【インタビュー】HEROZ株式会社/浅原大輔氏・鈴木義規氏 - ロジカルな考えによる合理化でIPO準備をスムーズに(5/5ページ)
2018年4月20日に東証マザーズへ上場を果たしたHEROZ株式会社。
IPOへ導いた同社の精鋭チームに、これまでの足跡と今後の抱負を伺った。
※インタビュアー/株式会社Widge パートナー 山岡直登
IPOを目指す企業へ
IPO準備を進めているコーポレートチームの方々に向けて、何かお伝えできることがあればお願いします。
鈴木:先ほどもお話しましたが、ある程度上場後を見据えて、開示はやっておくと良いと思います。いきなりそういう状況になると対応できなくなる可能性があるので、上場1年ほど前から準備をしておいたほうが良いと思いますね。
ちなみに鈴木さんは開示のご経験があったと思いますが、そもそも経験が無いという場合は、どのように進めた方が良いか、何かアドバイスはありますか。
鈴木:Ⅰの部を作る前に、基礎資料というものを作らなければいけないんですけど、まずはその部分から携わっていただき、この数字は開示資料のこの部分につながっていくんだよ、というようなことを実行していくと、徐々に理解していけるのではないかと思います。最初からいきなり開示資料を作ると言っても、だいぶハードルが高いと思うので……。
ありがとうございます。他にありますか。
鈴木:これは経営判断になってしまいますが、上場前に、子会社の買収などあまり複雑にしてほしくないですかね(笑)。資料作り自体がだいぶ大変になるので、シンプルでいくのが一番だということを、特に弊社を見ていて思いました(笑)。
浅原さんは、何かお伝えできることはありますか。
浅原:IPOまでの全体像を見ながら、できる限り最短ルートでフローを組めると良いのではないかと思います。弊社の場合は鈴木がいたので、全体像も洗い出しやすく、そこに合わせてフローも作れました。もしそういった方がいなければ、経験者に聞くなどして、ある程度全体像をつかんでから設計していくと良いかもしれないですね。
CFOに向けては何かありますか。
浅原:外部からのアドバイスにはしっかり耳を傾けつつも、それがCFOに向けてのポジショントークである場合も考えられるので、自分が納得できることに絞って動いていった方が良いということはあるかもしれません。
浅原さんのような金融業界でのご経験が無いCFOの場合、エクイティストーリーを策定する上で、どのような点を意識すべきか、アドバイスがあればお聞かせ下さい。
浅原:まずは、「投資家目線に立つ」ということですかね。何故この会社に投資するのかというInvestment Thesisみたいなものがあるので。分かりやすく言うと「まだ織り込まれていないアップサイドもあって、ダウンサイドも限定的で、バリュエーションも安い。だから買う。」みたいなパターンがあるので、そこに当てはめていくようなストーリーを作ると良いと思いますね。 あとは、市場規模が大きいところへ「自社の強みは何か」を訴えるということでしょうか。
投資家心理を想定した動きを取るということですね。
浅原:そうですね。僕は証券会社で上場企業もよく見ていましたし、上場株の投資家とコミュニケーションを取っていても、幾つかのパターンは分かるので、当てはまりそうな内容を随時出していけたと思います。 結果、上場株の投資家が、未上場時の弊社に出資していただけていたので、Post IPOを見据えた、良いファイナンスができていたと思っています。
上場後のことをしっかりと考えたエクイティストーリーですね。
浅原:はい。エクイティストーリーは上場後のIRにも繋がる話なので、しっかりとしたIRができる体制を構築することができれば、自然とエクイティストーリーもできているはずなので、これはセットかもしれないですね。社内にそういう人がいなければ、IR担当者を新しく採用したほうが良いかもしれません。上場市場と未上場市場は見方が全く異なるので、必ずしも創業メンバーとか、未上場の時に支えてきた人がエクイティストーリーを考える必要はないかもしれないですね。
「未上場市場と上場市場は全く異なる」ということは、未上場時にしっかりと理解をしておいた方が良いことですね。
浅原:本当にそう思います。
ベンチャーキャピタルとの付き合いはどうですか。
浅原:VCの方々ともしっかりとつながっておくことは良いと思います。どちらかというと、ビジネスというよりはカジュアルにつながって、最近のトレンドをキャッチアップしておくのが良いかもしれないですね。
その他はいかがでしょう。
当たり前のことになりますが、関連当事者取引とか、反社とか、そのあたりは絶対に抜かりないよう、チェック体制を早めに構築したほうが良いと思います。
その通りですね。ありがとうございます。最後に、お二方の今後の目標を教えてください。
鈴木:個人的には、今回のIPOの過程において、経理が中心でありながらも管理部門全般にわたる幅広い視野を身に付けられたと思っているので、今後は(経験のない)人事の領域にもチャレンジしていきたいという想いがあります。
浅原さんはいかがでしょうか。
浅原:会社としては、機械学習を社会実装していき、労働者をAIで助けたいというのがあります。弊社のIR資料でも出していますが、日本はどんどん労働人口が減り、2050年までに30%ほど減少する見込みです。労働人口が減る一方で、労働人口ではない人口はそこまで減らないので、働いている人への負担はかなり高くなるはずです。そこをAIで助けたいですね。 個人としては、資本市場との対話をしながら、必要なときに資本市場を活用した取り組みを行っていくということですかね。普段はじっとしながら、何かあったときに動けるようにしておきたいと思っています。
浅原さん、鈴木さん、お忙しい中、ありがとうございました。
経理マネージャー 鈴木義規氏