【インタビュー】渡邉淳氏 - 家族・友人との信頼関係、知識、健康…「見えない資産」を大切に(5/6ページ) - Widge Media

【インタビュー】渡邉淳氏 - 家族・友人との信頼関係、知識、健康…「見えない資産」を大切に(5/6ページ)

記事紹介

高専から新卒で富士通株式会社のエンジニアへ。その後、公認会計士へキャリアチェンジをし、青山監査法人(現PwCあらた監査法人)へ入所。野村證券株式会社(引受審査部門)、株式会社ラルクを経て、株式会社エラン・取締役CFOとして東証マザーズへのIPOならびに東証一部への市場変更を牽引。監査法人・証券会社・IPOコンサル・事業会社(IPO準備から東証一部)と、様々な角度で経験を積まれてきた同氏のキャリアストーリーと、その後について伺った。

※インタビュアー/株式会社Widge利根沙和

それでも最終的に退かれるというご決断が、双方にとって状況的にWin-Winに持っていけるというところが大きかったということですよね?

そうなんです。タイミングとしては、会社の業績が好調だということが大前提にありました。私が退任したタイミングは、当面は業績も堅調に伸びていくのが内部でもわかっていて、大きなトラブルの種もない状態でした。この状態であれば、バトンタッチする相手も、変なものを押し付けられたとは感じないと思いましたし、どちらかというと私が譲ることで、むしろ輝く人が出るだろうと思ったんです。そこに私がいたからできなかった何かの動きというのもあるかもしれないですし、プラスの部分も出ると思ったので、任せてもいいなと思いました。

エランさんとの関係は、トータル7年くらいですか?

そうですね。取締役として中でやったのは4年です。その前に3年近くをコンサルとして支援していましたので、7年くらいですね。

CFOとして本当に命懸けでやっていたので、「少し休もうと思うんですよね」という話をしたんです。社長にも私をかなりハードに働かせていたという心当たりがあったようで「だよね。確かに休むのは賛成。ありがとうね。」と退任することを了承いただきました。

退任する時には櫻井社長とお互いにお礼を言い合いました。櫻井社長は「エランがここまでの会社になったのは渡邉さんのお陰だよ」と言ってくださりました。私も「大変でしたが本当によい経験をさせてもらいました。エランの株式やストックオプションを持たせてもらったので経済面の不安もなく休むことができます。」と。

退任してから1年半ちょっと経ちましたが、櫻井社長や他の役員、元部下とはたまに飲みに行かせてもらったりしています。辞めた後でもとてもよい関係で付き合っていただけており、本当に有難いことです。

そうしてCFOを退任されて、しばらく充電期間を?

もともとしばらくは仕事をまったくせずに完全充電する予定だったのですが、ありがたいことに色々とお声掛けをいただきまして……。

今はどのような立場、どの程度の関わり方をされているのですか?

数社に携わっています。社外役員として、アドバイザーとして、それぞれお声がけいただいた中でのご縁ですね。いずれ本気でやりたい事が出てくると思っていますので、それに向けて支障が出るようなお仕事はお受けしないようにしています。お受けした後になって「やはり辞めます」というのはご迷惑をかけてしまいますから。

なるほど。どのような経緯から各社の仕事をお引き受けなさったのでしょうか?

もともと面識があった社長さんからの要請、弁護士の知人から顧問先の社外取締役として紹介したいということでのお話、CFOの知人からその会社の社外監査役をというお話など経緯は様々ですね。

関わり方や、頻度などをお聞かせいただけますか?

それぞれバラバラですね。社外役員としては、取締役会への出席がメインですがそれ以外のこともやっています。ある会社では私は社外取締役なのですがオブザーバーとして監査役会にも出席しています。また、コーポレート部門との定例打ち合せをしている会社もありますし、月に一度、社長との1対1の面談を実施している会社もあります。

携わっている会社の中から、早速IPOをされた会社も。

そうですね。社外監査役をしているALiNKインターネット社が、先日(2019年12月10日)東証マザーズへ上場しました。社外役員としてもIPOを経験することができました。

本当に凄いですよね。なにか、そういった運を持っている方なんですかね。

そんなことは無いと思いますよ(笑)。いろいろな方とのご縁ですから。

もともと人付き合いはお好きなのですか?

いや、苦手な方なんです。学生時代の私なんて、友達はほとんどいなかったですから(笑)。

そうなんですか? それは意外です!

むしろ若い頃に全くそういうのが駄目だったからこそといいますか、今は誰かのために役に立つのであれば、自分の知識や時間は、できる限り提供したいという気持ちが強いですね。 自分にとっては大したことでなかったとしても、相手にとっては非常に参考になる情報であったりすることって、結構あるんですよね。出し惜しみするのはもったいないじゃないですか。誰かの相談に乗るとか、色々なことをお教えするというのは、むしろ手当たり次第にやるようにしてるんです。

素晴らしいですね。そういった心掛けから「縁」ができるのですね。

そうかもしれないですね。IPO関連でも、いろいろな方から、いろいろなご質問をいただいて、その度にできる限りのアドバイスをしてきました。それが後々「あの時のアドバイス、すごく助かったよ!」というお声をいただくことが増えていって。相手に見返りを期待したり、欲を持ってアドバイスをしているわけではありませんので、安心して付き合っていただける方が多いみたいですね(笑)。

渡邉さんが今後お仕事として関わるのであればどのような会社が良いですか? これまでの経験をどのように活かしていかれるのか、方向性などがお決まりでしたら、ぜひお聞きしたいです。

有難いことに、これまではなかなか珍しい経験を積んでくることができたと思っています。エンジニアとしての経験も珍しがられますし、監査法人・証券会社・コンサル・CFOという多様な立場でIPOの仕事を経験してきた方はあまりいないと思うんですよね。 後進育成なども含めて、自分だからこそできる何かをしたいとは思っていますが、まだはっきりと決まっていないのが正直なところです。

もし会社に関わるのであれば、しっかりとした社会的な意義のある会社を応援したいなという思いはあります。知識や経験だけでなく、時間とお金も柔軟に使える状況にありますので、これも私の武器になるのではと思っています。自分が関わったことで、将来「関わってくれて会社の運命が良い方向に向かった」と言ってもらえたら嬉しいですね。