【インタビュー】株式会社メルカリ/長澤啓氏 - 2019年最も注目されたIPOの裏側。海外投資家を含めたエクイティーストーリー(1/5ページ) - Widge Media

【インタビュー】株式会社メルカリ/長澤啓氏 - 2019年最も注目されたIPOの裏側。海外投資家を含めたエクイティーストーリー(1/5ページ)

記事紹介

三菱商事において金属資源分野における投資及び主にエネルギー、リテール、食品分野等の領域におけるM&Aを担当。2007年にシカゴ大学経営大学院を卒業の後、ゴールドマン・サックス証券にジョインし、東京及びサンフランシスコにおいて、主にテクノロジー領域におけるM&AやIPOを含む資金調達業務を担当。2015年7月に株式会社メルカリに参画。CFOとして、IPO準備から達成までご経験された長澤さんに、お話をお伺いいたしました。

※インタビュアー/株式会社Widge パートナー 山岡直登

入社された当時の状況

本日はお忙しい中ありがとうございます。早速ですが、長澤さんがご入社された当時について教えてください。

僕が入ったのは2015年7月です。92番目の入社でした。ちょうど六本木ヒルズに移転したばかりで、まだ社員数が100名にも満たない時期です。

IPO準備はすでに進めていたのでしょうか。

当時もすでに準備を進めていて、小泉さん(現取締役会長の小泉文明氏)が主導していましたね。IPO準備は進めていましたが、IPOをオプションとして残しつつ、プライベートでどれだけ調達できるかということも追求しながらだったので、両輪でまわしながら動いていたイメージです。

両輪でですか。

はい。IPO準備自体は進めながら、別途資金調達も行っていくという両輪が3年くらいですかね。 非上場でいたほうが、赤字も気にせずにすごくフレキシブルに経営ができますし、大胆に投資ができるというメリットがあるので、非上場という立場でどれだけの調達ができるかということは、当時とてもチャレンジしていましたね。

株式会社メルカリ 執行役員CFO 長澤 啓 氏

上場すること自体を目的化しているわけではなくて、しっかりと事業を伸ばして、できるだけ大きく出ようと考えていましたので。

当時国内のマーケットですと大型の調達は珍しかったですからね。

そうですね。海外でようやくユニコーンが出てきたくらいの時期だったので。国内では大きな額を出す投資家もほとんどいなかったので、入社してから2週間で、進太郎さん(創業者であり、現代表取締役社長の山田進太郎氏)と、海外の投資家まわりをスタートさせましたよ。

その辺りが、長澤さんの入社当初のメインミッションだったわけですね。

はい。ただ、当時海外投資家を含めて、いろいろな投資家さんに当たったのですが、実際には、条件等々含めて、最も良い株主さんになっていただけると感じたのが、三井物産さんと日本政策投資銀行さんでした。リードになっていただき、84億円という金額を調達しました。

話題になりましたね。

株式会社Widge パートナー 山岡直登

そうですね。2016年の3月にクロージングしたのですが、あの頃はまだこの規模の調達はなかったので、話題にしていただきましたね。今でこそ大型調達は当たり前になりましたけど。

グローバルIPO/当時の課題

IPOへのスタンスをもう少し詳しく教えてください。

国内の投資家がメインのIPOにするのか、海外投資家も買えるようなグローバルIPOにするのか、大きく分けて二つあると思いますが、我々としては、最初からグローバルIPOを見据えたフォーマットを考えていました。

グローバルIPOですか。

はい。やはり1,000億円以上の金額を集めようと思うと、国内だけでは吸収しきれないので、当然グローバルになるわけですが、最初からグローバルの投資家にも販売していくことを見据えていたので、開示資料や目論見書も和文だけでなくすべて英文でも作っていました。

はじめから全て英文で作成されていたのですね。

そうなんです。英文で作成するということだけでも、だいぶ神経を使うので、普通のIPOの3倍くらいは手間がかかっていたと思います。

通常のIPOよりも大変な分、助走期間が比較的あったのはプラスでしたね。

そうですね、おそらく全体で4年くらいは上場準備期間として動いていたと思います。弊社の長期的なスタンスは証券会社にも理解いただいていたので、「どうせまだ上場しないんですよね?」みたいな会話もよくありました(笑)。一般的には、「来期いけますか」、「まだこれだと厳しいです」みたいな会話があると思いますけど、うちの場合は真逆でしたね(笑)。

当時、IPO準備の課題はどの辺りだったのですか?

課題はいろいろとありましたが、大きかったのは、まず最初は海外の投資家の認知度を高めることでしょうか。結局、IPOの規模を最終的に大きくして、上場後も見据えて流動性をきちんと作ろうと思うと、先ほどもお話した通り、国内の投資家だけでは厳しいので。東証の上場銘柄を見ても、時価総額が大きくなれば外国人株主率が高まることは分かっているのですが、どのようにそこを目指していくかを考えた時に、最初から大きな外国人投資家にターゲティングをして、非上場でも我々のことをしっかりと見ていただくことに努めていました。上場していないのに、勝手にIRもやっていましたからね(笑)。

非上場の時からIRですか。

そうですね。遠い東の国でフリマアプリをやっているスタートアップなんて、誰も知らないので、そのビジネスモデルと成長性を海外の投資家にも認知していただくということを考えると、とてつもない長い道のりがあるな、というのが最初に感じた課題でしたね。

たしかにそうですね。

そこから時価総額4,000億円って、なかなか想像がつかないところにあって……。現在の弊社は浮動株のおよそ半分ぐらいが外国人株主なんですが、この構成は、上場前からコツコツと投資家の方々に会うというのを積み重ねてきた結果だと思っています。