなり異例なご対応をしていただき、非常にありがたかったです。

上場までを振り返られた中で、ご苦労されたことなどがあれば教えてください。
入社して最初にサプライズがあって…。1月1日付で入社し、2カ月後にIPO準備に入るということだったのですが、監査法人も証券会社も決まっていないという状態でした(苦笑)。いわゆる監査難民という状況で、一気に探し始めたんです。
それはとんだサプライズですね…(苦笑)。当時は監査難民はしょうがないという空気感でしたからね。
大手を含めて担当者がアサインできないとお断りされることが続いたのですが、結果的に監査法人A&Aパートナーズに引き受けていただくことができました。そこが決まらず一期伸びる可能性もあったので、一番ヒヤヒヤしましたね。
予定では2カ月後にN-2期に入るというタイミングだったわけですよね。
はい。ショートレビューも受けていなくて、監査法人も決まっていなかったのは結構きつかったです。
他にも何かご苦労されたことはありましたか。
N-1期の終わりのタイミングで経理メンバーが退職となりました。経理のキーパーソンに欠員が出ることで、次の申請期には入れないかもしれないという状況だったのですが、新たに採用した経理のメンバーがしっかりカバーしてくれて、証券会社からもOKをいただくことができました。
組織構成上、一人でも欠けてしまうと大変だったでしょうね。
はい、やはり少ない人員で運営している組織なので、一人が持っているウェイトが大きいため、経理業務をスケジュール通りまわせるのかという懸念はありました。
