株式会社FUNDINNO / IPOは通過点。未上場株式市場の未来を自ら切り拓く。(2/2ページ) - Widge Media

株式会社FUNDINNO / IPOは通過点。未上場株式市場の未来を自ら切り拓く。(2/2ページ)

記事紹介

2025年12月に東証グロースへ上場した株式会社FUNDINNO。株式投資型クラウドファンディングや特定投資家向け銘柄制度(J-Ships)のリーディングカンパニーとして、日本の未上場株式市場の拡大を牽引している同社は、なぜIPOを目指したのか。IPO準備から達成後の成長戦略などについて、お二方にお話を伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge 佐野めぐみ

今回のIPOプロジェクトでは、お二方はどのような役割分担をされたのでしょうか。

小道:今回のプロジェクトでいうと、守りと攻めという形で役割分担をしていました。布施はIPOプロジェクトの総責任者として全体を統括し、内部統制や規制対応など、専門性の高い領域を中心にカバーしていました。レギュレーション本部の管掌役員でもあるので、その領域は布施がリードし、守りの部分を担っていました。

一方で私は、プロジェクト全体のPMとして、全体スケジュールの管理や主幹事証券との折衝・調整などをディレクションしつつ、経営企画として事業計画の達成を牽引する、いわば攻めの部分を担当していました。

 IPO準備の中で大変だったことはありますか。

小道:個人的には、そこまで辛いという感覚はありませんでした。これまで上場企業で働いた経験はありましたが、自身が中心となってIPOを経験するのは初めてだったので、むしろ「絶対にやり切りたい」という気持ちの方が強くラストマンシップをもって臨んでいました。

事業計画の取りまとめでは、コスト削減なども含めて事業側にかなり協力してもらいました。ずっと赤字が続いていた会社で「申請期以降は絶対に黒字にする」という事業計画を引き、事業サイドにはかなりプレッシャーをかけながら伴走しました。PMとして上場スケジュールを死守するためにも、事業部門の予算達成は絶対に妥協できないポイントでしたので、そこは強くコミットを求めました。事業部門が本当に頑張ってくれていたので、管理側としては「あとはこちらに任せろ!」という意気込みでやっていましたね。

IPO準備では、各種規程の整備や情報セキュリティなど、いわゆる守りの部分も多くあります。ただ、そこは専門家の皆様や社内の関連部署のサポートもありますので、私はPMの立ち位置で全体の進捗を見ながら一つ一つ課題を潰していくという作業を繰り返しました。とにかく決めたことを必ずやり切るという強い意識で取り組みました。

IPO準備の過程では、事業サイドと管理サイドがぶつかってしまうケースも多々あると聞きますが、御社はその点はいかがでしたか。

布施:結果として、私たちはあまりそういう衝突はありませんでした。理由は二つあると思っています。一つは、私たちが金融業であるという点です。金融サービスを提供している以上、もともと一定の管理体制は整っていました。ゼロから管理体制を整備する必要があるスタートアップと比べると、その点は大きかったと思います。

もう一つは、IPOを目指すかどうかを議論した段階で、幾度も意見をぶつけ合ったからです。先程も申し上げた通り、IPOを目指すと決める前の段階で、丁寧に時間をかけ、賛否含めて徹底的に議論しました。その結果、「みんなでIPOを目指そう」という共通認識ができていたので、実際に動き出してからは一致団結して進めることができました。

小道:その共通認識の土台があったからこそ「申請期以降は必ず黒字にするんだ、ますます成長させるんだ」という意識で取り組むことができましたし、結果として最短での上場に繋がったのだと思います。

上場時には250名を超える個人投資家や事業会社が株主としていらっしゃったと伺いました。これは非常に特徴的な資本構成だと思いますが、この資本政策にはどのような意図があったのでしょうか。

布施:これは私たちのサービスの特性とも関係しています。FUNDINNOのサービスは、多くの個人投資家の皆様から資金を集めてスタートアップに届けるという仕組みです。そうである以上、私たち自身も「多くの株主に支えられる会社」であることを体現したいと考えていました。

株主の皆様は本当に多様で、さまざまな知見や経験を持っていらっしゃいます。企業のことを好きで応援してくださる方も多いです。そうした株主の皆様と一緒に会社を成長させていくという考え方は、サービス開始当初から持っていたものです。

逆に株主が多いことで大変なことはありましたか。

小道:株主の反応は本当にさまざまでしたね。「上場を心待ちにしています」と期待を寄せてくださる方もいれば、「ずっと応援しています」と温かい言葉をかけてくださる方もいました。

布施:そもそも、我々のサービスを利用すると株主の数は自然と多くなります。我々はそれ自体を非常にいいことだと考えていますが、世の中には必ずしもそう思わない方もいらっしゃいます。これまで弊社のようなサービスはあまり存在していなかったため、新しいことを始めれば当然一部では抵抗感を感じられる場合もあります。株主が多くなることは決して悪いことではないということを示す意味でも、上場は一つの大きな証明になると考えていました。今回、弊社が上場できたという事実は、ある意味で「私たちのサービスは信頼できるものだ」と東証からお墨付きをいただいたようなものだと思っています。つまり、私たちのサービスを活用した企業であっても、きちんと上場を目指すことができるということを示す、その象徴的な意味合いがあったと感じています。

上場後、社内外ではどのような変化がありましたか。

布施:外部からの見られ方は大きく変わったと感じています。「上場企業である」ということ自体が一つの信頼の証になります。私たち自身というより、外部の方々がどう感じてくださるかという意味で、その変化は大きいのではないかと思います。社内の変化については、小道の方が実感している部分が多いかもしれません。

小道:基本的に、私自身はこれまで通り事業と伴走する経営企画というスタンスは変わっていません。ただ、上場企業になったことで、「企業価値をどう最大化していくか」という視点はより強く持つようになりました。業績管理の精度を高めることはもちろんですが、会社としてどのように価値を高めていくかを常に考えながら動いています。

上場後の社内の雰囲気についてですが、急激に文化が変わったというよりは、上場を見据えて着実に『組織としての器』を整えてこられた印象です。マインドセットの変化もさることながら、物理的な環境やコミュニケーションの仕組みといった『土台』の部分でも、大きな変化はありましたか。

小道:大きな変化のきっかけとして、弊社は上場前年の2024年1月にオフィス移転をしました。以前のオフィスは五反田の雑居ビルの中にあり、スペースがかなり限られ、フロアも分かれていてコミュニケーションが取りにくいという難点もありました。赤字の状態でオフィスに投資することについては、当然社内でも議論がありました。ただ、オフィスが変わることで採用力アップや社員のモチベーション向上、会社としてのブランド力など、上場企業としてふさわしい環境を作る必要があると考え、移転を決めました。実はこのプロジェクトも私が責任者として進め、なかなか大変でしたが、社員からは「移転してよかった」「このオフィスで働けてよかった」と言ってもらえることも多く、やってよかったと感じました。「このオフィスで上場をするんだ」というより強い気持ちになってもらえたのかなとも思います。

布施:今はワンフロアになり、誰がどこで何をしているかが見える環境になっています。そうした点も、会社の一体感につながっていると思います。移転は将来への投資という戦略的な位置づけでしたので、結果として皆満足しています。

上場後に活かされている、未上場時の実施事項についても教えてください。

布施:コロナ禍もありフルリモートだったところから、移転をきっかけに週3日の出社スタイルとし、原則として毎週水曜日の朝に全社員で朝礼をすることになりました。せっかく社員が会社に来るのだから、情報だけではなく、特にCEOの柴原やCOOの大浦の想いを伝える機会にしようと、小道が中心になって計画してくれました。上場したとて、スピーディーに事業を運営していくことに変わりはありませんし、オフィス移転後に入社された方も多数いますので、経営陣の想いがきちんと社員へ伝わる機会があるのは良いことだと思っています。

CEOやCOOの想いが直接聞ける機会はとても大切ですね。社員との距離感は近いですか。

小道:弊社は普段から経営陣と社員とのコミュニケーションが多く、距離も近いと感じますが、大手の上場企業、金融機関、証券会社からご入社される方も多く、入社時には「近すぎてどう接したら良いかわからない」とおっしゃる方もいるくらいです(笑)。経営陣の執務スペースには区切りが無いので、話しかけやすい環境かと思います。ガラス張りの会議室を作るというリクエストは役員陣、特に代表の柴原からの強いリクエストとしてありました。

とても開放感がある空間ですよね。経営陣を含め、どこで何をされているのか全て見渡せる空間になっていますもんね。御社の透明性の高さのようなものも感じますね。

上場後のIR活動についてはいかがでしょうか。

小道:上場してからは、かなり積極的に情報発信を行っています。リリースの数も増えていますし、機関投資家の皆様との面談も行っています。投資家の皆様からいただいたフィードバックは、社内でも共有しています。また上場を機にIR用のnoteも立ち上げました。マンスリーレポートやイベントレポートなどを継続的に発信しています。IRは別で担当がおりますので、事業の状況や今後の見通しについてどのように説明するかなど、私が壁打ち相手になることもあります。

布施:上場企業としての責任という面と、我々のサービスを世の中の皆様にもっと知っていただくという面の両方が非常に重要だと思っています。IR担当役員とCMOが中心となり、皆さまにきちんと情報をお届けしようという意識で積極的に行っています。

最後に、お二方の今後の目標やビジョンを教えてください。 

小道:経営企画としては、評論家にならずに常に事業と伴走し続ける存在でありたいと思っています。上場は一つの通過点であり、ここからが新しいスタートだと考えています。企業価値の最大化に努めること、支援者としての提供価値を高めるのは当然のことながら、自社としても非連続的な成長を仕掛けていく。日本のスタートアップ市場全体を牽引できるように、会社としても個人としてもそこに対してプレゼンスを大きく発揮していきたいなと思っています。

個人的には、家族や友人にも自然に知られている会社にしたいですね。以前働いていた会社ではテレビCMが流れていて、子どもが「パパの会社だ」と言ってくれたことがありました。現在YouTubeで弊社のCMは流していますが、自分の周りの人にも誇れる会社にもっとしていきたいと思います。

ありがとうございます。布施さんもお願い致します。

布施:FUNDINNOは、未上場株式を扱う企業として、日本国内でも高い存在感を持っていますが、まだまだ道半ばだと思っています。

より多くの皆様に未上場株式という市場を知っていただき、投資や資金調達の選択肢として広げていかなければいけないと感じています。そのことが結果として日本の国全体の成長にもつながると本気で思っています。それらを体現していくような取り組みを今後もやっていきたいです。まだまだやれていないことがあるので、きちんと形にして世の中に生み出し、ご利用いただけるように、一歩一歩着実に進めていきたいと思います。

もう一つが、「この会社で働きたい」と思ってもらえるような会社にしたいです。大学生が就職したい会社ランキングの上位に入り、「FUNDINNOって面白そう」「未上場株式に携わりたい」「こんな世界観を持っている会社に入りたい」と言ってもらえるような会社にしていきたいと代表の柴原ともよく話しています。弊社では現状定期新卒採用は行っていませんが、最終的には目指していきたい姿です。

素晴らしい目標やビジョンですね。今は政府としてもスタートアップを増やそうという動きもありますし、御社にとっても追い風が吹いていると言えますね。ますます御社の今後が楽しみになりました。本日は大変貴重なお時間をいただきありがとうございました。

株式会社FUNDINNO/布施知芳氏・小道洋平氏布施知芳氏(左)
早稲田大学政治経済学部卒業後、監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)に入社し、製造業・不動産業・建設業・小売業・専門商社・ITサービス業・社団法人など、様々な業種・業態に対する監査業務を行うとともに、IPOを目指す企業に対するIPO支援業務、組織再編等M&Aに関するアドバイザリー業務や事業承継に関するアドバイザリー業務に参画。2018年株式会社日本クラウドキャピタル(株式会社FUNDINNO)に入社。執行役員に就任し、サービス利用事業者の審査業務を行う。2019年2月取締役に就任し、現在はレギュレーション本部の管掌を行う。

小道洋平氏(右)
明治学院大学国際学部卒業後、広告会社にて営業職としてキャリアをスタート。その後、金融・IT・エンタメなど多岐にわたる業界を経験し、楽天グループ株式会社や株式会社セガ等、大手企業からスタートアップでの役員職まで多様な事業フェーズの企業において幅広い業務に従事。10年以上にわたる経営企画領域のキャリアにおいて、事業計画の策定やファイナンス業務、コーポレート機能の整備の他、子会社の立ち上げやPMI等、多角的な経営アジェンダを推進。2022年に株式会社FUNDINNOに入社。現在は経営企画部長として事業と伴走し企業価値の最大化に努めるとともに、同社のIPOプロジェクトにおいて全体PMとして上場を牽引。