【インタビュー】渡邉淳氏 - 家族・友人との信頼関係、知識、健康…「見えない資産」を大切に(2/6ページ) - Widge Media

【インタビュー】渡邉淳氏 - 家族・友人との信頼関係、知識、健康…「見えない資産」を大切に(2/6ページ)

記事紹介

高専から新卒で富士通株式会社のエンジニアへ。その後、公認会計士へキャリアチェンジをし、青山監査法人(現PwCあらた監査法人)へ入所。野村證券株式会社(引受審査部門)、株式会社ラルクを経て、株式会社エラン・取締役CFOとして東証マザーズへのIPOならびに東証一部への市場変更を牽引。監査法人・証券会社・IPOコンサル・事業会社(IPO準備から東証一部)と、様々な角度で経験を積まれてきた同氏のキャリアストーリーと、その後について伺った。

※インタビュアー/株式会社Widge利根沙和

その後、自ら手を挙げて、野村證券さんに出向をされています。将来的なキャリアを見据えてのことだったのでしょうか?

いえ、まだ具体的なキャリアまでは考えていませんでした。当時、監査法人の立場でIPOにも多く関わってはいたんですよ。IPOを支援する仕事に面白みを感じるようになった一方で、なかなか担当企業が実際に上場をするという機会に恵まれませんでした。私の経験がまだ浅かったということもあったと思います。

上場準備会社を何社も担当していましたが、実際に成功例を見たことがないのにIPOに向けての指導をするというのが、案外辛いものがありましたし、何より自分自身が自信を持てませんでした。

そんな時に、野村證券の(IPO審査を行う)引受審査部への出向者を募集する所内公募を見つけて、「これだ!」ということで飛びつきました。実際にIPO審査をしている部署に行けば、IPOはどうやったら合格するのかとか、こういう会社は落ちるとか、IPOの生死の境目を見ることができるなと考えました。

実際に出向されてみて、いかがでしたか?

IPOのために必要なこと全般を学びました。 (監査法人にいる)会計士が見ているIPOの論点は、だいぶ偏っていて狭いんだな、分かっている気になってたけどまだまだ全然ダメだなと思い知らされました。

具体的には?

監査法人は、企業の過去の数字にフォーカスしますが、証券会社や取引所は、過去の数字は監査を受けているし合っていて当然、その上で将来どうなるのか、この利益計画は本当に合理的なのかというところに特に力を入れて見るんですよね。また、審査で確認する範囲はとても広く、財務諸表まわりはその中のほんの一部だということです。将来のことや財務諸表以外のことについても、これだけしっかり確認するんだということを知ることができ、とても新鮮でした。

野村證券さんで得た気づきは、その後にとても影響されているのですね。

本当にそう思います。当然ですが、企業の経営者が見ているのは、過去ではなく未来ですので。この出向を通して視野が広がったことは、その後の仕事にも大きなプラスだったと思います。

IPOに対する「目利き」もできたと。

ちょうど2年間の出向期間でしたが、私が主担当としてIPO審査を行い、実際にIPOをした会社もありましたし、IPOできなかった会社もありました。同僚が担当している企業の審査プロセスにも参加させていただくこともありましたし、過去の審査資料を見て学ぶこともありました。 IPOができた会社とできなかった会社、それぞれの状況をたくさん見ることができたこと、多くの事例を知れたことは、本当に大きな強みと自信になりました。

出向から監査法人へ帰任された際には、証券会社での経験は活かせましたか?

残念ながら、ちょうど所属していた監査法人での不祥事がいくつか重なり、法人自体がIPO案件を控える方針になってしまいました。出向させていただいた恩がありましたし、出向先で学んだことを活かして、まだまだ監査法人でやっていくつもりだったのですが……。

せっかく身に着けたIPO関連の経験を活かす場がなくなってしまわれたのは衝撃でしたね。 それで、次のステージを考えられたのですね?

そうですね。これからどうしようと思っていた時に、ラルクの鈴木社長に出会う機会がありました。 当時の私は、ラルクという会社名も知りませんでしたし、IPOコンサルというと、IPO準備企業が本来なら自社で取り組まねばならないことをこっそり代行したり、ごまかしながら審査をどうすり抜けるのかを指南するような仕事という印象があり、あまり良く思っていませんでした。

でも、鈴木社長のお話を聞いてみると、ラルクは後ろめたいことをする業者ではなく、それぞれのコンサルタントが豊富な経験をもって高度なノウハウを提供しているとのこと。効果的かつ効率的にIPOプロジェクトを成功させることができるプロフェッショナル集団なんだとのことでした。

もともと想像していた「IPOコンサル像」とは異なっていたのですね。

そうですね。大手証券会社からの紹介による案件受注がとても多いとお聞きし驚きました。メンバーも少人数ですが「証券会社でのIPO実務の経験があり、かつ公認会計士資格保有者」だけを集めていると。証券会社や監査法人の指導だけではうまく進まず苦戦しているIPOプロジェクトを円滑に進めるためのコンサル支援をしており、むしろ証券会社など関係者からの信頼が非常に厚いとのことでした。

私にとっても、これまでの経験を存分に活かすことができるうえに、(新たな環境ということで)一から吸収することができることも多いと思い、入社を決めました。

実際、ラルクさんへ入社されていかがでしたか?

仕事のやり方としては、同時に複数の会社を担当するのですが、まれに複数メンバーで対応することがありましたが、ほとんどの案件は1人で全ての支援をするスタイルでした。IPOコンサルが支援する領域はとても広いですから、それまでの自分の経験を総動員してIPO支援にあたりました。

1人での対応とはいっても事務所に戻れば相談に乗ってくれる同僚がいるので心強くはありましたが、監査法人や証券会社とは違って、IPOコンサルは役に立たなければ簡単にクビになる不安定な立場でしたので、その緊張感のお陰でとても鍛えられたと思います。