【インタビュー】HEROZ株式会社/浅原大輔氏・鈴木義規氏 - ロジカルな考えによる合理化でIPO準備をスムーズに(3/5ページ)
2018年4月20日に東証マザーズへ上場を果たしたHEROZ株式会社。
IPOへ導いた同社の精鋭チームに、これまでの足跡と今後の抱負を伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge パートナー 山岡直登
苦しかったエピソード
IPO準備過程での苦労話を聞かせてください。
浅原:僕は「AI」というものを市場に受け入れてもらうことが一番大変でしたね。今は「AI」というと、とても評価が高いですが、2015年くらいはほとんど知られていなかったんです……。技術的には、世の中を大きく変えるほどの「機械学習技術」というものがありながらも、世の中の受け入れ体制が整っていない状況でした。
当時は、そもそも「AI」って何なの? みたいな世界観だったということですよね。少しずつ啓蒙しながらという状況だったのでしょうか。
浅原:まさにそうですね。啓蒙は、クライアントや投資家、証券会社さんに対してもですが、ゲーム会社という見方に対して、「違います」ということをしつこく言っていました。
理解をしていただくために、どのようなことを工夫されていたのでしょうか。
浅原:弊社のAI技術は、コンピューター将棋の世界でしっかりと示されているので、それが実績となって、アピールすることができました。他にも、AIカンファレンスに出る、イベントに登壇するなどでしょうか。中でもFinTechの分野ですと、AIは使われやすかったと思います。構造化されたデータがあるということはもちろん、金融機関の方は情報に敏感なので、AIを使ってみようという方も多かったですね。
あと、Googleがイギリスの「DeepMind」という会社を500億円ほどで買収したことがあったんです。後に「AlphaGo」という、囲碁で初めて人間に勝ったAIを作った会社ですが、弊社と似たようなことをやっていたんですね。なので、「うちの技術ってそれくらいの価値があるんですよ」みたいな啓蒙はしていましたね。
ちなみに、最初のお客さんはどのような会社だったのでしょうか。
浅原:大手の金融機関です。最初の顧客獲得は難しかったですけど、証券会社さんなど金融機関はよくお付き合いをされているので。そのつながりで弊社のAIサービスを使っていただきました。その後は、それをレバレッジして増やしていったような感じです。
浅原さん、営業もされていたということですね。
浅原:そうですね。AIでのBtoBビジネスはやっていました。今でもやっていますよ。
鈴木さんは、何かご苦労なさったことはありますか。
鈴木:正直苦しかったことは無いんですよ。弊社の場合、連結が無く単体決算ですし、処理自体もそんなに特殊なものがないので。資料も結構シンプルにいろいろと作れたので、ありがたかったですね。だんだん進んでいくと「次何があるんだ?!」って、楽しみでやっていたような感じでした(笑)。
やはり前職でIPO準備から一通りのご経験をされているのが大きかったのでしょうか。
鈴木:そうですね。むしろ前職は連結で、かつ特殊な取引が多かったので、比較をすると非常にシンプルでやりやすかったというのが感想です(笑)。弊社ならではの特殊なものは、ほぼ無く、本当に順調に進んだように思います。
鈴木さんの苦労話はほぼゼロということですね。
鈴木:たとえばルーティーンをやりながらの審査対応などは、一時的に大変でしたが、苦労よりも楽しんでやれたという方が正直大きかったです。
素晴らしいですね。審査対応は「2週間後までに質問何百問」のような作業も突発的に発生しますからね。
鈴木:本当にそうですよね(笑)。でも、それも弊社が単体ということもあって、会社の情報から回答を引き出しやすいので、回答書もとても作りやすかったです。
やはり一度経験されていると違いますね。たとえば、過去のデータを引っ張り出してその整理を……みたいなこともあまり無かったですか?
浅原:2015年の鈴木が入社した当時は、10人とか15人くらいの規模で、そこから構築していったので、散らばっていて大変だったということは無かったかもしれませんね。 鈴木:あと、会社の情報は既にデータ化されていたので、情報を取り出すのに時間がかかったり、そもそも紙を引っ張り出すということも無かったので、とても助かりましたね。
データ化はどなたが整備されたのですか。
浅原:もちろん鈴木も行っていましたが、もともと創業者の2人がデジタルでやりたいという思いがあったので、ほとんど紙を使っていませんでした。
それは良かったですね。ちなみに、働き方はいかがでしたでしょうか。IPO準備期間中は特にハードワークで、中には泊まり込みという会社さんもありますが。
浅原:それが、弊社は無かったんですよね。
少数体制の中で、それはすごいですね。
浅原:鈴木が先を見越して推進してくれていたというのが大きいですが、22時までいることはほぼ無かったです。証券審査や東証審査などで遅くなることが1、2回あった程度ですかね。
その秘訣は何ですか。
鈴木:元がシンプルということと、先ほどの通り、データが引き出しやすい構造になっていたので、質問が来ても応えやすいということがありましたね。
データ管理は何か特別なシステムを入れているのでしょうか。
浅原:たとえば勤怠管理は、自社で作ったシステムを使用していました。
自社でシステムを構築されたのですね。
浅原:最初はしっかりとした原価計算ができない状態だったので、原価計算ができて、最低限の機能を備えた勤怠管理システムを、弊社の開発部長に頼んで作ってもらいました。忙しいなか隙間時間で(笑)。経理で必要な情報から逆算して、それが取れるだけの極めてシンプルなものだったので、とても使いやすかったですね。
開発部長さん、さすがですね(笑)。 今も同じ勤怠システムを使っているのでしょうか。
浅原:社員数も増えてきて、勤怠管理だけではなくて、プロジェクトの立ち上げなども全て連動させる必要が出てきたので、いまは他のシステムを入れています。上場までは、自社開発したシステムがメインでしたので、本当に助かりましたね。